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熱を出す



『ん〜···』



突然ですが私は今日学校を休んでいます。


理由はリクオが熱を出したため。一応のため私も休ませられたのだ。(本家の妖怪達を押し切って学校へ行こうとしたらリクオに引き留められた)


あの時のリクオはダメだと思うんだ。



"ボクを置いていくの?"



あんな捨てられた子犬のような目で見られたらリクオを置いて学校に行くなんてことできません。


ベッドの上でゴロゴロしていると私の部屋の前を妖怪達が通る足音がした。リクオの部屋に行くのだろう。今、本家の妖怪達はリクオの看病につきっきりだ。


そういえば、氷麗の姿が見えないな。


そう考えていると、バンッと思いっきり襖が開け放たれた。



『何!?』
「姫様〜すいませんー!!」



私の部屋の丁度前にいた小妖怪を蹴飛ばして入って来たのは氷麗だった。思わず起き上がって目を丸くしている私の前に座り込んだ氷麗は私の手を握りしめながら早口に話し始める。



「私としたことが!!側近なのに!!姫が学校に来てないのを知らずに普通に登校してましたー!!」



リクオも登校してないけどね。


目の前で慌てふためている氷麗の頭を撫でながら心の中で突っ込む。


暫くして氷麗が落ち着いてきたので彼女の手を引いてリクオの部屋に向かった。「姫、体は大丈夫ですか!?」やら「あの鼠、今度会ったら凍らせます!」とか後ろで騒いでいる氷麗の声を流す。


物騒なことが聞こえたのはこの際無視だ。


リクオの部屋へと到着すると中から声が聞こえた。だが後ろで騒いでいる氷麗のせいで誰の声かわからない。


まあいいか。と勝手に心の中で決めて襖をスッ···と開けると、一つの影が私と氷麗の横を通って床にドンッと倒れた。



『え、鴆···?』



目を丸くして床に倒れている鴆の姿を見る私の横をすり抜けて氷麗は布団に横になってこっちに目を向けているリクオに駆け寄る。


さっきの私に言ったような言葉を繰り返した後、リクオの手を握り、自分の体を溶けさしている氷麗とそれを見て騒ぐリクオと毛倡妓を横目に私は鴆の傍にしゃがみ込んだ。



『ゴメン、鴆』
「いや、大丈夫だ···」



いや、思いっきり頭打ってたよね?体ピクピクしてるけど。


そんな鴆を心配そうに見ていると彼は総会の時間だと言って広間へと向かった。その後ろ姿が時折よろめいているのを見て私は心の中でごめん···と謝った。



「神夜···」
『リクオ、大丈夫なの?』
「うん」



ニッコリと笑みを浮かべるリクオを見て私は安堵の息を吐いた。


とりあえずリクオの頭に大きい氷嚢を乗せた氷麗に連れられてリクオの薬とお茶を淹れに行った私達。


お盆に薬とお茶を乗せた氷麗の隣を歩いていると庭にいる河童たちがこそこそ隠れているのに気付いた。首をかしげているとリクオの部屋の方から微かに人の話声が聞こえる。


何故か私と一緒にいれる事に喜びを感じている氷麗はそれに気づきもせず笑顔でリクオの部屋の襖をガラッと開けた。



「お待たせ〜リクオさ···」
『ちょっとつらら、ここで止まんない───』



氷麗の肩から顔を出した私の目の前にはカナの顔。少し視線を逸らすとリクオの布団の周りに清継くんたち、清十字団の皆がいるのに気付いた。


やばっと顔を歪める私とリクオの前で氷麗はお盆を落とした。



『おっ···と』



すかさずそれをキャッチすると鳥居と巻が「おー!!」と拍手をした。


なんだかなぁ···。


お盆を持ってリクオの傍に行くと、リクオが小さく私の私服の袖を引っ張った。


私がリクオの傍に行ったことにも気づいていない氷麗は青白い顔で一歩後退する。



「ハゥワ······家長···」
「及川さん!?」
「あれ···」
「なんでここに!?」



終わったという顔で氷麗達を見る私とリクオの傍で清継くんが氷麗を指差しながら叫んだ。



「ははーん!!さては先にお見舞いに来たな?お茶まで持ってきて···気がきく娘だ」
「ホ···ホホホ」



引き攣った笑いを浮かべている氷麗を見て私とリクオはチラリと視線を交わすと氷麗に助けを出した。



「そ···そーなんだよ、みんな···」
『ほんの十分程早く彼女は来ただけで···』
「そーですよ···途中までは一緒だったでしょ」



苦し紛れの私達の言葉に巻は「あー?そうだったかもなー」と納得した表情を浮かべてくれた。



「そういえば、神夜は大丈夫なの?」
「そうだよ、心配したよ〜」
『あはは、大丈夫大丈夫』



やけに体をくっつけてくる巻と鳥居に苦笑いを浮かべると氷麗に腕を引っ張られた。ついでに言えば、リクオにも袖を掴まれている。


そんな神夜の様子をカナは信じられないという顔で見ていた。



(いや···ちょ···ちょっと···待ってよ···)



ワイワイと盛り上がっている神夜達を見る。



(さっき···私が出ようとしたとき···神夜···“つらら”って言ってなかったっけ?···こ、この二人···?)



怪しげな目で私と氷麗を見ているカナに気づきもせず清継くんはゴールデンウイークの予定を発表した。どうやら合宿をするようだ。



「場所はボクの別荘もある捩眼山!!」



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