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怪我を負った君に


『すいません。いまいち状況がよくわからないんですけど。』


正座をしている私の前に並ぶ土方さんと近藤さん。
そして私の周りを囲むように座る幹部の皆。

ちょっと状況がわからない。


「本当にわかんねえのか?」

『わかんないから。なんで呼び出されたの私。しかも巡察終わりに!』


そう、昼の巡察が終わり報告を土方さんにし終わった後、千鶴と一緒にのんびりしてたらなぜか広間へと呼び出された。
そして私を逃がさないように取り囲む幹部の皆の視線に耐えながら私は身をすくめる。

くそ、千鶴が欲しい!
さっきまで一緒にいたけどもう欲しい!!


「やれやれ。本当にわかってないみたいだね。」

『?』


総司の言葉に首を傾げる。


「おまえ、頬怪我しただろ?」

『…………はっ!』


忘れてた。
そうだ、池田屋で私頬を怪我したんだっけ。
まぁ、鬼の治癒力のおかげでもう傷の跡すらないのだが怪しまれると面倒なので絆創膏を貼っているのだ。

ん?まさかこれで呼び出されたの?私。


「まったく、無茶しやがって。」

「まぁ千華らしいけど。」

「けど、女が顔に傷つけるのはよくねえだろ。」

「佐之さんの言うとおりだよなぁ!まだ掠り傷だからよかったけど。」

「もう少し千華は女ってことを自覚しろ。」

「斎藤、千華に言ったって無駄だぜ。」


土方さん、総司、佐之さん、平助、一君、新八さんの順で言われる言葉。
だけどその言葉言葉がすごくグサッグサッと胸に突き刺さる。

なんだろう。いじめられてるのだろうか。



『あの……』

「だいたいおまえはひとりで突っ走り過ぎなんだよ。」


あれ?これは……。


「そうそう!オレたちのこと、少しは頼ってくれてもいいのにさあ!」

「守られるほど弱くないって……たしかに弱いとは思ってないけど怪我をする千華を見るこっちの身にもなってほしいな。」

「まぁ、素直に頼るってことができねえからなこいつは。」

「けどよ、こうも無茶ばっかりされるとこっちの身がもたねえぜ。」

「同感だ。」


なんだろう、これ。
貶されてるのかな。


『あ、あの……無茶してすみませんでした。』


冷や汗を流しながら頭を下げると皆の鋭い視線が突き刺さった。
絶対思ってねえだろ……的な目で見られてる気がする。
気がするじゃない、絶対そうだ。


『いやでも、怪我するな、なんていまさらじゃあ……』


芹沢さんがいた頃なんてしょっちゅう怪我してたし。

なんてことを言うとまたグチグチとうるさいので黙っておく。


「たしかにそうかもしれんな。けどな、皆千華には怪我をしてほしくないからこう言ってるんだ。わかるだろ?」


うわ、あの刺々しい言葉の後だと近藤さんの言葉がすごく優しく聞こえる。

私は正座を続けながらも素直にコクンッと頷いた。
さっき隙をついて正座を崩そうとしたら土方さんに鋭く睨まれた。

皆の私を気遣う言葉はうれしいけど……なんかその言葉の中に常日頃の私の行動に対する不満が垣間見えるのだが。


『皆が心配してくれるのはすごく嬉しいよ。けど、無茶をするなって言われると厳し……』


そこまで言って私はハッとした。
恐る恐る顔をあげると苦笑する近藤さんの他に怖い顔の皆が私をジロリと睨み付ける。
しまった!と思った瞬間。


「土方さん、やっぱり刀取り上げましょうよ。」

「珍しく気が合うじゃねえか、総司。俺もそう思ってたところだ。」

「刀がなくちゃあぶねえけど仕方ねえよな。」

「脇差があれば問題はない。」

「千華なら脇差でもなんとかなるだろうしな。」

「なんかあったらオレらが駆けつければいいし!」


いやいや、巡察の時どうすんの!?
私、愛刀なしで巡察しろっての!?
無理無理!!


『ちょっと!刀取り上げるのはやりすぎ……では、ないでしょう、か。』


だんだんと声が小さくなって、しまいには敬語になってしまった。

だって……だって……皆が鬼の形相で睨み付けてくるんだもん!
うわ〜ん!千鶴後で癒して〜!


結局私の反対も虚しく消し去られ、しばらくの間私の刀は幹部が交代交代で預かることに。
なぜ交代交代かというと一ヶ所にあると隙を見て私が取り返してしまうから。

そして脇差だけで隊務につく私に零番組の隊士たちは不思議そうに首をかしげた。


「組長、あの、刀は……」

『鬼たちの手のなか。』

「え……?」


たしかに脇差だけでもなんとかなるけども。
これはあんまりじゃないか。

私は刀を返してもらう日を夢に見て今日も巡察に出る。

皆、過保護すぎやしないか。


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