30日CPチャレンジ | ナノ
四日目【デートに行く】

壁に掛けられた時計を見れば、十一時二十四分。ちびちび飲んでいた二杯目のカフェラテももうすぐなくなってしまうのに、クロは未だ現れない。
今日は久しぶりに部活のない土曜日だ。家でだらだらするのも良いけど、たまにはふたりでどこかへ行こうと提案したのはクロだった。そして、学校へ行くときのように家に迎えに行くのではなく、別の場所で待ち合わせをしよう。そっちの方がデートっぽいから。と提案したのもクロだった。
「明日九時に、最寄りの駅前で」
そう約束をして、昨晩は別れた。
間延びした返事をしつつ、おれの胸は躍っていた。アラームが鳴る前に目が覚めて、「休みなのに珍しいわね」なんて母さんに茶化されながら身支度をして、朝ごはんもゆっくり食べて、約束の五分前には待ち合わせ場所に着いていた。クロは結構余裕をもって行動するタイプだからてっきり先に着いているものだと思っていたけど、見当たらなかった。ゲームをしながら三十分くらい待っても現れなかった。遅刻の連絡も特にない。
これはきっと、まだ寝ているのだと思った。
とんでもない大遅刻だけど、別に、怒ってはいない。せっかくの休みだし、たっぷり寝ていたい気持ちはおれも痛いほど分かるから。特にクロは、部活に受験にで大わらわだし。
電話やメッセージで起こそうとしなかったのも、肌身離さず持ち歩いているスマートフォンの電源をオフにしているのも本当に、憤りからの行動ではない。ちょっと困らせてみたくなっただけ。
駅の二階にあるこの喫茶店からは、待ち合わせ場所であるロータリーがよく見える。友達同士だったり、カップルだったりが、互いを待つ相手を見つけては駅に吸い込まれていく。それをぼんやり目で追いながら、すっかりぬるくなったカフェラテを一口すする。
クロはきっと、もうすぐ大慌てでやってくる。電話は繋がらずメッセージは返ってこない。ロータリーにも見当たらない。そんなおれを散々探し、途方に暮れる背中をつついてやれば、一体どんな顔をするだろうか。そしておれは、どんな顔をしてやろう。
もうこの店に入ってからずっと、そんなことばかり考えている。おれは朝からずっと、クロのことばかり考えている。


2015/10/14


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