小説 | ナノ
きみしかいない


「そのくらい掘ったら、もういいんじゃない?」
「そっか」
まんまるい月の下に、二匹の“猫”が立っていました。
猫といっても、この世界の猫は一般的な愛玩動物としてのネコとはすこし違っています。外見も、言葉を話してコミュニケーションをとるところもヒトとなんら変わりがないのですが、今日のような満月の夜にだけ、ネコの耳とふさふさの尻尾が生えるのです。
鉄朗は、先ほど連れてきた“お友だち”を家の裏庭に埋めていました。ひと月に一度彼らを埋める位置はもう決まっていて、その上はもう雑草の一本も生えなくなってしまいました。掘り返すたびに前回や、そのまた前などに埋めた残骸がぽろぽろ出てくるのですが、ふたりにとっては慣れたことです。黒い毛のつやつやした耳をぴんと立たせ、まだ新しいそれのにおいにすこしだけ目をぎらつかせながら、堀った穴へと乱雑に蹴落としていきます。研磨は服の袖で鼻をおさえながら、離れた位置にしゃがんでそれを眺めています。


街をはずれ、だれも近寄らない森の奥にある家に、研磨と鉄朗はふたりで暮らしています。
キッチンもリビングも寝室もすべて一部屋におさまる、ごく小ぢんまりとした家ですが、ふたりだけの力でコツコツつくった大切な家です。もっとも、ふたりに豪華な生活など必要ないのです。毎日裏庭の畑で育てた野菜や川でとってきた魚を食べて、日向ぼっこをして、夜はひとつのベッドで寝むります。そうしてゆるやかに時間の流れていく暮らしに華はありませんが、ふたりとも互いの存在があれば十分なのです。
家のなかと裏庭、窓からみえる小川くらいがふたりの主な行動範囲ですが、だいたいひと月に一度だけ、鉄朗が街へ出かける日があります。友だちに会いに行くのです。前の晩になると「明日、俺出かけてくるから」とそっけなく言い、研磨もそれ以上の詮索はせず、「わかった」とだけ返します。
街までは、だいぶ距離があります。鉄朗が家を出ていくのはまだ陽がのぼるかのぼらないかのころで、鉄朗の立てる物音で目を覚ましかける研磨にかるく謝罪をしながらベッドを抜けていきます。なるべく潜めていてもこつこつ鳴ってしまう足音が、鉄朗の浮足立っていることを研磨に知らせるのでした。
そうして鉄朗が街へ出かけてしまう日、研磨はなにもする気が起きず、ベッドの上で過ごします。畑の水やりもなにもできません。時折手洗いに立てばまだいい方です。ひどいときは手洗いどころか食事も水もとらず、ひたすら毛布のなかでぼんやり丸まっているだけで一日が終わるのです。
その日は、ひどいほうの日でした。一旦目が覚めたと思ってもすぐに頭がぼーっとしてきて、また眠って、少ししたら起きて、また眠って、というのを何度も繰り返していました。もぞもぞと動き、体勢は幾度となく変えるのですが、鉄朗のまくらだけは手放さず、しっかりと抱きしめています。
研磨は鉄朗のにおいが好きです。出会ったときからとても自分好みのにおいがすると感じていました。彼とはもう随分と長い付き合いになりますが、どれだけ嗅いでも全く飽きる気配がありません。鉄朗がそばにいないとなると一層恋しくなり、その代わりに、彼のまくらに鼻をうずめます。耳と尾が出るのは満月の夜だけですが、すっかりヒトと同じかたちをしていても、猫としての特徴は残ったままなのです。

