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どこからともなく祭り囃子がきこえてくる。どこへ行っても。


───そんな時期には浮かれた人間がわいてくる···。



「おいこらぁ。どこに目ェつけとんじゃ!?」
「いてて」
「ハセベさんの原宿で買ったいけてるシャツがベチャベチャじゃねーか!」
「アイスついちゃってるよ、アイスがよぉぉ〜〜〜」
「温泉たまごアイスついちゃったじゃねーかぁ!!」



洗えば済むことだろーが。


皆さん、突然柄が悪くてすいません。今、ガラの悪いお兄さんたちに絡まれているリクオ。どうやら私と氷麗が見ていない隙にお兄さんたちとぶつかってしまったらしい。


まあ、本人は呑気に「メガネ、メガネ」と地面に這いつくばって探しているけれど。あ、見つかったらしい。


メガネをかけ直したリクオはお兄さんのシャツに顔を寄せた。



「うああ、本当だね」
「···なめてんのかテメェ」



なんてまあ、呑気な。



『「······」』



その様子をまたか···と冷めた目で見つめる私と氷麗の視線の先には不良のお兄さんに肩をつかまれているリクオ。



「お前見ねー顔だなぁ!!オレたちのシマで何しとんじゃい!」
「妖怪を退治しに」



そんなリクオに「妖怪?」とピクリと眉を動かしたお兄さんは自分の頭を指差しながらギャハハハと笑い飛ばした。



「暑さで頭やられちまったんじゃねーか!」
「妖怪ってお前、大丈夫か!?ギャハハ!」



そんなお兄さんたちの様子に「いないの!?」と驚きの様子を浮かべるリクオ。



「妖怪なんざいるかボケェェ。この現在によぉーーーー!!」



凄まじい形相でそう言うお兄さんにリクオは顔を俯かせると前髪の下から鋭い眼を覗かせてお兄さんたちを見上げた。


ーー彼、奴良リクオは四分の一···妖怪の血を継いでいる。



「普通は見えないよね······」
「あ?」
「え」



ーーそれも“妖怪の総大将”“ぬらりひょん”の血を継いでいる少年だ!!


その瞬間、リクオの後ろからたくさんの小妖怪たちがゾゾゾゾと現れた。それに畏れたお兄さんたちは「うわっ···うわあああああああ!!」と悲鳴を上げて逃げて行った。「ん」と背後の小妖怪たちに気付いたリクオが首を忙しく回して小妖怪達を見回す。



「あれ···?ちょっ···ちょっとお前たち!?」



小妖怪がいることに気付いてなかったのね。



「リクオ君!!」



突然の声にドキィと心臓を跳ねあがらせるリクオ。


そんな彼に声をかけたのは私とリクオの幼なじみの家長カナだ。



「何してんの?みんな先に行ってるよ?」
「わわ!!ごめん今行く」



ひいいいい、と悲鳴を上げながら逃げていくお兄さんたちの前でリクオは必死に小妖怪たちをカナに見えないように隠していた。


カナが私に「神夜も行くよ」と声をかけて歩いていくのを見送って氷麗と共にリクオの元へと近寄る。



「ふーー。あぶね···カナちゃんに見られなかったかなぁ」
『大丈夫じゃない?ってか、リクオ何してるのよ』
「そうですよ。妖怪使っておどすなんてらしくない」



「バレますよ」そう言う氷麗にリクオは「違う違う!!こいつらが勝手に出てくるんだもの」と言って繁みに隠れていた小妖怪たちを指差した。



「何をおっしゃいますかリクオ様」
「あのような奴···ちょいとおどしてやりゃあいーんです」
「ワシら妖怪にケンカ売ろーってのが生意気でさー!!」



随分と元気な妖怪たちねぇ···。思わず感心しているとリクオが苦笑しながら妖怪たちを宥めた。


「だから···人間驚かしちゃダメだっていつも言ってるだろ!」そう言うリクオに妖怪たちは「こやつめは道中で奴良組若頭と姫と知ってついて来ましたです」「さすがリクオ様と神夜様です」と言うので、私とリクオは「『はいはいアリガト』」と生返事を返しておいた。



「まあ、いざとなったら私が全部凍らせればいいんですけど。家長含め」
『つらら···それは違うよ。それは違う』



隣で怖い事を言う氷麗に私は思わず冷や汗をかきながらツッコんだ。冷めた笑みを浮かべたその顔はまさに雪女だ。カナも含めるって···なにそれこわい。


リクオのおじいちゃんは妖怪任侠一家「奴良組」の総大将なのだ。だから···私とリクオのまわりには妖怪がたくさんいる···。



「やっぱりリクオ様と神夜様には護衛は必要です」



私を間に挟んで横三列に並んで歩いていると、鼻歌を歌いながら氷麗がそう溢した。(この前の戦いで自信つけちゃったなぁ)と私とリクオが苦笑しながら顔を見合わせると私達が合流するのを待っていた清継くんがいつものように大きな声を出した。



「奴良くん!!遅いぞ!!もう目的は目の前だというのに!!」
「ごめん、清継くん」



駆け足で駆け寄って謝るリクオに「ゆるさないけして!」を声を上げる清継くんをいっぺんシメようかと考えた私は決して悪くない。まあ、リクオに止められたけど。



「妖怪の出る武家屋敷はすぐそこだ!!」



清継くんが示す先。私たちのいる場所から見えるのは住宅街とその向こうにある海。巻は額に手を翳して「わぁ〜〜〜お!!」と声を上げ鳥居は「いいながめ」と笑顔を浮かべた。まあ、確かにいい眺めである。


私たち清十字怪奇探偵団は清継くんのサイト「妖怪脳」に来た、あるメールの送り主の元に向かっている。



「楽しみねぇ」
「楽しみ楽しみ」



巻と鳥居の目当ては多分、妖怪云々ではなく海だろうな。そう思いながら二人を眺めていると隣に来たカナが声をかけてきた。



「大丈夫かなぁ······ねぇ神夜」
『そうだねぇ······』



カナの言葉に返事をしながら思い出すのは数日前のこと。



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