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学園七不思議



その後、あたしたちはファーストフードへと来ていた。
美雪の向かい側にあたしと金田一君が隣合わせで座る。


───この学校が出来て間もない頃に起こった話なの。
科学室の切れた電球をひとりの女子生徒が先生に言われて蝋燭を灯しながら交換していたの。
先生が様子を見に来た時、蝋燭の明かりの中でその女子生徒とは死んでいた。
それからなの。
奇怪な現象が始まったのは。
停電が起こった時にね、宿直の先生が蝋燭に火をつけたら。
首をつって死んでいる女子生徒が現れたんだって。
それ以来、その科学室には誰も近づかなくなり、開かずの間になったの。




「これが七不思議のひとつ、開かずの科学室よ」



そんな経緯があったんだ、あの部屋。


あたしはジュースを飲みながら美雪の話を聞いていると、隣で耳を塞いでいる金田一君に気付いた。



「ねぇ、聞いてるの?金田一君」



美雪がそう言うと同時にあたしは金田一君の耳から両手を引き剥がしてニッコリと微笑みかけた。



『終わったよ?』
「おお···」
「わかった?今のが七不思議のひとつの開かずの科学室よ」
「わかったわかった。おしまいおしまい」



そう言ってジュースを飲む金田一君に美雪は呆れた顔を見せた。



「おしまいって···まだ一つしか喋ってないわよ?」
「ひとつで十分だよ」
「金田一君、真面目にやってよ!いい?次は血塗られたドア。これがまた怖いのよぉ」



出た。
美雪これの話すると止まらないんだよなあ。


両手を組んで宙を見つめる美雪を目を細めて見つめる。



「ある時にね······んんー20年くらい前だと思うんだけど···」



美雪が話始めると、金田一君は両手を塞ぎながら「あああ」と声を発し始めた。


こいつ、聞かないようにしてるな。


美雪がこっちに視線を向けてきたので、あたしは仕方なくジュースを置いて、金田一君の手を掴む。



『金田一君、ちゃんとやりなさい···っ』
「なんだよ···」



そう言って振り返った金田一君との距離が近くて、あたしたちは見つめ合ったまま固まった。



「楽しそうね、ふたりとも」
「『先生······』」



突然聞こえてきた声にあたしたちは一緒に驚いて振り返った。
そこにいたのは浅野先生で。
先生はニヤニヤとしている美雪の隣に座った。


美雪の奴······何ニヤニヤしてんだ。


美雪の視線から逃れるように、ジュースを飲みながら顔を背ける。



「あ。そういえば先生ってうちの学校の卒業生なんですよね?」
「ええ、そうよ」
「『へえ〜』」



あたしと金田一君がそう言うと、美雪は呆れたようにこっちを見た。



「ゆづちゃん、前に先生が言ってたじゃない」
『そうだっけ?』
「また寝てたのね···」



ヤバい。
話を変えなくては。



『じゃあ、先生!今度あたしたち創立祭で学園七不思議の謎を解こうと思ってるんですけど、何か知ってます?』
「学園七不思議······」
「···ええ······ダメですか?」



視線を逸らす先生に美雪が隣からそう問いかけると先生は慌てて笑顔を浮かべた。



「そういうわけじゃないけど···職員会議でも変な噂流す生徒がいるって問題になってるの。あんまり深入りすると、目をつけられるわよ」



あたしの場合、もう目をつけられてるようなもんだと思うけど。
授業中寝てばっかだし。



「それじゃごめんなさいね、邪魔しちゃって」



そう言ってビニール袋を持って立ち上がる先生。



「あ、先生。これからまた学校ですか?」
「そう。物理の採点、今晩中に済ませておきたいから。それじゃ」



そう言って笑顔で去っていく先生。
それを見送って、あたしがハンバーガーを食べると、金田一君はあたしと美雪に「なあ」と話しかけてきた。
それに『「ん?」』と返事をして金田一君を見る。



「先生ってさ、彼氏とかいんのかな」
「···さあ。今んところいないみたいよ」
『あんなに美人なのにね』
「へぇ···」



そう言ってニヤけた顔をする金田一君を美雪とふたりで睨みつけた。





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