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遠野で私が着せた着物の上から鴉天狗が作った羽織を羽織ったリクオと共におじいちゃんの部屋へと足を運んだのはそれから数分後のこと。


おじいちゃんは律儀に座って待っていてくれて、入ってきた私とリクオに遅いと顔を顰めるが私の姿を見てリクオと同じように「へぇ···」とニヤリと不敵に微笑んだ。やっぱり血の繋がりは侮れないな。一緒な反応をする。



「似合うじゃねぇか」
『ありがとう』



まあ、おじいちゃんが仕立てたんだから当たり前だよねぇ。遠まわしに自分の趣味でも褒めているのだろうか。まぁそんな事はどうでもいいが。


リクオと並んで座布団の上に腰を下ろすとさっそくおじいちゃんが口を開いた。



「帰ってきたってこたぁ"出られた"ってことだな」



脇息に肘を置きながら話す。



「何か得られたかい?」



ニヤリとしながらリクオを見上げるおじいちゃんに彼はチラリと視線を向けると両袖に手を突っ込んで口を開いた。



「·········どうかな。まぁ“ぬらりひょん”って妖怪が何なのかってのは···わかったかな」



リクオの返答に満足したような笑みを浮かべるおじいちゃん。



「そうかい。じゃあ───」
「ああ。これから京都に発つ」



リクオが顔を上げておじいちゃんを見た時彼の目の前に刃が迫った。腰を上げたおじいちゃんがリクオに突然斬りかかったのだ。だが彼は遠野で習得したぬらりひょんの畏で軽々とそれを避ける。そして次に姿を現した時は仏壇の傍で。


あ······危なかった!!
私はバクバクと鳴る心臓を必死に抑えた。ちょっと急にするのやめて。おじいちゃんに目配せされてたから分かってはいたけど避けていなかったら完璧に私も巻き添えにされてたよ。よかったね、私の反射神経良くて!瞬時に上体を逸らして避けた私を誰か褒めてよ!!



「おお〜よくできてるじゃねーか」



心臓を押さえる私の前でおじいちゃんはドスを肩に乗せると笑みを浮かべてリクオを振り返った。



「ま、好きにするがええさ。神夜、お土産に八ツ橋よろしく」
『私かよ!!!!』



思わぬ矛先に思い切りツッコむ。奴良組に戻ると本当にツッコミしかないよ!楽しいからいいけどさ!!「ふーやれやれ」とトントンとドスで肩を叩くおじいちゃんにリクオは呆気にとられた様に目を見開かせて振り返った。



「···ずいぶん簡単じゃねーか」



そう聞き返したリクオに笑みを浮かべるおじいちゃん。そして息を吐く私。



「因縁を断ってこい。帰ってきたらお前が三代目じゃ」



そう言い切ったおじいちゃんは「ああ、そうだ」と思い出したように声を上げた。



「京についたら"秀元"に会うとええ」
『誰それ』
「陰陽師のお嬢ちゃんにでもきくといい」
「······祝宴の用意でもして待ってろよ」



いい笑顔でそう言ったリクオと共に私はおじいちゃんの部屋を出て中庭へと向かった。


そしてそんな私達を出迎えたのはワイワイと盛り上がる遠野と奴良組。黒田坊と淡島はいつまでいがみ合ってんだ。



「おーおー仲良くやってんじゃねーかおめーら」
『これなら大丈夫そうね』



そんな私達に気付いた皆が一斉にピタッと動きを止めて私達を振り返った。



「おぅ···リクオ···神夜···」
「そろそろ出るか?」



淡島と土彦の言葉に私とリクオは目を合わせる。石の上に置いてある草履とブーツを履くと私とリクオは中庭に集まる面々を見回した。



「ああ···てめーら行くぞ!」



カッコよくそう言ったリクオと共に歩き出そうとしたその時、



「待ちな!!」
「『!?』」



バンッと後ろの襖が開いておじいちゃんが出て来た。思わず転けそうになった私とリクオは目を細めておじいちゃんを振り返る。



『···おじいちゃん?』
「なんだよ···出鼻くじくなって」
「お前らにいーもん見せてやる。呼んだらあっちゅー間に来やがったわい」



ニヤ···と微笑んでくいくいっと親指を上に向けるおじいちゃんに従って上を見上げた私達はゴゴゴと聞こえる音と共に現れた物体に声を上げた。



「『ん···んん〜〜〜!?』」



船のようなその物体を見上げた奴良組の面々が一斉にでかい声を上げた。



「「「「「な···何だぁあ〜〜〜!?」」」」」



幾つもの小舟と共に上空に現れた大船。



「奴良組名物戦略空中妖塞“空船”じゃ!!そして小判屋形船!!遠出の出入りにゃ〜必須よ···大昔っからよ!!」



宝船を背景に私達を見下ろすおじいちゃん。



「リクオ、神夜···上から見下ろすと気持ちいいぞ〜〜。京都ってのは!!」



ドンと得意げに笑いながら言い放ったおじいちゃんに思わず私達は顔を引き攣らせた。いやこれは···。



「わぉ···」
「さっすが奴良組···ど〜こが衰退してんだか」
「じじい···。知らんぞこんなの」
『でかすぎじゃね?これ···』



淡島、雨造、リクオ、私は顔を引き攣らせながらおじいちゃん自慢の宝船を見上げてそれぞれ呟いたのだった。



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