23
ふすまを開くこと数十回ほど繰り返しただろうか。
一際豪華なふすまを開いた瞬間、どろりと闇が溢れてくる。
薄闇に閉ざされた仙台城の中でも、ひときわ闇の濃い広間の奥ーー。
そこには、千姫と山南さんの姿があった。
山南さんの傍らにいる千姫は、気を失っているようだ。
その唇の端からは、赤い血が糸を引いている。
おそらく、変若水ーー山南さんの血を飲まされたのだろう。
「……山南といいましたね。すぐに姫から離れなさい。」
「……どうやら君は、口の利き方を知らないようですね。私は、あなたの主の主に当たる存在なのですよ?もっと敬意を払ってもらわないと。」
「分をわきまえろ、まがい物が。気高き鬼が、貴様などに屈するものか。」
「……私は、まがい物ではありません。西洋の鬼と同じーーいえ、その先の高みにすら至った、真の羅刹なのですよ。」
「……羅刹に真も偽もねえよ。オレたちにあるのは、血を求めてさまよう呪われた身体だけだ。」
「いいえ、ありますとも。とはいえ、真の羅刹となれるのは、私のような選ばれし者だけです。……ですが、君たちにはその資格があるかもしれません。どうです?私と共に、この国を生まれ変わらせるつもりはありませんか。」
「鬼である俺に羅刹になれと?笑止千万だな。……貴様は、虎に向かって猫になれと言うのか?」
もはや話すことなどないと言わんばかりに、風間が刀に手をかける。
山南さんは、今度は平助へと視線を移した。
「……一応、聞いておきましょうか。藤堂君、君はどうです?私と同じように変若水をもたらす発作を幾度も乗り越え、その力を我が物とした君であればーーきっと、私と同じ真の羅刹となることができると思うのですがね……」
『平助は、山南さんとは違うわ。』
「何が違うのです?藤堂君は血など飲まない……などという戯れ言は結構ですよ。これまで何度も発作に耐え、そうして正気を保っているということはーー藤堂君も、人の血を少なからず口にしたということでしょう?」
「……オレは……」
平助の視線が、不意に私へと向けられた。
山南さんの言葉は、間違いじゃない。
確かに、今の平助は、血を飲まなければ狂ってしまう身なのかもしれない。
だけどーー。
「確かにあんたの言う通り、オレは……血を飲んださ。だけど少なくとも、人を殺してその血を啜ったりはしてねえ!血を飲むとしたらーー生涯、ただ一人だけの血で充分だよ!」
その言葉を聞いた山南さんが、落胆したようなため息をつく。
「……やはり君は、甘さを捨てられませんでしたか。仕方ありませんね。ですが私はこれからも、殺した者の血をすすって生き続けます。ーー真の羅刹となれなかった君は、ここで果てなさい。」
山南さんの右手が、刀の柄を握った。
そしてーー。
その髪が白髪となり、全身から殺気が溢れ出す。
『…………』
肌を刺すように強烈な殺気に、私は身動きすることすらできなくなる。
ただこの場に立っているだけで、全身が震えて冷や汗が溢れ出す。
これがーー、血を吸い続けた羅刹の力なの?
刹那、平助が床を蹴った。
下弦の月にも似た流麗な軌跡を描き、斬撃が振るわれる。
だがーー。
「……腕を上げましたね、藤堂君。確か君は、北辰一刀流目録の腕前でしたか。今の君なら、免許皆伝も難しくはなさそうです。……ですが、所詮は人間の戦い方だ。」
「な、に……!?」
平助が、驚愕に目を見張る。
なぜなら彼が放った刀を受け止めていたのは、刀ではなくーー。
ーー山南さんの、手の平だった。
平助の刀は、山南さんの左の指先から肘当たりまでを切り裂いているがーー。
「くそっ、抜けねえ……!」
並みの羅刹を圧倒的にしのぐ治癒力でふさがった傷口が、平助の刀を絡め取っている。
『平助……!』
私は、愛刀ーー風姫を抜き、山南さんへと迫った。
ガキンッ。
『なっ!?』
「相変わらず素早さは幹部一ですね、汐見君。ですが……」
山南さんの刀で止められた風姫に、素早く身を翻して間合いを取ろうとするがーー。
「所詮、私には敵いませんね。」
『ぐはっ……!』
身を翻したと同時に足で思い切り身体を蹴り飛ばされて、壁に身体を打ちつけてしまう。
カランッと刀が床に転がった。
前の山南さんならあんなに素早い動きはできなかったはず……。
これも、真の羅刹となった彼の力だというの?
