五
旧鼠も片づけた事で出入り終了。私達は帰ろうと踵を返すと、
「ま、待ってぇ!お前が妖怪の主か!!」
声をかけられ立ち止まるリクオ。リクオに腰を抱かれていた私も必然的に止まるのだが。リクオがチラリと横目で花開院さんを見ると彼女は振り返った私の顔を見た。
「あんたはかぐや姫やな!?」
そう声をあげる花開院さんにクスッと笑う。
お察しの通り。
笑みでそう伝えると花開院さんはぐっと拳を握りしめて、噛みついてきた。
「あんたらを倒しに来たんや!!次に会う時は絶対、倒す!!」
その言葉に私達は目を合わせると軽くフッと笑った。
「せいぜい気を付けて帰れ」
『首無、あんた女に甘いわね』
花開院さんの肩にかかっている首無の羽織を見てクスリと笑うと私達は闇の中へと消えていった。
先に行っていた百鬼夜行に追いつくとみんなに心配された。
「姫、お怪我は!?」
「頬、大丈夫ですかい!?」
「姫様ぁ〜」
焦りながら声を掛けてくる黒田坊と青田坊を押し退けて氷麗が抱き着いてきた。その冷たさに思わず体が震える。
「無事でよかったです!」
ぎゅっと抱きしめて涙声でそう言う氷麗を見て私は彼女の髪の毛を撫でた。するりと滑るような髪の毛は私のお気に入りだ。
『心配かけてごめんね?大丈夫よ』
ニコッと微笑むと本家の妖怪達はホッと息をついた。その光景を目を細めて柔らかい笑みで見ているとベリッと氷麗が引き剥がされた。
「いつまで抱き着いてんだ、雪女」
声の方に視線を向けるとリクオが口許を引き攣らせながら氷麗の首根っこを掴んでいた。バタバタと暴れた氷麗はむっと頬を膨らませてリクオを睨みつける。
「いいじゃないですか、別に!」
バチバチと火花が散っている二人。思わず私と妖怪達は声を上げて笑ってしまった。