×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

妖怪・犬神 そのC



現れた首無の姿に犬神は狼狽えながら声を上げた。



「なっお前···リクオじゃねぇのか!?」



その瞬間、私とリクオは顔を見合わせると「『首無!!』」と声を上げて祢々切丸と夜桜を片手に柵の上に足をかけてダンッとステージに向かって飛んだ。


リクオと首無の姿を見た犬神は狼狽えたように目を泳がせた。「え?リクオ様?あれ?あっちが首無!?」と驚く氷麗の声が微かに聴こえて私は内心ニヤリと微笑んだ。


リクオが作戦を話し、皆が配置に着こうとした時リクオは首無に引き留められたのだ。



"わかりました若。でもその作戦では不十分です。私に考えがあります!"
"考え?"
"どうせならもう一段、余裕を持って挑みましょう"



((首無···まんまとハマッたぞ/わよ))



そう、事前にリクオと首無は入れ替わっていたのだ。しかも完璧に入れ替われたのはこの私のおかげ。私の力「桜」で体育館中に幻惑を撒き散らかしたのだ。うん、便利だね!この力!


自画自賛している私はリクオと首無にこの作戦を告げられた時すっごい面白いと思いましたよ。ええ?なにか?面白いと思いましたけど?だって想像してみてよ。あの首無がリクオの真似をするんだよ?想像するだけで笑えるよね!!まあ、まんまとその思考がリクオにバレてめっちゃニコニコした顔で「神夜?」と名前を呼ばれましたけど。なんか···付き合いだしてからリクオって黒くなったよね。ニコニコ顔が本当に怖い。


まあ、それを知らされていなかった皆は困惑してるだろうな〜。特に氷麗とか!目をぐるぐる回してそう···とか考えていると犬神が「うおお」と声を上げながらリクオに近づこうとしてきたが、



「ムダだよ。ボクの糸は···逃げれば逃げる程からみつく」



首無の糸が締め付けてその場から動けなかった。



「毛倡妓の···一度好きになったら離れない性格と絡新婦の束縛グセがあわさった糸だからね···」



ニコッと笑みを浮かべて犬神を絡めている糸を引っ張る首無。すると暫く黙り込んでいた犬神の体がゴゴゴゴゴと音を立てながら変化していく。それを見た私とリクオは急いでその場から飛び退き首無は突然の犬神の様子に「なんだ···?」と糸を掴みながら言葉を溢した。


だんだんと犬神の体が巨大化していくとついには天井に届くほどの大きさとなった。それを見た生徒たちが困惑の声を上げると同時に青田坊の叫びが聞こえた。


なに···なんなのこの妖気。ありえない···。


体が大きくなった犬神が手を振り上げると其れは天井に当たり瓦礫が皆の頭上に落ちていく。「痛っ」「ええーー」と叫ぶ皆を尻目に犬神を呆然と見ているとステージに黒田坊たちが集まって来る。微かに「神夜···?」と心配そうに私の名前を呼ぶカナの声が聞こえた気がした。



「首無···こいつは一体何だ!?」
「わ···わかりません、こんなの···」
『どんどんデカくなってくわよ···!』



リクオ、首無、私の言葉。体が大きくなった犬神はそのままステージにその大きな手をつけると、私達の横にあった犬神の頭部を掴んだ。驚きに目を見開く私達を気にすることなくその手は頭部を掴んで本体へと頭を戻す······姿に私は思わず目を見開いた。うそぉ···。


え···頭ってそう簡単に戻るもんなの?妖怪だから···?妖怪だからそうなの!?そうなの!?


顔を引き攣らせる私の前で犬神の目から蒸気が漏れだし、ブモモモモモモと息を吐きながら私達を睨みつけた。



『首が戻った···』
「なんなんだ···こいつ···」



ステージの上に上ってきた犬神はドシンッと大きな音を立て、ブアアアアアアアとその口を大きく開かせながら私とリクオの所へと向かってきた。って···こっち来たああ!!



「まずい···リクオ様と神夜様を狙ってる。今······お二人は人の姿···こんな巨体にやられたら···」



高く手を振り上げた犬神。リクオが私を庇うように抱きしめると同時に首無たちが私達の前に出て犬神の攻撃を受けた。毛倡妓たちの体が吹っ飛びドゴオォォと壁にぶち当たる。軽々と吹っ飛んだ首無たちに目を見開いていると私とリクオの目の前に犬神の手が迫り、そのままその手はリクオの顔を掴んだかと思うとドグォァァァァァと舞台袖へと叩きつけた。

勿論、リクオに抱きしめられている私の体もリクオと一緒に叩きつけられ体中に痛みが走る。犬神がメキャメキャメキャと音を立てながら手に力を込めるとそれを見ていた首無たちが「リ·········リクオ様あああああ!」「神夜様あああああ!」と叫んだ。


だが犬神がその場から手を退かすとその手から血があふれ出た。首無たちがそれに驚く中、妖怪の姿に変化した私とリクオは瓦礫をじゃり···と踏みながら祢々切丸と夜桜を片手に舞台袖から出る。それぞれの刀から血が滴り落ちる中、



「陽はとざされた───この闇は幕引きの合図だ」



ニヤリと微笑んだリクオの隣で私は腰に左手を当て金色の髪を靡かせながらフッと口許を緩めた。



backprevnext