30日CPチャレンジ | ナノ
二日目【どこかで もふもふする】

ある日の帰り道。一人でとぼとぼ歩いていると、知らないおじさんに声を掛けられた。
「きみに良い物をあげよう」
と手のひらに無理矢理握らされたのは、水色の包み紙にくるまれた飴玉だった。
「え…なにこれ…」
戸惑うおれにおじさんは、この飴玉をなめると触れている相手の心の声が聞こえるようになるのだと言った。別にそんなの聞こえなくても良いんだけど、断るのも面倒だったから大人しくもらって帰った。
人の心の声が聞こえるんだなんて、そんなことがあるわけがない。おれは家に帰り、荷物を投げ出すなりその飴玉を口へ放り込んだ。甘ったるいソーダ味が広がる。ありえないと言いつつも捨ててしまわなかったのは、今思えばちょっと期待する気持ちがあったからなのかも。

ベッドの上でゲームに興じていると、いつものようにクロが勝手に上り込んできた。「よ」とだけ言って、当たり前のようにおれに寄りかかってくる。
『けんま! けんま! けんまっっ!! うわぁああああああああああああ!!!!!』
「えっ!?」
突然発されたクロの叫び声に、肩をびくつかせてクロから離れた。
「…どうした?」
クロは怪訝な顔でおれを見ている。すぐにぴんときた。今のはクロの心の声なのではないかと。
「ううん、ちょっとなんか、思い出しただけ」
適当に誤魔化して「ほら」と両腕を広げると、クロはちょっとためらってからおれにぎゅっと抱き付いてきた。途端におれの頭のなかが、クロの心の叫びでいっぱいになる。
『あぁああああ…ああ…あっあっー! あぁああああああ!!! けんまけんまけんまぁああああわあああああ!!!』
おれの胸に額を押しあてるクロの口許は微塵も動いていない。やっぱり、心の声だ。あまりの勢いにちょっと驚きつつも、クロの背中にまわした手は離さなかった。今日のクロは甘えたみたいで、おれが突っぱねないと分かると首筋にぐりぐりと鼻をすりつけてくる。
『今日の研磨はやさしい…! すんすん! すんすん! スーハースーハー! スーハースーハー! 今日もいい匂い…! ふう』
うん。母さんがナントカいう柔軟剤(結構高いらしい)使ってるからね。
「けんま…」
「なに」
「眠い」
「…うん」
よくある他愛無いやり取りの裏に、こんな感情が隠されていたなんて。ええ格好しいなクロの意外な部分を見た気がして、ちょっと弱みを握った気分だ。
『んはぁっ! 研磨のきしきしプリンの金髪をすんすんしたい! すんすん! あぁあああ!!  間違えた! もふもふ! もふもふ! もふもふしたいッッッ…!!!!! ハイダメージヘアもふもふ! パーカーももふもふ…はあはあはあ!! 研磨大好き!! あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!! ふぁぁあああっ!!』
ちょっとこわいけど、こんなクロも嫌いじゃないおれも大概である。腕の中に埋まったままなにも言わない黒髪をそっと撫でると幸せな気持ちになった。はー…とさか頭もふもふ。


2015/10/02

※元ネタはルイズコピペです


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