『い……つぅ……』
「大丈夫か、千華!」
『へ、平気……、だけど……』
平助と戦っている最中なのに、一分の隙もないなんて……。
「……どうです?羅刹ならばこういった戦い方もできるのですよ、藤堂君。人を凌駕する生き物に生まれ変わったというのに、君はその力を全く育てようとしなかった。ーーそれが、君の敗因です。」
言うが早いか、山南さんは平助の身体を容赦なく蹴り飛ばした。
「がっ……!」
『平助!』
蹴り飛ばされた衝撃で刀は抜けたが、平助は床に倒れ伏す。
「く、くそっ……!」
慌てて体勢を立て直そうとする平助に、山南さんの影が迫った。
その時ーー。
「……ならば貴様の敗因は、鬼の俺を侮ったことか。」
「……!」
背後からかけられた声に、山南さんは振り返った。
広間の奥には、気死したままの千姫を横抱きにしている風間の姿がある。
「……なるほど。藤堂君が私の注意を引き付けている隙に、君が姫を助け出すという算段でしたか。」
「そやつらと手を結んだ覚えはない。そのゴミが勝手に囮になったから、利用させてもらったまでのことだ。」
「姫様、よくぞご無事で……!」
君菊さんが、千姫へと駆け寄ろうとする。
だけど……。
『……?』
山南さんの表情から余裕が消えていないのは、なぜなの……?
「くくくく……」
まさかーー!
『駄目よ、風間!!千姫から離れて!』
「何だと……!?」
風間が驚愕に目を見張った瞬間。
彼に支えられている千姫が、突然目を見開いた。
そしてーー。
「ぐっーー!」
風間がうめき声をあげた瞬間、千姫の顔が返り血で真っ赤に染まる。
『風間……!!』
「き、貴様……!」
床に倒れた風間の赤い瞳が睨みつけた、その先にはーー。
白い髪に金の瞳を持つ、鬼の姫の姿があった。
彼女が持つ懐刀には、赤黒い血がべっとりとこびりついている。
「姫様!まさかーー」
「おやおや、鬼は羅刹よりも優れた生き物だったはずですが……その様子を見ると、そうとも言い切れないようですね。」
「ぐっ……」
「お望みであれば、君も羅刹に変えてあげましょうか?風間君。城の門番ぐらいはさせてあげますよ。」
「貴……貴様……!」
今負わされた傷は、相当の深手のようだ。
鬼の風間といえどすぐに癒えるものではないらしい。
血の海に身を沈める彼に、山南さんが迫ってくる。
その時ーー。
「……!」
不意に背後から振り下ろされた白刀を、山南さんはとっさに刀で受け止める。
その一刀を見舞ったのはーー。
「勝ち誇るのはまだ早いんじゃねえか?山南さん!勝負ってのは、最後の最後までわからねえんだからさ!千華、オレが山南さんと戦っている間に千姫を……!」
『うん、わかった!』
私は愛刀を拾い上げて急いで、千姫の所へ向かう。
『ーー千姫、しっかりして!私がわかる!?』
千姫は、己の手の平にこびりついた風間の血を舐めていたけれど……。
「……あ……」
その瞳に、正気の色がわずかに戻る。
「姫様、しっかりしてください!」
「……お……菊……?千華……ちゃん……?」
千姫が、私たちの名を呼んでくれた。
「どうなってるの?確か私、山南さんに……うっ……」
千姫は苦しげに顔をしかめ、頭を押さえた。
『大丈夫?しっかりして。』
そう言って、彼女に駆け寄ろうとすると。
「ーー駄目、近付かないで!」
鋭い声で制止され、私は立ち止まる。
「今、近くに来られたら……私、あなた方を殺しかねないわ……!」
『…………』
私は……、どうすればいいの?
