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 ハッピーバレンタイン

「「「はい、どーぞ!!」」」



朝、リクオが日直で早く行ったので私はゆっくり行こうと本家を出ようとすれば…目の前には氷麗や毛倡妓など女妖怪たちが揃っていて、私にラッピングされた包みをつき出してきた。


パチクリ…と目を丸くしたがみんながキラキラとした眼差しで見てくるのでとりあえず受け取れば───キャアキャアッ言いながら走り去っていった。


おい、氷麗のやつ護衛はいいのか。



『何だ…?』



何故か奴良組の妖怪たちから熱い視線を受けながら、私は学校へと歩き出した。



「さすがだな…」
「あぁ…オレらもまだもらってないのにな…」
「まさか先に貰うとは…」



私の後ろ姿を羨望の眼差しで見送る妖怪たちのことは気づかなかった。


そして学校へと着いて、上履きを取り出そうと下駄箱を覗けば───ドッサリと積まれている箱の数。朝氷麗たちに貰ったようなものと似たようなものがたくさん積まれていて、またか…と顔を歪めていれば後ろから肩を組まれた。



「やーっぱり、あったか〜。さすが浮世絵中の王子様」
「さすがだね。もうこれだけもらったんだ」



後ろから現れた巻と鳥居に挨拶をしてこれが何なのか聞いてみれば、心底驚かれた。



「今日何の日か知らないの?」
『知らないから聞いてるんじゃん』



すると二人ははぁ〜…とため息を吐いて、やれやれ…と肩を竦めた。何だかその反応がムカついて『何?』と再度問いかければ二人は鞄から同じような包みを取り出して「「はい」」と渡しながら───



「今日は何日でしょう?」
『はあ?……今日は2月14………あ…』
「わかった?」
「「ハッピーバレンタイン!!」」



そうか、今日はバレンタインか…。と氷麗たちからの包みと下駄箱に入っている包みを思い浮かべて、私は苦笑いを浮かべた。


こういうのって普通は男の子が受けとるものじゃないのか。


とりあえず二人からのチョコを『ありがとう』と丁寧に受け取って、下駄箱に入っているチョコの数々も腕に抱えて教室へと向かう。すると教室に着くまでに色々な子からチョコをもらって、教室に着く頃には私の腕はチョコの箱で満杯になっていた。



「あ…!」



入ってきた私に気づいたリクオが駆け寄ってきてくれたが、すぐにチョコの数に気づいて「すごいね…」と少し引いてますみたいな反応をくれた。


そして持ちにくそうにしている私を気遣って、半分以上のチョコを持ってくれる。リクオと二人でこれは誰からやら、この子知らないね、なんて話ながら仕分けしていれば後ろからドンッと抱きつかれた。


思わず目の前のチョコがいっぱい乗っている机の上に手をつく寸前だったが、チョコの箱が潰れないように足で踏ん張る。



『カナ、危ないじゃん』
「いいじゃない、別に。それより、はい。チョコ!ちゃんと受け取ってよね!」
『ありがと』



頭を撫でれば、浮世絵中五本指に入る程の美少女は可愛く頬を染めてもじもじ…とした。だがすぐに私の机の上にあるチョコの数を見て顔をひきつらせる。



「このチョコ…全部そうなの?」
『ん?みたいだね。みんなくれるなんて優しいよね』
「あ、見て。机の中にもはいってるよ」
『あ、ほんとだ』
「この分じゃロッカーにも入ってるんじゃない?」



リクオの言う通りロッカーを見れば、確かにチョコが入っていた。


こんなにいっぱいもらっても食べきれないのが本音なのだが…。ていうか、だから学校に到着してから男子の視線が痛かったのか。ゴメンよ、君たちより先にもらっちゃって。



「…っ…っ」
『カナ…?』
「…っバカーーー!!!」
『……は?』



耳元で叫んだかと思えばカナはダダダダッと教室から出ていってしまった。その後を呆然と見送れば、何やってんだお前…みたいな視線をクラスから受けた。


いや、私悪くなくない?



「大変だね…」
『…はあ』



リクオからの言葉に大きなため息をこぼした。



ハッピーバレンタイン

リクオと一緒に本家に帰れば
両手に袋を下げた私を見た妖怪たちは笑い転げ
氷麗たちから膨れっ面で睨まれ
総大将からニヤニヤとした視線をもらった




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