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神夜と別れたオレはその後、洗濯物を任されて一人で幾つもの洗濯物を川で洗っていた。


そういえば、この紐の先、よく見たら小さい鈴がついてるな。小さく腕を振ると、チリーンとほんとに些細な程の音が聞こえた。



(洗濯···か···めんどくせーのな。大変なんだな······。神夜···よく進んでやってくれるな···)



神夜の場合は姫なんだからやらなくてもいいという周囲の反対を押し切ってやってるけど。あれだな、家庭的なヤツ。



「······」



楽しそうに洗濯物を干す神夜の姿が頭に浮かんで、手を止めた。



(よし···)

「逃げよう」



やってられっか、こんなこと。誰も見てねーし神夜を迎えに行ってそのまま帰ろう。けどその前にどこを通っていくか確認だけするか。


その場から離れて歩みを進めると、少し先に橋があるのが見えた。



「橋だ!」



そこに向かって一歩を踏み出そうとした時、ゾワッとした物が足許から浮き上がった。



(しまった···幻!?)



踏み出した足を留めることはなく、そのまま体ごと谷底に落ちると思ったその時。



「バカだな───お前。お前じゃ···この里からは出られねぇってば」



後ろにある木の方から聞こえた声に振り返る。木の枝の上にいたのは頭にバンダナをつけた男で。



「見張りが付いててよかったな。この······“鎌鼬のイタク”がな!!」



そいつは、背中にあった鎌を二個取り出すと、周囲の木に向かってぶん投げた。それはそのまま周囲の木の枝を切り裂き、その木の皮は谷底に落ちようとしていたオレのクッションとなった。



「おめー···この遠野の里を本当に知らねえんだな。てっきり神夜が教えてるのかと思ったけどな」



こいつ、神夜のこと知ってるのか。それもそうか、神夜は一度ここに来たことがあるって言ってたしな。にしても軽々と神夜って言いやがって···。



「ここは“隠れ里”······言ってしまえば里全体が「妖怪」。畏れを断ち切る力がなけりゃ、死ぬまでここから出られねぇ!!」
「!」



畏れを······断ち切る!?


じじいがあの時、言ってたことか?



「······おい、鎌鼬のなんとか。今、何て言った······!?畏れを断ち切る力だと···?」
「そーだよ。なんだ?まだ逃げる気か!?バッカでねーか?今のお前じゃー無理だよ!神夜にも負けるかもな」



神夜もできるのか。



「“畏れを断ち切る力”···。じじい···そうかその為にオレはここにつっこまれたのか···!!」

(だーれが死ぬか)



やってやろーじゃねぇか!!



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