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一話

慶応三年六月上旬ーー。
伊東さんたちが新選組を離れて、三ヶ月が経っていた。
そんなある日の夜のこと。
そろそろ、寝なくてはいけない頃合だけど……。


『寝れない……』


次々と届く里の者からの文に返事を書いている最中なのだが、近頃は伊東さんたちが抜けた後のことで忙しく駆け回っていたので溜まりに溜めていたおかげで一向に減る気配がない。
おかげでいまだに寝れないのである。

溜めた私が悪いけど……何もこんなに送ってこなくても。
確かに里に帰らない私との連絡手段なんて文しかないのだけど……もうちょっと遠慮というものをしてほしい。
これでもし明日の朝、寝坊してしまったら本末転倒だ。
明らかに土方さんに怒鳴られる。
とにかく、頑張ってこれを終わらせて早く寝よう。

そう思って、文机に視線を落とした時だった。


「千華、まだ起きてるか?」


ふすまの向こうから声をかけられ、私は筆をおいて視線を向ける。


『起きてるけど……。何か用?土方さん。』

「おまえに来客だ。支度ができたら、雪村を連れて広間まで来てくれ。」

『来客ぅ?』


来客って、一体誰なんだろう?
しかも、こんな夜中に……。

不思議に思いながら私は手早く身支度を終え、千鶴を連れて広間へ向こうことにしたのだった。


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