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無我夢中で階段を駆け上っていると終わりが見えてきた。あそこが牛鬼の屋敷か!
やっと見えたことに喜びを感じてラストスパートをかける。
『···ついたああああっ!!』ダンッと思いっきり地面に足をつけて両手を上げる。
くそっ。どんだけ階段のぼるんだよ、遠すぎるわ。
膝に手をつきながら息を整える。チラリと見えたのは不気味に屋敷を照らし出す月の姿。私は息を整え終わると月が照らす屋敷の中へと足を進めた。
屋敷の中へ入るとやっと見知った気配があった。私はその人達がいる部屋へと足を進めて襖を静かに開けた。
「何を考えている、牛鬼」
リクオの声に牛鬼はチラリと後ろにいるリクオを振り返る。その時、襖を開けたままの私をチラリと見た。
リクオは不敵な笑みを浮かべたまま牛鬼を見つめている。
「ああ、やはり来られましたか···」
「姫様も···」小さく呟かれた言葉にリクオはチラリと私を見た。
「血を継いでいるのは確かなようだ」
一触即発の雰囲気に私は息を潜めて二人を見つめ続けた。
襖を開けた瞬間「なんであんな長い階段なの!?」とか文句言ってやろうと思ったけどそんな雰囲気じゃないし。もし言ったりでもしたら二人から冷たい視線がきそうだからやめるとしよう。
私は清継くんみたいな空気の読めない人ではない。