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柿本の遺体



翌朝。
朝が弱いあたしを起こしに来てくれたはじめちゃんと美雪をコテージの前に待たせて、急いでズボンと肩出しシャツに着替えた。



「おはよう、ゆづちゃん」
「はよ、柚葉」
『うん、おはよう』



軽く髪を整えて顔を洗って、外に出るとはじめちゃんたちと合流して母屋へと向かった。
途中クリス君とも合流して一緒に向かう。
すでに中には矢萩さんと碧さんと岩田さんがいて、豪勢な食事が食卓に並んでいた。



「『おはようございます』」



眠そうに欠伸をしながら挨拶をすると、碧さんと執事服に着替えた岩田さんが元気に返してくれた。
矢萩さんも「おはよー」と棒読みだが返してくれる。



「おお、こりゃあまた豪勢な朝食だ!」
『やったね!』



朝からの豪勢な食事にテンションを上げてあたしとはじめちゃんは席に着いた。
あたしの隣に美雪も座る。



「皆さんに元気をつけてもらおうと思って」



すると、居間にあるソファに座ろうとしたクリス君が「うわ!」と声を上げて立ち上がった。
そして「き、金田一さん、鈴蘭さん!」とはじめちゃんとあたしを呼ぶので「『ん?』」と返事をすると「これ!」とソファの上を指差される。
あたしたちは立ち上がってクリス君の元に駆け寄った。
ソファの上には顔が血だらけで下半身が分かれている日本人形があって、思わず一歩下がる。
あたしはすぐに日本人形が並ぶ棚を見た。



『はじめちゃん!』



呼ぶとはじめちゃんも振り返って棚を見る。
そこには一体、日本人形がなくなっていた。



「人形の数が一つ少なくなってる···」
『昨日はあったよね?』



顔を見合わせていると、「矢萩!大変だ!!」と悲鳴に似た声が聞こえた。
振り返ると、血相を変えた八十島さんが慌ただしく部屋に入って来て。



『八十島さん!』
「か、か、柿本が···!」



震える手で柿本さんのコテージの方を指差す八十島さんにあたしとはじめちゃんは顔を見合わせてすぐに駆け出した。
みんなも急いで後を追ってくる。
並ぶコテージの間に来て、どっちか確認するようについてきた八十島さんを振り返ると「左だ左!」と指差されて急いで向かった。
中に入ってすぐにはじめちゃんが開け放たれたドアまで後退り、あたしも目を見開いてはじめちゃんの服を掴むと彼はすぐにあたしの肩に手を添えて抱きしめてくれた。
八十島さんが震える声で「これだ!これだよ!」と指差す。



「なんてこった···」



矢萩さんがそう言うと、私は思わず顔を歪めた。



「ゆづちゃん!はじめちゃん!」



入ってこようとする美雪たちをすぐに『入るな!』と止める。



『ふたりとも入っちゃダメだよ』



念を押すように強くそう言うと美雪と碧さんはコクコクと頷いた。
あたしの肩を抱き寄せながらはじめちゃんが一歩前に出て部屋の中を見回す。
そして視線を下へと向けると、そこには部屋が血で真っ赤に染まり、目を開けた状態で上半身と下半身に分けられている柿本さんの遺体があった。
血が天井までついていて、そこから滴り落ちる血が灰皿に溜まってポチャンッと音を立てる。
はじめちゃんはあたしから離れてテーブルの上にあったメモ帳を見ると、すぐにあたしを呼んだ。



「柚葉」
『···っなに?』



死体を避けるようになるべく見ないではじめちゃんに駆け寄るとメモ帳を指差された。
見ると、屏風に書かれていた言葉がまるまるメモ帳に写されていて、朱の鳥という所に赤い鉛筆で丸が書かれていた。



『朱の鳥······?』





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