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人形のような花嫁



それから夜になるのを待ち、あたしたちは時計の館へと侵入した。
人がいなくなったのを見計らって、美雪と先生を先頭に窓から中へと入る。



「おい···これってちょっとマズいんじゃないか?」
「だって式は明日よ?それまでになんとかしないといけないんだから、手段なんか選んでられないわよ」
「そりゃそうだけどさ···」
『これって不法侵入なんじゃ···』



あたしとはじめちゃんが止めたが、先生と美雪はさっさと奥へと行ってしまった。
あたしとはじめちゃんは顔を見合わせて溜息を吐くと先を行くふたりを追いかけた。
玄関の上の階段から下を覗き見ると、ちょうど玄関の扉が開いて三人の男女が入ってきた。
小太りの男の人を見てはじめちゃんが口を開く。



「風見鶏の館の主、風祭淳也」



そしてあたしは真ん中にいる白いショールを羽織っている女性を見る。



『白い館の主、冬木三子』



そして眼鏡をかけた男の人をはじめちゃんが見る。



「あとは、鎧の館の主、兜礼二だな」
「どうしてわかるの?」
『おじさんたちのエンブレムとおばさんのブローチ見てみなよ』
「紋章の尖った部分がさ、村での館の位置を示してるんだよ」
「なるほど···」



その時、ドアがギイイッと開いて、若葉のお父さんが出て来た。



「これはこれは···ようこそ!我が娘、若葉のために御忙しいところをお運び頂きありがとうございます!」



そう言ってお父さんは三人と握手を交わす。



「こちらこそお招き頂きまして、誠にありがたく存じます」
「お嬢様のご結婚、おめでとうございます」
「はは、よろしゅうございましたのぅ」
「さ、パーティの準備も整っております。どうぞ、こちらへ!」



そう言って時田さんは二階へと続く階段を指差した。
ちょうどそこにはあたしたちがいる。



「やべ、こっち来るぞ!」
『早く奥行って!奥!』



あたしは先に行く美雪たちを急かすように言って奥へと向かった。
あたしたちはベランダから暗い部屋へと入った。
はじめちゃんを先頭に部屋へと入る。
すると前を歩いていたはじめちゃんが何かに当たって音を立てた。



「『しぃっ!』」
「しぃって言われても···!」



痛む足を押さえながらあたしたちを振り返るはじめちゃん。
すると何に当たったのか気になった美雪が箱を覗き込むと「キャアッ!」と悲鳴を上げてあたしの腕にしがみついてきた。



「おま、キャアッって···!」
『静かに!』
「しぃ···!」



あたしとはじめちゃんで美雪を托すと、彼女は自分の唇に人差し指を立てながらしぃっとやった。
そしてあたしの腕を引っ張って「こ、これ!」と震える手で箱を指差す。
あたしたちはそれを覗き込んだ。
はじめちゃんが当たったせいでずれた蓋をゆっくりとずらすと、中には頭がないミイラが入っていた。



「首がないわっ!」
「わあ!」
『なにこれ!?』



思わずあたしたちが声を上げて後ろに下がると、それと同時に部屋の明かりがついた。



「誰だ、そこにいるのは!」



使用人の人が入ってきて、あたしとはじめちゃんと美雪は急いで先生のいる壁際まで下がる。
すると若葉のお父さんが入ってきてあたしたちを見て「お前たち···!」と言った。



「何をしに来たんじゃ!」
「なにをって言われましても···」
『えーっと···』



あたしとはじめちゃんが言おうとすると、先生がお父さんたちの前に歩いて行った。



「時田さん、お願いです。若葉さんの結婚式を中止してください」
「なにをバカな!!」
「私の結婚のお祝いに来てくれたのよね」



ベランダから声が聞こえて振り返ると、純白のドレスに身を包んだ若葉が出てきた。
思わずその姿に見惚れる。


うっわぁ···。


若葉は先生と目を合わせるとお父さんへと視線を向けた。



「お父様、私はどこにも逃げたりしません。予定通り今夜、儀式を行います」
「若葉···本当にいいのか!?」



若葉は先生から顔をそらして「はい···」と頷いた。
無表情に全てを語る彼女に、あたしとはじめちゃんは先生と若葉の顔を見比べた。


なんか、納得できないよねぇ。



「皆様、ごゆっくりとパーティを楽しんでください」
「若葉···っ!」



淡々と語る彼女の顔をあたしは眉を寄せながら見つめた。
まるで人形のようだった。





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