研磨のうすいまぶたがようやくぱち、と開いたのは、徐々に近づいてくる鉄朗の足音を感じたからでした。朝からカーテンを閉めっぱなしだった部屋のなかはすっかり真っ暗になっています。もう月も出ていて、ヒトとおなじだった耳はひっこみ、頭のうえにふわふわの猫の耳がちょこんと生えていました。耳と同じくふわふわの尻尾を振りながらあくびをしていると、ドアの鍵がガチャガチャと落ち着かない様子で開けられ、薄闇の向こうから首を長くして待っていた鉄朗の声が聞こえました。
「ただいま」
一瞬胸を躍らせたものの、鉄朗が入ってきた瞬間、鉄朗の友だちの匂いが部屋に紛れ込み、研磨はむっと顔をしかめました。
「…おかえり」
「研磨、またずっと寝てた?」
「うん」
「そっか、遅くなって悪かったな。腹減っただろ?」
返事をしない研磨にかまわず、鉄朗は荷物を床にどさりと置き、部屋のあかりをつけました。
「…まずそう」
と研磨は鉄朗の持ってきた荷物を見て言いました。
「そう言うなって」
それは鉄朗の友だち、成人するかしないかくらいのヒトでした。なかなか整った身なりの、育ちのよさそうな青年です。しかし質の良いスーツに包まれた両の手足は縄でがっちり拘束され、口には猿ぐつわをはめられています。研磨は不機嫌を隠さず、尻尾をバタバタさせながら問いました。
「寝てる?」
「失神だよ。さすがにこの状況ですやすや眠られたら食う気なくすわ」
「ふーん」
ふたりにはひと月に一度だけ、ヒトの肉を食べたくてたまらなくなる日があります。それはふたりが猫のかたちになる日です。その予兆を感じると鉄朗は街へ出て、美味しそうな“友だち”を見繕っては家に連れ帰るのです。
猫とヒトは友だちであると、友だちだから決して襲ってはいけないと、猫たちは子どものころから何度も教えられます。満月の夜にだけ、衝動にかられてヒトを食べてしまわぬように姿を隠しながら、ヒトに紛れて、ヒトと同じように生きてきました。
研磨と鉄朗もヒトとして出会いましたが、同類は、においを嗅げばすぐに分かってしまいます。真反対のような性格のふたりでしたが、仲良くなるのに時間はかかりませんでした。あまり社交的でない研磨が鉄朗によく懐いたのは、鉄朗が研磨の好きなにおいの持ち主だったというのももちろんありますが、引っ込み思案な自分をなにかと案じてくれるのが嬉しかったというのが一番大きいのではないか、と研磨は思っています。ふたりの関係が変化し、ひとつのベッドに寝むるようなものになっても、鉄朗の優しさは決して変わりません。
だから、そんな彼が隠れてヒトを食べていると知ったときは頭を殴られたような衝撃を受けました。
「我慢できなくなるんだ」
と消えてしまいそうな声で言った鉄朗は、悲しそうでも、またどこか怒りをはらんでいるようでもありました。
“猫”がヒトを食べるのは、どんな理由があれ許されないことです。その禁忌を犯せばどうなるかも、子どものころからしつこく教えられてきました。しかし「研磨には見られたくなかったな」と力なく笑う鉄朗の手を取り、研磨が向かったのは同じ猫の仲間の元でも、誰がこんな惨いことをと悲憤するヒトたちの元でもありませんでした。

