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クリス・アインシュタイン



それからあたしとはじめちゃんは矢萩さんのコテージへと向かう。
ソファで煙草を吸う矢萩さんの前にあたしとはじめちゃんは隣同士に腰掛けると、持っていた写真立てをはじめちゃんがコトンッとテーブルに置いた。



「矢萩さん。あなたと八十島さん、そして殺された柿本さんは···以前、この島に来たことがあるそうですね」



矢萩さんはライターの蓋を閉めたり閉じたりする。



「そのことについてお話を」



あたしたちが真っ直ぐと矢萩さんを見ると、彼はテーブルの上に乗せていた足をどかして、お酒を手に取ると窓際に歩き出した。



「話なんかねえよ」
『あなたの仲間だった人間がすでに2人も殺されてるんです。次に狙われるのはあなたかもしれない···』
「それとも10年前······何か隠さなきゃならない事件でもあったんですか」



矢萩さんを追うようにあたしとはじめちゃんもソファから立ち上がると、矢萩さんは窓際で煙草を吸って煙を吐いた。
一度こちらに視線を向けて酒を飲む。



「·········あれは今から10年前の話だ」



矢萩さんは静かに語り出した。



「俺たちはこの島の財宝伝説に目を付け、この島の所有者である美作の任命で島中を探索したんだ。ところがある日······捜索中の佐伯教授が前もって、崖から転落してしまったんだ」



あたしとはじめちゃんは静かに話を聞く。



「佐伯考古学科もそれで解散。今回美作からの招待状が届くまで···俺ぁ、一度もこの島に足を踏み入れたことはなかったんだよ」
「招待状?」



矢萩さんはフンッと鼻で笑う。



「俺は例の試験なんか受けてねえよ。そんないきさつから美作に無条件で招待を受けたんだ」
『それじゃあ、八十島さんや柿本さんも?』
「多分ね」



あたしとはじめちゃんは考えるように視線を下に向けた。
その時、「おい、金田一、鈴蘭」と小声で名前を呼ばれて矢萩さんへと視線を向ける。



「あのクリスっていうガキには気を付けろよ」
「どういう意味ですか?」
「······もしかしたらヤツは間欠泉が噴き出すのを知っていて、わざとお前達をあの場所に誘い込んだかもしれない」



ゆっくりと歩み寄ってあたしたちの後ろを通る矢萩さんに、あたしは『···そんなっ、まさか!』と笑い飛ばそうとして矢萩さんを振り返る。



「半年ほど前。アメリカでIQ180の天才少年が登場したと、ちょっとした話題になったことがあってな。確か、日本の新聞にも紹介されたはずだ」
「···まさか、その天才少年は···」
「······クリス・アインシュタイン」



その名前にあたしとはじめちゃんは顔を見合わせた。





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