五
暗い闇に浮かぶのは百鬼夜行。
その先頭に立つのは、漆黒の着物に青い羽織を引っかけたリクオ。私は今、そんなリクオの斜め後ろにいる。
今回の騒動の一部始終を、氷麗から聴取中。
まあ、簡単に言うと、リクオの帰りが遅いと鴉天狗が迎えに行っている最中本家の妖怪たちはリクオが乗ってるはずのバスがトンネル内で事故に遭ったのだと知る。慌てふためいているとリクオをお持ち帰りしてきた鴉天狗が帰ってきた。
妖怪達から事故のことを知ったリクオは
人間を助けに行くと言い出した。だが、そこで木魚達磨と口論に。そして、妖怪たちが乱闘騒ぎを起こす直前、リクオは制止の声と共に妖怪の姿へ。
ざっと言うとこういうことらしい。
なるほど、私が寝るに寝付けなかったのはそういう理由か。
でもそのバスの中には私の友達も乗っている。
家長カナ。
リクオを通して知り合ったのが始まり。まあそこから仲良くなり今では大切な存在だ。しかもだいぶカナにもなつかれてしまったし。
リクオの意見には賛成だ。私も半妖なだけに人間たちを危険に晒すのは納得いかない。しかもそれが私の知り合いだとなると尚更だ。
「神夜」
氷麗の隣でボォ···としていると、こちらに目を向けず前を見たままのリクオに呼びかけられる。
『ん?』
「オレの傍から離れんなよ」
そう言うとぐいっと私の手を引っ張った。自然にリクオの隣に並ぶ形になる私。その行動に少しあたふたしているとリクオに腰を引き寄せられた。
『うおっ!』
「色気のねえ声だな···」
そんなこと言われても。
少し飽きれた様に目を細めるリクオを横目で睨む。急に引っ張ったのはそっちなのになんでそんなこと言われなくてはいけないのだ。理不尽だ理不尽。
軽く溜息をつくと、リクオが腰に回す腕に力を込めた。チラリと横目で同じ背の彼を見る。
「お前の隣はここだろ」
その一言にぶわっと顔が熱くなる。
私、今顔真っ赤だ。
赤い顔で固まる私に後ろから視線を感じて、チラリと振り返ると期待と羨望の眼差しで私たちを見守る妖怪達。その視線の中に生暖かいものを感じる。
赤い顔のままその視線から逃れるように顔を逸らすとリクオの腕を引き剥がそうと引っ張ってみるが腕の力が強くなったので、思わずため息をついた。
『もう好きにして···』
リクオは嬉しそうにニヤリと笑った。
でも私も内心嬉しかったりする。
初陣で隣に立つのは私。それはずっと貴方の隣を望んでいた私にはとても光栄なことだ。