だまし合い
氷麗達を引き連れて向かったのはたくさんの妖怪達が集まる中庭。そこにはリクオ派の妖怪どもがわんさかといた。見回すと、牛鬼組たちまでいる。珍しい、馬頭丸がいるのはなんとなくわかるけど牛頭丸までいるなんて···多分、牛鬼に連れてこられたんだな。お、邪魅もいるじゃないか。
「姫様···!」
私の姿を視界に入れた途端、皆がシーンと静かになった。ここにいる数の妖怪を見渡して私は皆の前に立つ。
『今から向かうのはリクオのところよ。今リクオは、何か大きなものと戦っている』
少しざわつくが私が口を開くとすぐに皆口を閉じた。
『先程、あの陰陽師の式神の気配を感じた。言いたいことわかるわね···?』
「リクオ様は、陰陽師と戦っていると?」
『ま、そういうこと』
牛鬼の言葉に肯定すると、先程より大きなざわめきが起こった。まあ、陰陽師なんて言えば皆行く気なんて失くすよねぇ。けど、ここで引かれちゃ困る。
『皆、リクオを信じてついてきたんでしょ?なら、私達はリクオを支えなくちゃいけない。たとえ陰陽師だろうが、リクオが危険なめにあっているならば助けにいく』
陰陽師?そんなの知らない。
学校の友達?ゆら?そんなの知らない。
リクオが危ない目に合っているならば助けに行かなくちゃ。リクオに一方的に守られるだけじゃダメだ。リクオは私を守るって言ってくれたけど、そんなんじゃ私がダメになる。
リクオは私が助ける。若頭や大将を支えるのが“姫”ってもんでしょ!
『リクオの元に行くわよ。
ついて来なさい!!』
羽織を翻して足を進めると皆が声を上げて私の後ろに付いて来た。ま、それでも私の後ろを歩くのはお決まりの氷麗たちなんだけど。
ぞろぞろと皆を引き連れてリクオの元へ向かっていると、後ろで首無と氷麗の話声が聞こえた。
「雪女、楽しそうだな」
「え···?だって、あまりにも姫様がカッコよくて···」
氷麗がそう言うと毛倡妓が「そうよね〜」と会話に加わった。
「さっきの姫様は今までのどの姫様よりカッコよかったわよね」
「さすが姫様」
毛倡妓が言い出すと皆が口々に言い出す。私はそれを前で聞きながらふっと口角を持ち上げた。
だんだんリクオの元に近づくにつれて式神の気配とリクオの妖気が大きく感じる。もうすぐ···もうすぐ、リクオの元に辿り着く。
けれど、この気配はゆらの式神の気配ではない。あ〜クソ、金狐の姿じゃないからうまく読み取れないや。