顔でよならを 番外編
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 2

 「蒼大……、久しぶり。……なんで、ここに?」
 「ごめん……、迷惑だったよね……」

 蒼大は気まずそうな顔をする。
 蒼大が来てくれて、迷惑なはずがない。

 「ううん。来てくれてありがとう」

 別れた私達。
 正直、蒼大とどう接したらいいかわからない。
 だけど、蒼大に会えた事は嬉しい。
 だって、もう会えないと思っていたから。

 私はにこっと笑顔を向ける。
 すると蒼大も私に笑顔を向けてくれる。
 それは、私の好きだった蒼大の優しい笑顔。
 その笑顔に私の胸はキュンとときめく。

 「繭花、疲れただろ?帰ろうか」

 そう言うと、蒼大は私の荷物を持ち、歩き出す。
 私は蒼大の後ろをついて行きながら考える。

 結局、なんで蒼大が迎えに来てくれたのだろう?

 親が蒼大に頼むわけないし、お兄ちゃんが頼んだには違いないんだろうけど。

 もしかして……
 ううん、もしかしなくても、お兄ちゃんには私の気持ちがバレている。
 蒼大と別れた後、泣いたのは1日だけだった。
 だけど、その後も私の様子がおかしかったみたいで、お兄ちゃんは気付いた。
 その時に、蒼大と別れた事を話したのだけど。

 「なんで?なんで、好きなのに別れんの?意味わかんねぇ」って、ずっと言っていた。

 お兄ちゃんは来れなくなったから、蒼大に頼んだのじゃなくて。
 きっと、私が今でも蒼大が好きな事に気付いて、蒼大に迎えを頼んだのだろう。
 蒼大は私に『迷惑だったよね』って言うけど。
 蒼大は私を迎えに来る事、迷惑じゃなかったのかな?

 そんな事を考えているうちに、駐車場に着く。
 私は駐車場に止めてある蒼大の車に乗り込む。


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 2011.9.29 魔法のiらんどにて公開
 2014.8.30 再公開



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