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辺りが瓦礫とかす中、土蜘蛛は落ちていた小指を拾うと「フン」とブシュッと音を立ててそれをくっつけた。ドクドクと血が戻り、小指が元通りに戻っていく。


土蜘蛛は辺りを見回すとくるっと踵を返した。



「飽きたな、帰るか」



そんな時、微かな声で「リク···オ···様···」と瓦礫に潰されている妖怪達の声が土蜘蛛の耳に入った。砕け散った岩の真ん中に、祢々切丸を支えにして体を起こしている昼のリクオの姿。



「こんなところで···負けられるか···」



ハアハアと息を溢しながら荒い息をつく、リクオを土蜘蛛が振り返る。



「なんなんだおめーー、なぜ壊れない!?」



祢々切丸を支えに、目を瞑り荒い息を吐き続けるリクオ。



「若···もう······立たないで······」
「······ダメ···だ。ボクは···大将なんだ···から···」



納豆小僧の言葉にも耳を貸さないリクオ。土蜘蛛はそんなリクオを見つめた。


その時、土蜘蛛の背後に人影が見えた。それに気づいた土蜘蛛が振り返ると同時に奴の頬に衝撃が走り、



ードガアアッ



と土蜘蛛の体が浮き上がり、遠くまで飛ばされると同時に地面に打ち付けられる。リクオや奴良組の皆、遠野一家、そしてゆらたちが目を見開いている中、先程まで土蜘蛛がいた場所ーつまりリクオの目の前に立ったのは、奴良組の唯一の姫。そして頼れる【かぐや姫】の姿だった。


金色の髪と九つの尻尾をゆらりと揺らし、前髪の下から覗く翡翠の瞳が殺気を放ちながら吹き飛んだ土蜘蛛を睨みつける。



「神夜···!」
「姫様ぁ!」
「「神夜!!」」



リクオや皆が見上げる先······私はボロボロの姿でその場に立った。リクオや首無たち、淡島とイタクが声を上げて私を見る中、私は真っ直ぐに土蜘蛛を睨みつけた。


起き上がった奴の巨体が私を見下ろす。



「まだ生きてやがったのか···」
『勝手に終わらせんなよ。まだ勝負はついてないわ』



苦痛に悲鳴を上げる体を無理に動かしたせいで肺から血が込み上げる。私は口から血をペッと吐き出すと口許を拭いながら、リクオの背を支えた。



「神夜···!無理だよ、その体じゃ···」
「姫様···もうやめて···っ」
「神夜やめとけ!今のお前の体じゃ···」



みんなが心配して声をかけてくるが、私は近くの岩にリクオの体を寄りかからせると起き上がって夜桜を抜刀した。土蜘蛛と睨み合う。



「大将は一人じゃねぇか···」
『残念、私は大将になったつもりはないわ。ただの負けず嫌いよ』
「その負けず嫌いが身を滅ぼすぞ」
『言ってろ』



触発一発の雰囲気が流れる。夜桜をチャキ···ッと横に構えた時、土蜘蛛が飛び上がって此方に拳を振り下ろした。リクオに当たらないように体を横に少しだけずらして、奴の死角から飛び上がると、面と向かって斬りかかる。だが、それは簡単に塞がれて拳が体にめり込んだ。


ドンッと私の体が地面に打ち付けられ、跳ね上がる。



「「「姫様あああ!」」」
「「「神夜!!」」」



奴良組の皆やリクオ、イタク、淡島が声をあげる。私はすぐに態勢を整えて着地すると、飛び上がった。



「同じ事を···」
『ーー幻想桜···白昼夢』



夜桜の刃に手を添えてなぞるように毛先まで手を滑らす。土蜘蛛の拳が私に降りかかるが、それは体をスッと通り抜けた。



「何···!?」
「あれは···リクオ様と同じ!?」
「違う···あれは」



皆が声をあげるのをイタクが否定する。拳が貫いている体は本来の私の体ではない。



『どこ見てんだよ───狐火 龍閃』



声を上げて土蜘蛛の頭上に現れた私は、九つの尻尾から出た幾つもの青い狐火を龍の形にさせると、それを思い切り土蜘蛛の上からぶち込んだ。


ドシャアアアッと土煙が上がる中、私はリクオたちの傍に降り立つ。



「何···?今の···」
「幻想桜“白昼夢”。そして狐火“龍閃”」



毛倡妓の言葉にイタクが反応した。


「幻想桜 白昼夢」はそこにいるかのように幻を見せる。だが、その本体は桜からなっており、役目が終われば元の桜の花びらとなり、地面に散っていく。


「狐火 龍閃」は放たれる幾つもの狐火が龍の形になり、相手に噛みつく。それは火柱となり相手を囲み、攻撃をあたえ続ける。



「それが神夜が遠野で生み出した技だ」



イタクの言葉に私はニヤリと微笑んだ。土煙が晴れると、傷を負った土蜘蛛が私を見下ろす。



「おい···やるじゃねぇか。いいひまつぶしになりそうだ」



土蜘蛛がつまみあげているそれは···気絶をしている氷麗で。私は目を見開いた。攻撃しようにも、先程の戦いで体にガタが来たらしく、上手く体が動かない。



『······!?てめぇ、つららをどうするつもりだ!!』
「オレは相克寺ってとこにいるぜ。来いよ。自慢の百鬼を連れてな···」



ニヤッと笑みを浮かべて闇に消えていく土蜘蛛。追いかけようと足を動かすが、ガタが来ている体は動いてくれず、倒れる私の体をリクオが抱き止めた。



「神夜···!」



ぎゅっと抱きしめるリクオ。私は彼の支えてくれる腕に手を添えながら土蜘蛛を睨みつけた。



『ふざけんな···土蜘蛛ッ······土蜘蛛ぉおおおお!!



叫びが木霊した。



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