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傷つけられた怒り



美雪と空をロッジへ運んで、布団の上に寝かせる。
足に巻かれているハンカチはすぐに血で真っ赤に染まっていた。
あたしは寝かされているふたりを見ながら顔を歪める。


なにが、大丈夫だよ···。
先輩が一緒なら大丈夫とか···そんなわけないじゃん!



『なんでこんな事になったんだよ·········なんでこんな事になったんだよ!!!あんた一緒にいたんでしょ!!?』
「柚葉···!」
「鈴蘭君···」



あたしの腕を掴んで止めるはじめちゃんを無視して、あたしは彼に腕を掴まれていない方の手で先輩の胸倉を掴んだ。
あの時、先輩に手を引かれながらあたしを振り返るふたりの眼差しが脳裏に浮かぶ。



『あんたのせいで美雪と空は······ッ!!』
「「やめて···っ」」



ふたりの荒々しい息遣いと共にそんな声が聞こえてきて、あたしは彼女たちを振り返った。



「先輩を責めないで···っ!わたしたちのせいよ···っ!」
「私たちの不注意のせいよ···っ!」



泣きそうな声でそう言ったふたりはすぐに顔を逸らした。



『美雪···空···』



はじめちゃんに「柚葉」と呼ばれて腕を引かれたと同時に、先輩の胸倉を掴んでいた手を離す。



「一刻も早く設備のある所で治療しないと、傷口が化膿したりしたら···」
「ボートがあるかもしれません」
「ボートがある?」



はじめちゃんとあたしは九条さんの言葉に眉を寄せて彼を振り返った。



「···ええ、湖に」
「何で今まで黙ってたんだよ」
「僕水恐怖症で乗れないから···」



あたしとはじめちゃんは眉を寄せたまま九条さんを睨み付けた。





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