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妖怪・犬神 そのD



突然の私達の登場にザワつく生徒達。



(どうして···若!?姫!?)

(そのお姿)

(まだ···昼間にもかかわらず···!?)



するとハッとした氷麗はバルコニーを振り返った。全てのカーテンは閉められ、その空間は真っ暗。───闇なのだ。



「なんだーあいつは···」
「突然出てきたぞ!?」
「ん?」



すると生徒達の目の前から煙がモア〜〜と出てきた。それに驚いた皆は「うおっ!?」「スモークゥう!?」「え···えーー!?」と驚いて身を引く。じっと見つめてくる視線を感じてその方向を横目で見るとカナがジッと私を見ていた。見間違いでなければその頬は赤く染まっている。



「ガオーー妖怪だー!!この学校は···オレが支配するぞーー!!」



その声に視線を向けると島くんが何かの着ぐるみを来て両手を上げながら声を張り上げていた。その後ろで私とリクオと対峙していた犬神がオオオオと吠える。島くんから視線を外して目の前の犬神を見た。



「ナンダ···誰ダオマエら···」
『学校でこんな姿になるつもりはなかったんだけど···』



溜息を吐いてそう肩を竦めると隣のリクオがフッと笑みを浮かべた。



「とっとと舞台から下りてもらうぜ。オレ達もオマエも···ここには似つかわしくねぇ役者だ」



ザッと前に進み出たリクオを見て私も進もうと一歩足を出すとリクオが片手を上げて来るなと無言で示したのでそれにより私は思わず足を止めた。


土煙が舞う中、犬神がリクオに向かって体を動かすと彼は祢々切丸を回すように犬神を斬り捨てる。犬神がリクオに鋭い爪を伸ばすと彼は軽く地面に足をつけてまた飛び上がりその爪に祢々切丸を突き立ててブシュゥゥッと犬神の鼻先まで斬り上げた。


飛び上がったリクオと犬神の視線が絡み合うとそのまま犬神の鼻の上に着地する。そしてトンッと飛び上がろうとするが一瞬、リクオの足が滑った。軽く体勢を崩したリクオの目の前に犬神の尻尾が迫る。



「チッ」
『危ないッ!』



私が声を張り上げると同時にリクオに犬神の尻尾が当たり、ズガァァアァとリクオは私の側へと弾き飛ばされた。



「!!?」
「若···っ!」



首無たちの声を聞きながら私の後ろに飛ばされたリクオを振り返ると、ボタボタッと地面に血が垂れる音が聞こえてそれに目を張ると彼の頭から血が流れているのが見えた。その姿に私達は目を見開く。


あの尻尾の一撃であんな威力あるの!?



『若ッ!!』



さすがに皆の前でリクオの名前を呼ぶことは出来ないからね。


リクオの側へと駆け寄ってその顔に滴る血を着物の袖で拭ってやる。


この際、着物が汚れるのは気にしない。



「かぐや姫」
『いいから黙ってなさい』



咎めるような彼の言葉を無視して拭う。そして着物の袖を彼の顔から離すとリクオは私に小さくお礼を言いゆらりとその場で立ち上がって、



「やるじゃあねぇか」



鋭く犬神を睨みつけた。


その睨みに犬神の体がゾッククウウゥッと震えあがる。



ーーナンダ、コイツ···。



犬神が視る先、不敵に笑うリクオと着物の袖で口許を隠す私の後ろにはたくさんの小妖怪の姿。



「う···ぅ···うおぉおおおお」



犬神は声を上げて手を振り上げる···が、その瞬間、パッとスクリーンが光り清継くんの姿が映しだされた。



〈出たな!!妖怪!!〉
「!?」



突然の出来事に私達は思わず目を見開く。



「清継だ!!」
〈学校で暴れおって〉
「映像が復活した!?」
〈そこのふとどきな大妖怪!!このボク···清継ふんする『陰陽の美剣士』が来たからには···〉
「え?変装?」
〈悪事はもう許さんぞーー!!〉
「じゃあ···これって全部演出ぅ!?」
「なんだよビビった〜」



丁度いい、この状況を利用させてもらおうか。


私は犬神の後ろにいる氷麗と首無と目を合わせる。



〈見てろ!!今、封印してやる。ボクのフルCG超必殺退魔術···よみおくりスノーダスト退MAXーーくらえーー!!〉



その言葉と共に清継くんが剣を振ると同時に犬神の体がピキピキッと凍り始め、体に糸が巻き付く。私は完全に犬神の体が凍り付いたのを見て左手を仰向けに前に出すと、現れた桜の花びらにフゥ···と息を吹きかけた。舞い上がった桜は幾つもの花びらに分かれると半分は犬神の体に張り付き、



『桜吹雪』



私のその言葉と共に体育館中に桜が舞い散る。


これで少しは劇らしくなるだろう。



『今よリクオ。犬神の動きは止めたわ』



私のその言葉に犬神が動こうと体を動かすが張り付いた桜と絡みついた糸、そして氷で身動きが取れず、「ぐ···ぐぉ···」と声を上げるだけ。



「うわ···桜だ!?」
「なんで?」
「きれー」



皆が困惑の声を上げる中、リクオは私にフッと微笑みかけて飛び上がると犬神の前で祢々切丸を構えた。



「神夜···この桜、ちょっとやりすぎだぜ」
「リク、オオオオォオ」



犬神が声を張り上げると同時にリクオは私達の技で身動きが取れない犬神を真正面から斬り捨てた。



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