告白
月を見上げてる時は特に泣きそうに顔を歪めて悲しそうな顔をする。
ずっと疑問に思っていたこと。何回もお前に問いかけようと思ったが声をかけるとお前はすぐに笑顔を作ってその顔を覆い隠してしまう。
「なあ、神夜。あんたは何をおそれてるんだ?何がそんなに悲しいんだい?」
小さい頃からオレは神夜のことを見てきた。なのにお前は、オレがどれだけお前を見ていてもすぐに視線を逸らして気づかないフリをする。まるで自分の心から逃げているかのように。
『悲しくなんかないわ。なんでそんな風に思うの?』
無理矢理張り付けたような笑顔を浮かべてオレを見るお前の目は悲し気に揺れていた。そんな目を向けられるたびオレは毎度遠慮して何も聞かないように、何も知らないようにふるまってきた。
けど神夜はオレの見えないところでケガは負うわで、正直言っていつも気が気じゃなかった。何も心配させまいとするその笑顔も、なんでもないように振る舞うその身体も、悲し気に揺れるその瞳も。
全て、お前の───。
『早く帰ろ、リクオ。遅くなっちゃうよ』
眠そうに欠伸をした神夜はオレにニコリと微笑みかけると足を進める。
だけどオレは···。
ーパシッ
横を通り過ぎようとした神夜の手を掴んで引き留めた。そんなオレを神夜は少し眉を顰めて振り返る。
『あのさ···さっきからどうしたのよ。いつもはそんなこと聞かないじゃない』
何も聞くなという風な神夜の言葉にオレは眉を顰めた。
いつもここで知らないフリをしてたオレはもう終わりだ。オレの見えないところで泣かれるのも、怪我をするのも、悲しそうにするのも、もう嫌だ。
何がお前を悲しませてるのかはわからねぇ。だけど、オレはもう我慢する気はねェ。
「───好きだ」
ザアアァァと冷たい風が吹き抜けた。
目の前には驚いたように目を見開く神夜の姿。その瞳は悲痛と驚愕で揺れていた。
「あんたが何を思ってるのかはわからねえ。人の心の中なんてそう簡単に分かるもんじゃねぇしな。───だけどオレは小さい頃から神夜だけを見てきた」
ずっと恋い焦がれていたんだ。かぐや姫としての神夜を。人間としての神夜を。その笑顔を。何もかもずっと欲しかった。
『リクオ······』
「なあ、神夜が何を抱え込んでるのかはわからねェけど───お前の気持ちはどうなんだ?」
思いも悲しみも、全部を取り払った神夜の心は───