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人と妖



昔、リクオと鯉伴さんと一緒に散歩をしていた時、彼が言っていた言葉は今でも覚えている。よく散歩に連れていってくれた鯉伴さん。彼はリクオに選ばせると言っていた。






"神夜ー。オレはこいつに選ばせたいと思ってんのよ。人か···妖か"
"鯉伴さん···?"
"一度、妖怪任侠の世界に入っちまったらもう戻れねぇ。半妖のオレは妖を選んだが、こいつには妖の血が四分の一しか流れてねぇ。こいつの人生はこいつ自身が選ぶんだ···"
"どっちか選ぶ······"



私と同じ半妖の鯉伴さんの言葉は、その頃の私にはすごく影響が大きくて···。母と父の目を盗んでは鯉伴さんといつも一緒に散歩をしながらいろいろな事を聞いた。彼の言葉が今の私には一番影響が大きい。



"「将軍様の御膝下」でもねぇ「帝都」でもねぇ「東京」になってまた闇は薄まった···。まるでリクオの血みてぇに"



私と繋いだ手を離して、抱えていたリクオの頭をくしゃりと撫でると鯉伴さんはまた私と手を繋いで歩き出す。私はそれについて行きながら鯉伴さんの言葉を頭の中で復唱していく。あの頃の私は、鯉伴さんの言葉を全て覚えようと躍起になっていた。


ま、結構鯉伴さんに懐いてたし···私。



"そう───こいつが象徴なのさ。人と妖の未来のな···。だからこいつの前ではあんまり妖の世界のことは語らずだ。“親父”にもそうやってキツく言っとけ"
"おじいちゃんに···?"



嫌そうに顔を歪めてそう言った私に鯉伴さんは笑うとくしゃくしゃと私の頭を撫でながら頷いた。いやあの頃のおじいちゃんってさ、私を見つけるとすぐ引っ付いてきてうざったかったから、極力近づきたくなかったんだよ。今では私から行くけど、あの時のおじいちゃんは酷かった。



"自分で気づいたのならそんとき見せてやりゃあいい。な?リクオ"
"うわぁ、いたいよおとうさん"



くしゃくしゃとリクオの頭を撫でる鯉伴さんに私は微笑を浮かべながら頷いた。






ねぇ、鯉伴さん。今のリクオを見たら、貴方は何て言うのかな···。



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