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蝋人形城



城についたのは辺りが暗くなってからだった。
並んで呆然と見上げているとおっさんが呟いた。



「死霊の住処、蝋人形城か···そう呼ばれているそうだ」
「『蝋人形城···』」



城を見上げながら復唱するあたしとはじめちゃんを美雪が不安そうにチラリと見た。
おっさんがコンコンと取っ手を叩くが、出てくる気配がない。

「入ってみようか」と言うおっさんの言葉に頷いてはじめちゃんが扉を開けて入っていく。
中を確認した彼が手招きしたのを見てあたしたちも中へと入った。



『すいませーん。どなたかいらっしゃいますか?』



そう呼びかけても誰も返事をしない。



「何だよ、誰もいねえのかよ」



はじめちゃんがそう零すと彼の顎にかけられた指ではじめちゃんの顔が横へと向けられた。
いつの間にかあたしたちの隣にいた執事服の男の人。



「お待ちしておりました」



あたしたちは目を合わせて居住まいを正した。


ちょっとビビった···。



「レッドラム様から承っております。どうぞ、こちらへ」



そう言って歩いていく、執事さんにあたしとはじめちゃんと美雪は思わずおっさんを振り返った。
おっさんに宥められるように肩を叩かれてはじめちゃんを先頭に歩きだす。
緑色と赤色の蛍光灯が照らす暗い廊下を執事さんについてゆっくりと歩く。
怖がる美雪の手を引っ張ってあたしもはじめちゃんにしがみつくように足を進める。



「ゆづちゃん···」
『大丈夫か?』
「うん···」



あたしの背中にへばりつく美雪の手を引いて歩く。
時々振り返る執事さんにあたしたちも思わず足を止めた。


ちょっと、怖い···。


一つの部屋へと入ると、すでに参加者は集まっていた。



「柚葉、大丈夫か?」
『うん、ありがとう』



ずっとしがみついていたあたしに文句も言わず引っ張ってくれたはじめちゃんから離れる。
すると───



「ねえ!」
『ん?』



美雪に肩を叩かれてあたしは振り返ると、美雪は帽子をかぶって座っている女性を指差した。



「あの人···推理作家の多岐川かほるよ」



多岐川さんはあたしたちを一瞥するとすぐに視線を戻した。


へえ、推理作家ってことはお父さんと一緒か。
にしては聞いたことない名前だなあ。
お父さんが薦めてくる本しか読まないからかな。



「皆さま、当バルト城へようこそいらっしゃいました。私、皆さまのお世話を致します、南山と申します。それではまず、客室をご案内いたしましょう」



南山さんは背後にある地図を手でさしながら説明してくれた。



「現在、私たちがいるのがここになります。多岐川様、銭形様、剣持様、金田一様、鈴蘭様、七瀬様はこちらのお部屋になります。それから当麻様、リチャード様、坂東様、山田様、マリア様、真木目様はこちらの、青い塔のこのお部屋になります」



あたしたちはとりあえず、赤の塔の部屋へと案内された。
狭い廊下からぐるりと見渡していると、美雪があたしの腕を掴んできた。



「本当に吸血鬼がいそうなお城ね···」
「脅かすなよぉ」
『本当に···』
「皆さまのお部屋は!」



南山さんが言うのであたしたちは急いで一列に並び直した。


ちょっと自由にしすぎた···。



「こちらのお部屋になります」
「うっひゃ〜まるで牢屋じゃん!」



そう声をあげるはじめちゃんにあたしは『しぃっ!』と人差し指を口に当てて静かにと合図した。


気持ちはわかるけど素直に声に出さないでよ!



「パーティは8時から開催いたします。お部屋の中に衣装がご用意してありますので、それを着用の上、赤暖炉の間へお越しください」



南山さんに案内されてあたしは部屋へと入った。
荷物をベッドの上に放り投げて、辺りを見回す。



『なんかちょっと不気味なんだけど···絶対ゆっくり眠れないよ』



あたしはそう呟くと時間になるまでゆっくりすることにした。


なんか、他の人たちも感じ悪そうだしさあ···。


窓には鉄格子がはめられており、どこか囚人のような雰囲気がある。
マットレスも柔らかくないし。



『来ちゃいけないところに来ちゃったかなあ···』



ベッドへと腰かけてあたしはそのまま倒れこんだ。





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