「ほら、起きろ」
鉄朗が青年の頬を何度か叩くとゆっくりまぶたが開かれ、耳をぴんと立たせた鉄朗の姿を認識した瞬間に、猿ぐつわの向こうでなにやら喚き、暴れだしました。涙をいっぱいにためた瞳を向けられても、研磨はベッドの上で膝を抱えているばかりです。
「なあ、た、助けて、殺さないで、なんでもする、する、するから、頼む、頼む、お願いします」
猿ぐつわを外された青年は、歯をカチカチ鳴らしながら何度も繰り返しました。
「そんな簡単には殺さねえから安心しなよ」
口ぶりはいつもと変わりませんが、鉄朗の目はぎらぎらと血走っています。余所行きの笑みを浮かべると、爪の先で首筋をぢいと撫で、五センチくらいの傷をつくりました。真っ赤な血がぷつぷつ浮かび、首を伝っていきます。鉄朗はそれを舌で直接舐めとり、言いました。
「あんた結構美味いな」
「あ……あ、あ…」
涙と鼻水で顔を汚した青年は、可哀想に失禁してしまいました。より強くなる不快なにおいに研磨は咳き込みましたが、鉄朗はヒトのにおいも自分の衣服が汚れることも全く気にならないようで、「あーあ、でもまあ、どうせぐしょぐしょになるしな」と気にも留めません。
鉄朗はなるべく、対象が生きているうちに食べるのが好きなのだそうです。「殺してから食べると鮮度が落ちる」などと尤もらしいことを言ってはいますが、その実怯えるヒトをいたぶるのが好きなのです。対象に抵抗や命乞いをされるたびに嬉しそうな顔をするのを研磨は知っています。街を行き交う友だちは自分にとっては食糧としか思えないのだ、と鉄朗はいつだかぽつりと漏らしていました。
鉄朗は床に転がした青年に馬乗りになり、小綺麗な衣服を容赦なく引き裂きました。楽しそうに歪む口元から、たらりと唾液が垂れていきます。
「はは、いただきます」
「嫌だ…嫌だ、いやだいやだいやだ!やめろ!あ…っ!」
淡いあかりのもとに晒されたなまっちろい身体と、それに嬉々として噛みつく鉄朗を見届けたところで、研磨は鉄朗たちに背中を向けました。不快な獣くささと排泄物の臭いのなかで「早く殺してくれ」と泣き叫ぶ声や呻きは徐々に力を失い、しばらく経つと完全に聞こえなくなりました。
美味しいところと美味しくないところを選別するぐちゃぐちゃとかばきばきとかいう音と、荒い息を吐きながらそれを咀嚼する音と、床に血や臓物の飛び散っていく音に耳を傾けながら、研磨は自分の手のひらを眺めていました。鉄朗とは違い、ごく平凡に生きてきた手のひらです。猫である以上、研磨にもヒトを食べたいという欲求は起こるのですが、研磨は多くの猫とは違ってヒトのにおいが苦手であり、それを我慢してまで食べたいとは思えないのです。きっとヒトを食べてはいけないというルールがなかったとしても、野菜や魚で食欲をすべて満たしていたのでしょう。
「研磨も食えよ、なんも食ってないんだろ」
「んー…」
どれだけいらないと言っても、口にするまで許されないことはわかっています。ヒトの肉は猫にとって極上の栄養素なのです。初めこそこそこそ隠れて食事をしていた鉄朗ですが、いつの間にか研磨のいる場所で食べ、研磨にも食べるよう勧めてくるようになりました。鉄朗がヒトを食べるところを偶然見てしまったときはとてつもない衝撃を受けたのに、研磨はもう鉄朗がヒトを食べることにも、ぐちゃぐちゃになったヒトの死体を目の当たりにすることにも抵抗を感じなくなりました。においばかりは、どうしてもだめなのですが。
ずるりとベッドから抜け出し、のろのろと鉄朗の元へ歩きます。しゃがんで、すっかりかたちを変えてしまったお友達をしばらく眺めたあと、彼のどす黒い血液を指ですくい、ほんのひとくちだけ舐めとりました。不快な味が口いっぱいに広がり、眉を寄せます。
「…やっぱり、まずいよ」
流しで入念に手を洗い、口もゆすいで、昨晩ふたりでつくった野菜のパイを戸棚から取り出しました。部屋の中は臭すぎるので、外のベンチでつまむつもりです。
「研磨は本当にしょうがねえなあ」
呆れたように笑う鉄朗にはもう、先ほどまでの狂気じみた様子はみじんもありませんでした。
ヒトの血は不味く、入念に掃除をしてもしばらく部屋に残ってしまうにおいは最悪です。それでも研磨は、顔どころか全身を返り血で汚す鉄朗のことはちょっとだけ好きだなと思ってしまうのでした。


