顔でよならを 番外編
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 1

1年後――…

 今、私は日本へ帰る飛行機の中。
 窓際の席の私は、下に広がる雲を見ながら、この1年を振り返る。
 慣れない土地、文化の違いで、最初の頃はたくさんの戸惑いがあった。
 しかも、当たり前の事だけど、知らない人ばかり。
 わかっていた事だけど、アメリカに行った頃は不安だらけだった。
 だけど、“一人で頑張りたい”と思って留学をした私。
 不安になった時は、日本にいる友達に電話をするわけでもなく、友達と一緒に撮った写真や蒼大と二人で撮った写真を見ていた。
 “別れ”を切り出したのは私。
 だけど、私は今でも蒼大の事が好き。

 蒼大、元気かな?
 彼女……、出来たのかな?

 もし、彼女が出来ていたら、私、ちゃんと祝福できるかな?

 飛行機は無事に空港に着陸する。
 荷物を受け取り、私は迎えに来てくれているはずのお兄ちゃんを探す。
 今日、両親は来れないから、お兄ちゃんが迎えに来る、って言っていた。

 お兄ちゃん、どこにいるんだろう……

 私がきょろきょろと辺りを見渡し、お兄ちゃんを探していると

 えっ……、うそ……
 な、なんで、ここに?

 私がびっくりして固まっていると

「繭花っ!」

 蒼大が手を挙げ私を呼ぶ。

 蒼大とは別れてから、一度も会っていない。
 久しぶりに会う蒼大に私はドキドキする。
 そして、今でも蒼大の事が好きって事を実感する。
 “別れ”を切り出したのは私。
 だけど、私は今でも蒼大の事が好き。
 本当は日本に帰って来たら、蒼大に会いたいという気持ちがあった。
 だけど、会えるわけがない。
 だって、私のワガママで別れたのだから。
 例え、私が今でもが蒼大の事を好きでも、蒼大はきっと私の事なんて、何とも思っていない。

 じゃぁ、なんで今日、迎えに来てくれたの?

 それは、私達の元々の関係……
 ただ、お兄ちゃんも来れなくなってしまった。
 それで、私は友達の妹だから、来てくれた。
 きっと、そうなのだろうな。
 私はそんな事を考えながら蒼大の所へ行く。

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 2011.9.29 魔法のiらんどにて公開
 2014.8.30 再公開



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