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給湯室にいた妖怪は出てくる前に急いでドアを閉めて、トイレにいた妖怪は足で蹴りながら戻す。廊下の先にぶら下がっていた妖怪はリクオが急いで走り寄って殴り飛ばした。それを何回も繰り返すと皆は「なんもないねー···」「ホントだな···拍子抜けするくらい」と言いながら廊下を歩いていく。


私とリクオは荒い息を整えながら両膝に手をついた。


あ、ありえない───。入る前から妖気は感じていたけれどまさかこんなに多いとは。


私とリクオ、二人だけじゃ庇い切れないし、バレるバレないじゃなくて。


氷麗と青田坊はそんな私たちの姿を振り返り見ていた。さすがにこれ以上皆を先に進ませるのは危険だと判断し、声をかけようと顔を上げると皆が食堂に入っていくのが見えた。


マズイと顔を歪めてリクオと同時に走り出す。


中に入って清継くんと島くんが部屋の隅に懐中電灯を向けると、そこには何人かの妖怪が集まっていた。何かを食べている音が聞こえる。私とリクオが追いつくと振り返った妖怪達の間から骨が見えてしまっている鼠が見えた。


マズイ···!!


目が合ったと思うと妖怪達は襲い掛かって来た。



「うわぁ···ああぁぁあぁ」
「で···出たああああ」



食堂から逃げ出す島くんと清継くん。その声に目を閉じていたカナが体を震わせて「神夜ー!」と私の腕にしがみついてきた。カナがいるから金狐に変化するわけにはいかない。


どうすればいいの。



「リクオ様、神夜様。だから言ったでしょ?」
「『え』」



氷麗の声が聞こえたかと思うと驚く私たちの横を青田坊と氷麗がすり抜けていく。氷麗がその場にいた妖怪達を氷漬けにするとその妖怪達を青田坊が地面に押しつぶす。



「こーやって若ぇ妖怪奴らが、奴良組のシマで好き勝手暴れてるわけですよ」



いつの間に変化したのよ。



「うせな。ここはてめーらのシマじゃねえぞ。ガキども」



情けない声を上げながら退散する妖怪達。それを見届けると青田坊は私達を振り返る。



「若、姫···しっかりして下せぇー」



いや、いやいやいやいやいや!!



「え?な、何?ど、どういうこと···?だって、君達学生で···ええ!?」



混乱しながら二人を指差すリクオを見て氷麗が【護衛】だと言った。鴉天狗が話をしたらしいが私はそんなの聞いてない。


どうなってるの···?


私がリクオの護衛のために通っているのは皆知っている。なんせ総会で決まったのだから。だがこの二人が一緒に通っていたのは全然知らなかった。



「四年前のあの日···これからは必ず御供をつけるって!」
「知らなかったんですか!?ずぅ〜っと一緒に通ってたんですよ!」
「ずぅ〜っと!?きいてない···きいてないぞぉ〜!!」



ショックを受けるリクオと私の隣にある窓から鴉天狗が姿を現した。



「いいえ確かに言いました。このカラス天狗が」
「いっ」



そんな鴉天狗に驚くリクオ。詳しく聞けば四年前のあの日、帰りの遅いリクオを迎えに行った時に言ったらしいが、私はその時一緒にいなかったため知らない。


その時は私、学校に通ってなかったし。



「だからボクは人間なの!!」
「まだおっしゃるのですか!!あなた様は総大将の血を四分の一···」
「ボクは平和に暮らしたいんだぁ〜〜!!」
「神夜〜何〜?」



鴉天狗とリクオの口論が始まろうとしている時、聞こえたのは私の背中に張り付きながら目を瞑っていたカナの声。私はガッチリと背中に張り付いているカナを振り返る。



「ねぇまだ···目ェあけちゃダメ!?まだ怖い〜?」
『え!?あ、ええ。もうちょっとかな···』



そういえば清継くんと島くんはどこだろう。


周りを見渡すと廊下の端で気絶している二人を見つけた。氷麗は私の背中にしがみ付いているカナをじとっとした目つきで睨みつけている。


とりあえずリクオに二人を起こしてもらう。


今だ私の背中にしがみついているカナとそんな彼女を睨みつける氷麗を見て、何故か溜息を吐きたくなった。



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