すぐ近くで、平助がーー大切な人が戦っているのに。
私も、千姫を助けなきゃいけないのに。
その時、君菊さんが私の前へと進み出る。
「……下がっていてください。姫様のお相手は、私が致します。」
『君菊さん?何をするつもりですか……?』
「決まっています。まがい物と変えられ、同族殺しという罪を犯させるくらいならーー私がこの手で、お命を絶ちます。姫様の誇りを守る為にも。そして次期頭領というあなたを守る為にも。」
『そんなーー、駄目です!千姫を……私の大切な友達を殺したりしないでください!』
「千華さん……」
もしかしたら、殺されるかもしれないけど……。
私は息を呑み、千姫の前へと立つ。
「……千華……ちゃん……?」
『千姫、変若水なんかに負けないで。君菊さんに、あなたを殺させないで。……お願いします、八瀬の姫君ーー千姫様。』
汐見家の次期頭領としてそう言うと千姫の瞳に宿る光が、揺らいだ。
「私……は……」
「何をしているのです、千姫!その二人を、早く殺しなさい!」
山南さんの一言で、千姫の瞳が一気に狂気に塗りつぶされた。
「っ……あぁああああああっ!」
『ちっ!』
彼女の手にある懐刀が私に狙いを定め、突き進んでくる。
咄嗟に、刀に手をかけて受け止めようとするーー。
だが、千姫の刀の切っ先が刺し貫いたのは、私の身体ではなかった。
「お……きく……?」
『君菊さん!どうしてーー』
「【どうして】は、こちらの台詞です。姫様と同じで……、あなたもずいぶんと無茶をなさいますね。」
白い刀は、君菊さんの脇腹を深々と貫いていた。
致命傷ではなさそうだけど……、それでも深手を負っているのは間違いない。
君菊さんは痛みをこらえながら、優しく微笑んでくれる。
「姫は……多くの人に慕われておりますが、鬼の一族の長という身の上ですから、立場上、心を許せる者は決して多くありません。あなたのお生まれもあるかもしれませんが……鬼と知ってなお、姫様のことを友人と呼んでくださったのは、あなたが初めてです……」
君菊さんの身体がぐらりと傾き、その場に崩れ落ちる。
「ごめんね、お菊……」
千姫の瞳からは、狂気の光が消えていた。
「馬鹿な……。真の羅刹となった者が、鬼ごときの呼びかけで正気に戻るなど……!もしかすると先程、風間や君菊の血を舐めていたせいか……?」
「ふん、どうでもよかろう。貴様が誇っていた羅刹の血とやらが別の何かに敗れた、ただそれだけのことだ。」
「黙りなさい!!真なる羅刹が敗れるなど、あってはならない!ならないのです……!」
山南さんは狂気を宿した瞳で、私と千姫を睨みつけてくる。
「いいでしょう。もし君たちとの絆が、千姫を正気に戻したというのなら……ここにいる者全員ーー、彼女を想う者も慕う者も知る者も全て殺しーー羅刹を増やす為だけに存在する姫に、仕立て上げるだけです!仮に失敗したとしても、純血の鬼の姫はもう一人いますからね。……汐見君。」
『……!』
山南さんの双眸には、正気の色はもう微塵も残っていない。
彼がこちらへ一歩踏み出そうとした時、平助が私の前へと立ちはだかる。
「生きてる人間に手を出すなよ、山南さん。ここはやっぱり、とっくに死んでる人間同士で決着つけようぜ。」
「人ですって……!あなたはその鬼どもも人と言うのですか?」
「ああ……特にこいつは、千華は鬼だろうとなかろうと、オレの大切な人だ!」
『……平助……』
その言葉がうれしくて、私は平助を見つめる。
「千華。……オレ、山南さんを倒すよ。」
『……ええ。死なないで、平助。』
「ああ……信じて見ててくれ。オレ、おまえがいる限り、絶対負けないから。」
彼の言葉を信じて、私は壁際へと下がった。
