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牛頭馬頭密偵隊 そのA



障子に寄りかかりながら祢々切丸を手入れしているリクオを見つめる。


この得物ドスは───総大将ぬらりひょんが昔使っていたもの。


銘は「祢々切丸」という。護身用にとリクオが譲り受けたものだ···。


刃こぼれを見ているリクオを見ていると、彼の横にある障子が開いてその隙間から小妖怪たちがこちらを覗き込んでいるのが見えた。あいつら何してんだ。



「リクオ様が···長ドスの刃こぼれのチェックをしてる···」
「まさか人間時の姿で」
「ここまで妖怪任侠の世界に足を入れるとは···若頭襲名がやる気を出させましたかな」



丸聞こえだっつーの。


はぁ···と溜息を吐くとリクオがそんな小妖怪たちに「あ!!こら、何見てんの!!」と声をかける。そして祢々切丸を置いて立ち上がると障子を開いて、覗き見ていた氷麗や小妖怪たちに指示を飛ばす。氷麗や青田坊に黒田坊まで何してんだあいつら。



「ちゃんと指示したとおりいつでも臨戦態勢だよ!!ホラ、青田坊も黒田坊もそっち!!」
「ハイ!」
「つららも!」
「ハ···ハイー」



蜘蛛の子を散らすようにそそくさと退散する皆に指示を出すリクオを後ろから見ていると松の木の所で牛鬼と木魚達磨が話しているのが見えて、そちらに足を向けた。そっと二人に気づかれないように二人の背後へと回る。



「私たちが望んでいた姿ですな···」
「うむ···あの時の言葉···本当に実践されていて嬉しい限り···」



あの時ってなんだ?


私と同じように頭に「?」を浮かべている木魚達磨に気づかず牛鬼は「多少作戦が荒いですが見守りましょう」と告げた。そんな二人の後ろに歩み寄り、クスッと笑みを溢すと二人はハッと私を振り返る。



「姫様···」
「神夜様」
『総大将がいない中、よくやってるんじゃない···?』



ワイワイと騒いでいるリクオに視線を向けるとそれにつられて木魚達磨と牛鬼の視線も彼に向いた。


ザワ···と目の前で揺れる枝垂桜を見つめるリクオ。そこは牛頭丸と馬頭丸がいつもいた場所だ。そして、旧鼠の時、人間のリクオと妖怪のリクオが入れ替わった場所と、鴉天狗から聞いた。


───まだ、皆を仕切るには初心者のリクオ。そんな彼に立ちはだかるのは四国妖怪。



『さて、どうなることやら···』



私の元にヒラリと舞い落ちてきた桜を掌の上に乗せて、ふうっと息を吹きかけるとそれは高く舞い上がる。舞い上がった桜を一瞥して今だ騒いでいるリクオ達を横目に私は自室へと足を向けた。



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