さく、さく、とスコップが土をすくい、掘った穴を埋めていきます。
鉄朗は、美味しそうなヒトの美味しい部分しか食べません。ですから、ぐちゃぐちゃといえども死体は一応ヒトのかたちをとどめています。肉を焼き、骨だけにしてから片付けようとしたときもあったのですが、肉の焼けるにおいで研磨が気分を悪くしてしまったので一度きりでやめました。
「そんなにヒトのにおいが苦手なら、わざわざ見に来なきゃいいのに」
と鉄朗に言われたことがありますが、研磨は苦手なにおいを我慢してでも鉄朗が死体を埋めるのを眺めることにしています。
鉄朗が掘ったところを元どおりに埋めてしまうと、研磨はすぐさま返り血まみれの胸元に飛び込み、尻尾を振ってふうふうと息を吐きながら、鉄朗の首筋を甘噛みするのでした。月の光が研磨の本能的な部分を刺激し、我慢がきかなくなってしまうのです。
「中、戻ってからにしろって言ってるだろ」
「…やだ」
鉄朗がどれだけ咎めても、一度気分が鎮まるまで研磨は頑として鉄朗から離れません。ふだんはつんとしていることの多い研磨が甘えるようにすり寄ってくることが嬉しく、鉄朗も本気で引き剥がすことはないのですが。

死体の埋まった土の上で、二匹の猫がじゃれあっています。
ひと月に一度鉄朗がヒトを食べたくて仕方なくなるように、研磨もひと月に一度、鉄朗を食べたくて仕方なくなってしまいます。
鉄朗がヒトのにおいに食欲をそそられるように、研磨は鉄朗のにおいに食欲をそそられます。
研磨は鉄朗が一心不乱にヒトを食べる姿を見た瞬間から、これこそが本当の鉄朗なのではないかと思うようになりました。満月の夜はふたりとも猫特有のにおいが濃くなるのですが、鉄朗のにおいが一番深くかおるのは、研磨とじゃれあうときではなく本能のままにヒトを欲するときなのです。鉄朗のおだやかな部分を研磨はたしかに愛していますが、欲しくてたまらなくなってしまうのは、ヒトを食べているときの、目をぎらぎらさせた鉄朗なのです。
鉄朗が畜生のようにヒトをむさぼる姿に、研磨はあこがれています。自分も鉄朗と同じように口の周りを真っ赤に染め、鉄朗をすっかり食べてしまいたい。美味しい部分しか食べない鉄朗とは違い、研磨は鉄朗のすべてを余すところなく味わい、胃袋におさめたいと思っています。最近はもう、食事と死体の処理によってうっすら浮いた汗を舐めとるだけでは我慢ができなくなってきてしまいました。
「クロ…」
鉄朗はどこまでも研磨に甘く、研磨がかぷりと強めに歯を立てても怒ることはありません。研磨は初めて、満月の夜にだけ鋭くとがる犬歯を筋肉のついた肩へ突き立ててみました。「っ痛え…」と本気で痛みを訴える声が漏れましたが、つやつやする耳をやさしく撫でてやればじきに静かになりました。
ちいさな傷口から、赤い血液がぷつんと浮かびます。鉄朗についたヒト臭さも全く気にならない、とてもたまらない、研磨の大好きなにおいです。ざらつく舌で舐めてみれば、おもわず歓喜の吐息が漏れました。先ほど舐めたヒトの血などとはとても比べ物になりません。味も、香りも、なにもかもが、ああ、本当に、もう
「食べちゃいたい」
研磨が鉄朗の目を見ながら言えば、鉄朗は「なんだそれ」と照れくさそうに笑って、研磨にかるく口付けました。
「その…食っていいからさ、戻ろう? もう寒いし、俺こんな血だらけだし」
「わかったよ」
ふたりはぴったり寄り添い、仲良く尾を絡め合ったまま暖かい家のなかへもどりました。

