想い続けられた幸せ あれから1ヶ月が過ぎました。 鷹島さんにあしらわれる真壁君を、あたしと美雪は笑いながら眺める。 美雪の頭の包帯はまだ取れていない。 あ、ちなみにあたしはもうすでに包帯は取れている。 あの事件の事はもう、すっかり忘れられてしまったようです。 あたしと美雪は花壇に水をやっている金田一君を見て微笑み合うと、彼の傍へと近寄った。 何時もそこには的場先生が水をやっていた。 「浅野先生、10年間ずっと辛かったんだろうね」 『そうだね···』 「美雪····柚葉···」 金田一君はあたしたちを見ると水やりをやめた。 「好きな人が近くにいながらも自分が犯した罪のために、その想いを打ち明けることもできずにずっと苦しんでたなんて」 「女の気持ちなんてよくわかんねぇけど···浅野先生、幸せだったんじゃないかな」 『どうして···?』 「10年間ずっと誰かのことを想い続けていられたなんて幸せじゃないのかな。そう思ってやろうよ」 此方に顔を向けながらそう言った金田一君にあたしと美雪は「『そうだね』」と微笑んだ。 そしてあたしは、花壇を見詰めながら口を開く。 美雪が隣にいるけど、そんなの気にしない。 『あのね····あたし、本当の事言うと····あの···金田一君のこと···』 顔を手で隠しながらそう言ってさっきまで金田一君がいた隣を見る。 『あれ···?』 思わず声を低くしてしまった。 あたしが見た場所には誰もいなくて···。 でもたしかにさっきまで金田一君がいたはずなんだけど。 そう思って辺りを見回すと、美雪が「ゆづちゃん」と言って階段の方を指差した。 そちらを振り向くと新しい新任の先生に声をかける彼の姿が。 「先生!名前は?」 「教えないって言ったでしょ?」 あたしはそっちを睨みつけた。 『あいつ···』 せっかく人が勇気出して言おうと思ったのに···っ。 「先生、住所はどこですか?」 なおも縋るが相手にされてない金田一君の元に近寄って振り向いたと同時に彼の頭をパシンッと叩く。 「いて!」 『勝手にしなさいよ、このバカ!』 「なに怒ってんだよ···」 あたしは金田一君を無視して踵を返すと、『美雪、行こ!』と何故か溜息を吐いている美雪の手を引っ張ってさっさと歩き出した。 その後を追いかけてくる金田一君。 「柚葉!柚葉、何怒ってんだよ」 『知らない』 「約束しただろ?」 『何をよ!』 「12年前に約束しただろ、俺たち!」 『バカ!』 NEXT TOP |