不良×学生




(…しつこい)

後ろから相も変わらず話しかけてくるチャラチャラとした男をあしらいながら眼鏡を押し上げた。

「なあ緑間、俺と付き合えよ」
「…しつこいのだよ。嫌だ」
「何でさー。俺がお前の恋人になったら毎日お前を守ってやれるんだぜ?」
「自分の身など自分で守れる」

名前も知らない不良の絡んだ手を乱暴に振り払う。
そんな俺の反応さえも楽しそうに笑うやつは「いいねーそういうの新鮮」と口角を吊り上げた。

再び掴まれた腕にギリギリと力をこめられる。
以前他の不良に巻き込まれていた俺を助けてくれたときにも思ったが、こいつは強かった。
相手が何人でかかってきても怯えることなく果敢に攻め、いつでも優位にたっていた。

だからこそなのだが握られた手首はあまりの強さに握られた周囲が白く色づき、内側の肌にはやつの爪が強く食い込んでいた。


「俺さ今まで結構モテてたからお前みたいなすっげー新鮮」
「…そんなこと聞いてないのだよ」
「ほら、この前みたいにお前守るからさ。な、俺にしろって!」
「…お前など願い下げだ」

熱っぽい視線を俺に注ぎ続けるやつの視線が痛くて、睨みながら言えば
ますますやつは嬉しそうな顔をして俺を見つめた。
それはどこか凶器さえも感じるもので、背筋がぞわりと粟立った。

ギリギリと更に力を加えると骨が軋む音がする。
鈍い痛みに顔をしかめながらギッ、と不良を睨み付ける。


「…っはな、せ…っ!」
「嫌だ」
「…やめろ…!」


手を振り払おうと抵抗すれば不良は手を緩め俺の顎を取った。
唐突なことに眉間に寄っていた皺を解くと目を丸く見開く。

先ほどとは打ってかわって優しい顔つきで、けれど相反して不敵な眼で俺を見つめるやつは俺の耳に顔を近づけ囁いた。


「好きになってくれねえんだったら無理矢理でも惚れさせるから」


俺の唇に口づけ、「緑間、」と囁いたやつの目は最初と何も変わらず俺だけを見据える。
どこか気まずくて視線を逸らした俺に「じゃあまたな緑間」とだけ笑って、あいつはもと来た道を戻っていった。

不良が立ち去った後のその場は静まり返っていて、顔を真っ赤に紅潮させながら一人項垂れるようにへたれこんだ。


(…あ、ありえない…!)


名も知らない赤の他人、しかも不良をかっこいいと思うなんて、

そう顔を朱に染めさせながら、そっと触れた唇は熱かった。








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こちらは新しい長編候補です。
浮気性なのでマフィア未完のまま始めると思います…






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