平助の小さな背中が、今はとても大きく、頼もしく感じられる。
やがて平助は、刀を正眼に構えーー。
戦いが、始まった。
平助が大きく踏み込んで、横薙ぎの一刀を浴びせようとするがーー。
「ーー遅いですね、疲れが出始めましたか。」
「へっ、これくらいで疲れるはずねえだろ!あんたの方こそ、そろそろ寿命が尽きちまうんじゃねえのか!?」
「ご冗談を。何の為に私が、人であることを捨てて血を啜り続けたと思っているのです!」
猛然と振るわれた刀の切っ先がーー。
平助の胸を、深く貫いた。
「ぐうっ……!」
『平助……!』
「くくくくーー、はははははっ!以前言った通りではないですか!やはり君は何百回戦おうと、この私には勝てません!」
平助の胸を穿ったまま、山南さんはこちらを振り返った。
「どうしたんです?汐見君。恋い慕う相手を殺されたというのに、涙の一つも流さないのですか。」
だけど私は、彼から目を離さない。
『……私は、平助を信じているから。』
「信じるも何も、彼が死ぬのは時間の問題ですよ。」
『…………』
……大丈夫。
平助は、こんなことで殺されるような人じゃない。
絶対に、負けたりしないーー。
「人を操る術を持つこの私が、言葉では、君の心一つ動かせないとはね。まあ、いいでしょう。藤堂君が寂しがるといけませんから、一緒にあの世へ送ってあげます。」
山南さんは平助を貫いている刀を引き抜こうとしてーー。
「……!?抜けない?」
彼は身をこわばらせ、平助の方を振り返る。
その刹那ーー。
「あああああっーー!!」
平助の刀の切っ先が、畳を大きく切り裂いて走る。
ーー狙いは心臓、ただ一点。
山南さんの左腕が動きかけたが、間に合わずーー。
平助の右手の刀の切っ先が、その心臓を深く深く抉った。
「う……ぐ、がはっ……!」
山南さんの口から、赤黒い血がこぼれた。
おびただしい量の血を啜り続け、もはや誰のものともつかなくなった鮮血が花弁のように舞い散る。
「見事でしたよ、藤堂君。まさかこの私が、先程、君を仕留めようとした策で殺されるとはね。」
「……昔のあんただったらきっと、こんな方法じゃ殺せなかったと思うぜ。」
「それは、買いかぶりというものですよ…………私は、弱い人間ですから。」
「そうかな……。最後の一撃だって、止めようと思えば止められたんじゃねえのか?」
すると山南さんは、自嘲するような微笑みを浮かべる。
「……止められませんでしたよ。人だった頃のことを思い出したら……左腕が動かなかったんです。」
山南さんの左腕ーー。
それは、怪我で彼に刀を持つ道を断念させた腕。
変若水を飲むきっかけを与えた腕だ。
「皮肉なものですね。新選組と近藤さんの名を世に出す為、戦い続けてきたというのに……新選組の名を最も貶めたのは、この私ということになるのでしょうか。」
「……オレもあんたも、表向きはとっくに死んだことになってる人間だ。歴史に残るのはきっと、頭が良くて穏やかで、剣術が上手くて、少し腹黒でーー誰よりも新選組を想ってた、山南敬助の名前だけだよ。」
平助のその言葉を聞いて、山南さんはようやく安堵したように目を細める。
「……そうですか。それならばいいのですが。先にあの世で待っていますよ、藤堂君……」
山南さんは、私が知っていたあの頃の穏やかな微笑みを浮かべながら……。
そのまま、息を引き取った。
『平助、大丈夫……!?』
「ああ。結構深く刺されちまったから、治るのにはもう少しかかりそうだけど。」
『じっとしてて。すぐに手当てをするから。』
「い、いや、いいって。オレ羅刹だから、傷ならすぐに治っちまうし……」
『……これぐらいはさせて。お願いだから。』
私は水筒の水で彼の傷口を洗い、手拭いで包んだ。