不快なにおいも、二匹の猫の濃いにおいがすぐにかき消してしまいます。
ベッドの上で耳を、尻尾をくすぐられれば、研磨は二重の意味でぞくぞくとしました。ベッドに横たわり、すべてを無防備に研磨にゆだねる鉄朗が愛おしくてたまりません。
「研磨…ほら、好きなだけ食えよ」
「それ、やらしいね」
「お前に言われたかないわ。毎回外で盛っておいて」
「仕方ないじゃん。…じゃあ、いただきます」
噛み千切ってしまわないようにと注意して舌を甘噛みすれば、研磨の胸は切なく締め付けられました。
猫がヒトを食べるのは禁忌ですが、はたして猫が猫を食べるのもそうなのでしょうか。大人たちは猫とヒトとについての話しかしませんでした。いずれはわかる日がきたのかもしれませんが、学校の勉強を途中にして鉄朗と逃げてきた研磨にはわかりません。それでも、もしそれが禁忌だったとしても、犯してしまうことに全く抵抗はありませんでした。
いま平気な顔をしてヒトを食べている鉄朗が、陰では苦しんでいるのを研磨は知っています。「明日、俺出かけてくるから」と言う声がかすかに震えていることを知っています。研磨から見えるところで、ふたりの平和な家で食事をするのは、研磨に止めてほしいと思っているからです。「臭いからやめて」と言ってほしいがために、必要以上にヒトの身体をめちゃめちゃにします。そうして惨たらしい姿になった死体を森のなかではなく家のすぐ裏に埋めるのは、禁忌を犯し続ける自分に対する罰です。
一度ヒトの味を知ってしまった猫がそれを食べずに満月の夜を越すのは、とても苦しいことなのだと聞きました。鉄朗はもう、後戻りできなくなってしまいました。そんな彼を苦しみから救えるのは、自分しかいないのだと研磨は考えています。いままで食べてきたヒトと同じように食べられることこそが、鉄朗にとって唯一の贖罪になるのだと研磨は考えています。
そうして鉄朗を食べてひとりぼっちになったら、今度は研磨が贖罪をする番です。
ヒトを食べてしまった鉄朗を罰から遠ざけ、くわえてヒトを食べつづけるのを一切咎めず、また研磨自身もほんの少しだけとはいえ、その味を知ってしまいました。更に同類の鉄朗を食べてしまおうというのですから、研磨の抱える罪も相当なものです。
鉄朗がいなくなってしまえば、研磨は完全にひとりぼっちです。そうなったら研磨はベッドから動かず、鉄朗が街へ行く日のようにぼーっとして過ごすつもりです。ふたりのあたたかい家で、鉄朗のにおいの染みついたベッドで、彼の真っ白な骨をやさしく撫でて過ごすつもりです。こんな辺鄙なところへわざわざやって来る者はありませんから、研磨が見つかるのは鉄朗と同じく骨になってしまったころでしょう。もしかしたら一生見つけてもらえないかもしれません。
「クロみたいなヒトがいたら、おれもお腹いっぱい食べてたかも」
「なに言ってんだよ、こんなごっついの、絶対美味くないって」
「そうかな…」
呼吸に合わせて上下する身体はほどよく引き締まり、肌もすべらかです。まずはどこから食べようか、といつになく雄らしい研磨の瞳に見つめられれば、鉄朗の身体は一層熱を帯びていきます。一番美味しそうなにおいがするのはヒトを食べる鉄朗ですが、こうして肌を合わせるときもなかなか素敵です。ごくんと生唾をのめば、それだけで鉄朗の呼吸が上がっていきます。
「好きだよ、クロ」
しあわせそうにはにかむ鉄朗に笑い返しますが、果たして優しい顔が作れているのか、すこしだけ不安です。食べる側の心境を熟知しているにも拘わらず、自分が食糧として見られているのにまったく気づかない、これ以上なく憐れで愛おしい肢体に指を這わせながら、研磨はこの生殺しの日々をいつ終わらせようかと考えるのでした。



2015/11/17



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