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子守唄



-はじめside-



気分が悪いという美雪に付き添って柚葉が教室を出て行った後、俺は指定された席で古谷と一緒に先程の事を話していた。
俺の隣の席は柚葉なので先程美雪と出て行く前に渡された柚葉の薄いピンク色のカーディガンを椅子にかけておく。



「犯人は後3回はやらないと気が済まないみたいだな」
「あと3回···?」



不思議そうに尋ねてくる古谷に、俺は「ああ」と頷く。



「恐らく犯人は血文字で“コモリウタ”と書こうとしてんのさ」



俺は古谷にそう言った後、周りでテキストやらをパラパラとめくっているガリ勉野郎どもを見回した。



「しっかし休み時間だって言うのに、まだ勉強してんのかよ。······あ、そうだ!このクラスの生徒がさ、小野先生のこと恨んでるってどういうことだ?」
「いい先生だからさ」
「いい···先生?」
「友達を大事にしろ。夢を持て。恋愛は素晴らしい。そんなことこのクラスには関係ないからね」



どこか冷めた様子で周りを見回しながら言う古谷に曖昧な頷きをしていると、



『はじめちゃん大変!』



呼ばれて見てみると、美雪と一緒にいたはずの柚葉がドアの所で手招きしていた。
すぐに駆け寄って柚葉と一緒に廊下を走る。

『あそこ!』声をあげる柚葉と一緒に野次馬がいる美術室に入ると、美雪の「ゆづちゃん、こっちこっち!」という声に一番前にいる美雪の元へと向かった。



「おい。どけよ吉村。そんな薄気味悪い絵、俺たちが処分してやっからよ」
「そんな絵があるから変な事件が起こるんだ!」



女の人の絵を庇うように立つ吉村と対峙する室井と仁藤。(先程古谷に教えてもらった)



「あんたたち、この絵が怖いんでしょ!?」



その絵は髪の短い女が子供を抱いている絵だった。
吉村が言ったその言葉に室井と仁藤が微かに反応を見せる。



「···笑わせんじゃねえよ。お前こそ惚れた男の絵が欲しいんじゃねえのか?」



室井の言葉に吉村も微かに反応を見せた。
室井と吉村の言い合いを見ていた柚葉が隣にいた女子二人組に小声で声をかける。



『何なの?あの絵』
「深町君が描いた「子守唄」よ。ねぇ、また髪の毛伸びたんじゃない?」



その言葉に俺と柚葉は「『え?』」と眉を寄せた。


髪が伸びる······?


その時、騒ぎを聞きつけた小野先生が美術室に入ってきた。



「あなたたち、何してるの!?」
「······急に鶏臭くなった」



小野先生が来た途端教室から出て行く室井たちに小野先生は怒ったような顔を見せると、



「みんなも教室に戻りなさい!部活の人は部活に戻って!!ほら、早く!」



背中を押されて教室に戻った。





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