本当に、何て無茶なことをするんだろう。
もし死んでしまったら、どうするつもりだったんだろう……。
「お、おい、千華?どうしたんだよ、泣いてんのか?」
『……泣いてないわよ。』
「いや、どう見ても涙出てるじゃねえか。泣かないでくれって!」
『泣いてない……!』
言葉とは裏腹に、大粒の涙が両の瞳から溢れ出してくる。
「わ、悪かったよ、心配かけちまって!だけどさっきは、しょうがなかったろ?」
『わかってるけど……!』
平助が無事で……、こうして生きていてくれて、本当によかった。
「皆、とりあえずは無事みたいね。大丈夫?お菊。」
「平気です。後もう少しすれば、傷もふさがるでしょう。」
『そういえば、風間は……?』
「あれしきの怪我、どうということはない。貴様らと一緒にするな。」
「……こんな時までこの態度かよ。とどめを刺したくなっちまうな。」
『駄目よ。風間も私たちに協力してくれたんだから。』
「ま、とりあえずこれで全部片付いたな。」
『……ええ……』
山南さんが倒れ、羅刹の国が作られることはなくなった。
『でもこれから先、平助は……』
「ん?まあ……きっと何とかなるさ。おまえが傍にいてくれるんなら、山南さんみてえに狂っちまうこともねえだろうし。もしオレが狂ったら、誰かが退治してくれるって。……そこにいる、性悪の鬼とかがな。」
「そんな面倒な役目ができるか。他力本願も大概にしろ。」
やがて風間は顔を背け、独り言のように呟く。
「……以前、耳にしたことがある。雪村綱道が変若水の改良に用いたのは、東国の鬼の里ーー汐見家と雪村家の故郷の水だとな。」
『えっ……?』
私の里……?
「陸奥の水には、変若水の毒を清める効能があるらしい。その水ならば、すでに羅刹となった者の毒をも消せるかもしれぬな。それに汐見家の現頭領は治癒力を高める力があると聞く。力を借りれば何とかなるかもしれんな。」
確かに、じい様には治癒力を高める不思議な力というか、そういうものが備わっているとは聞いていたけど……。
『風間、それ、私たちの為に……?』
「その薄汚いまがい物が都に出てくると、目障りだからな。人も通わぬ山奥で、つまらぬ一生を終えるがいい。」
別に汐見の里は山奥ってわけでもないけど。
「……藤堂さんを見逃してあげるんなら、素直にそう言えばいいのに。」
「見逃したわけではない。血に狂えば、いつでも殺しにくる。」
風間はそう言い捨てて、私たちの前から立ち去ろうとする。
「あっ……、ちょっと待てよ、風間!」
「……まだ、何かあるのか。用件ならばさっさと言え。」
「おまえ、最後までその態度かよ……まあいいや、一度しか言わねえからよく聞けよ。……さっきの話、教えてくれてありがとよ。感謝する。」
「……聞こえんな。もう一度言え。」
「嘘吐け!今、絶対聞こえてただろ!二度と言わねえよ!」
戦いが終わった後だというのに、あの二人は今すぐ喧嘩を始めそうだ。
私たちはその姿を見て、しばし笑い合った後……。
「千華さん、あなたはこれから、どうなさるおつもりですか?風間が言って通り、汐見の里へ……?」
『ええ、そうするつもりです。次期頭領としても、戻らなくちゃいけないし。里の皆もわかってくれると思うから。多分、新選組にはいられなくなりますけど、それでも……』
「そう、じゃあ時々遊びにいくわね。鬼と羅刹が、仲良く暮らしている里に……」
『ええ、いつでも来て。里の者一同で歓迎するから。』
こうして戦いは終わり、私たちは平穏を取り戻した仙台城を後にしたのだった……。
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