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正体



「やれ···魔魅流。さっさと···しまつしろ」
「奴良くん···」



ゆらの声が聞こえて神夜は小さく、『首無』と声を発した。


それに頷いた首無はリクオに近寄っていく人間の後ろに回り込み、



「闇に···滅っせよ」



そう言う人間の手に糸を絡ませた。



「はい───そこまでだ」



突然の首無の声に皆が振り返る。



「その手をひっこめるんだ───浮き世の人よ。でなきゃ、ただじゃあ···すまないよ」



首無と牛鬼組に注意がいっているうちに奴良組の妖怪達でこの場を囲む。


それに素早く反応したゆら達。さすが陰陽師という所だろうか。


だがそれより早く、たくさんの妖気が溢れかえりその場に霧が漂う。


晴れた先に見えたのは、ゆら達やリクオを囲むようにいるたくさんの妖怪達。



「······どう···なってやがる···?でたらめな数じゃねぇか」
「······お兄ちゃんコレ、百鬼夜行や」



ゆらがそう言うと黒髪の男が口を開いた。


花開院竜二。ゆらのお兄さんだ。



「百鬼夜行!?ふざけるなよ。だとすればこの中に···」



そう言って振り返った先には腕を押さえて座り込むリクオの周りに集まる黒田坊や、幹部たちの姿。それを黙視して竜二は静かに問いかけた。



「············お前···何者だ!?」
「オレは───関東大妖怪任侠一家、奴良組若頭 ぬらりひょんの孫ー奴良リクオ」
「ぬらりひょんの·········孫···だと···!?」



するとパタパタパタとこれまた可愛らしい音を立てながら人間の姿の氷麗が駆けてきた。そういえば氷麗はずっと人間の姿だったような気がする。



「みんな待って。ずるいですよ、置いてくなんて。

うわああ、ワナがー」



そう言ってこけた氷麗にしゃがみ込みながら首無が、



「雪女···お前人間の姿のままだぞ」



とさりげなく声をかけた。


ゆらは突然の氷麗の登場に目を点にしながら「······及川···さん···?」と声をかけた。それに反応した氷麗が顔を上げる。


そしてゆらの姿を目にとめて声を上げた。



「ひえっ!?な···なんで陰陽師の子がここに···?」



その姿にゆらは愕然と目を見開いた。



『あ〜あ、つらら。何してるの?』



突然、その場に響いたよく透る声。



「この声は···」
「また妖怪か!?」
「違う!お兄ちゃんこれは···」



ゆらが竜二を止めようとすると、ひらりと桜の着物がリクオの前に降り立った。



『ご無事ですか?若様』



そう言ってニヤリと笑みを浮かべる彼女にゆらは声を上げた。



「神夜···!?」



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