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妖怪・雲外鏡。通称───紫の鏡。“魔を照らす鏡”


この鏡を見ると···13歳の誕生日に殺される。古代、13という数字は十三の発音が實生(実る)に近いため妖怪の世界では昔から成人の歳と言われている。


その吉日である日にー実った子供を狩る妖怪。



「誰も······来れないよ。妖怪じゃないと···入れないから···」
「いやぁぁぁあああああ」



「都市伝説・紫の鏡」にあるー20歳にて殺されるという説は今の成人にあわせた変化と思われる。


っと説明してる場合じゃない!


私がカナをぎゅっと抱きしめていると雲外鏡はそのまま迫って来た。悲鳴を上げながら私に抱き着くカナを強く抱きしめる。


やばい、このままだと本格的にやばいよ。



「神夜!?カナちゃん!?」



声が聞こえた方を向くと、鏡の向こうに私達を見て驚いているリクオがいた。カナが嬉しそうにリクオの名前を呼ぶ。私も小さく『遅い···』と呟いた。



「! まさか···妖怪···!?」



そんなリクオの問いに答えようと口を開くと同時に雲外鏡が鏡をガシャアアアンと割った。パラパラと鏡の破片が床に落ちるのを見て、私はカナを抱きしめながら目を見開く。


あいつ···鏡を割りやがった!何してくれてんのーー!?



「リクオくん···っ」
「なんで···鏡面世界こっちが見える······ここは···オデとカナちゃん···だけ······」



こいつさっきからカナちゃんって言ってるけど、私もいるんだけど。ねえ、そんなに私存在ない?ちょっと泣いていい?さすがにカナの名前ばかり連呼されると素でへこむ。


いや「かぐや姫」とか「姫」とか言われるのも嫌なんだけどさ。


そんな風に考えていると「ねぅえええカナちゃんんんん」と雲外鏡が迫ってきた。私は寸前で抱きしめていたカナを突き飛ばし、体がダアンっと壁に叩きつけられると雲外鏡が目の前に。



「いや···神夜っ!!」
『に、げて······───カナ、逃げろ!』



壁に押しつぶされながらカナに声を上げると彼女はいやいやと首を横に振るだけ。その間にも私の体は雲外鏡の鏡へと吸い込まれていく。



『やっば···』



金狐の姿だったらこいつ、狐火で燃やしたのに···!


カナがいる手前下手なことはできない。鏡の中へと吸い込まれだんだんと遠のいていく意識の中、カナが私の名前を叫んでいる声が聞こえる。


ーーカナだけでも安全な所へって···。カナの手を離さないって決めたのに···!


すると雲外鏡の後ろから伸びてきた手が鏡をつかみ、メキメキとなる音と共に鏡にだんだんとひびが入っていく。その隙に私は足で雲外鏡を蹴りつけると、鏡から押し出された。その瞬間に見えたのは鋭く光る紅の瞳に純白の髪。祢々切丸を片手にリクオが雲外鏡を睨みつけた。



「てめーオレのシマで、オレの女に···手ェ出してんじゃねぇぞ」



ーピキピキピキィ



雲外鏡の鏡にひびが入ると同時に私はリクオに横抱きに抱えられた。そしてガシャアアンと割れる。

スタッとリクオが着地するとカナの横に降ろされた。



『······あ、ありがとう···』
「気をつけな」



パチンと祢々切丸を納刀しながら振り向きざまにそう言った。だが、私はさっきのリクオの言葉に小さく眉を寄せた。


ってかリクオくん。君、今さっき「オレの女」とか言わなかった?


ねえ、近くにカナちゃんいたよ?ねえリクオくん。なんでそんなこと言うのかな?


旧鼠の時から何処か変だよ、君。なんで奥底に眠った私の想いを膨らませようとしてるの?昔の時のように私は無邪気に君に「好き」なんか言えないよ。


昔母が少しだけ口に出した事があった。



"あのね、神夜。あなたは愛した人を逃しちゃダメよ。好きになったらその人だけを一途に愛しなさい"



小さい頃の私は何もわからず母に『なんで?』と返したが母は悲しそうに笑うだけだった。いつも私はその笑みを父と一緒にいて幸せじゃないのかと思っていたが違った。


母が本当に愛していたのはぬらりひょん。リクオのおじいちゃんだ。


前、おじいちゃんの部屋にいった時リクオの祖母“珱姫”の仏壇の横に母の写真があった。楽しそうに、そして愛らしく笑っている母の姿。あの笑みは父の前では、ましてや私の前でもしたことがない。


おじいちゃんはいつも母の話をしてくれるとき、ときどき寂しそうに笑う。何でそんな顔をするのかと思ったが理由を考えれば納得がいく。おじいちゃんも母も本当は二人ともお互いを愛していたのだ。けど、何かの出来事があり二人は別れてしまった。


愛している人と別れるのは辛いことだ。だから母はそんな想いをしてほしくなくて私にあの言葉を言ったのだ。


その事実を知った時私はリクオへの気持ちを心の奥底に封じ込めた。母と同じ想いはしたくない。なら、この気持ちを封じ込めればいい。誰も愛さないよう。私だけの最大の秘密。


そうやって自分に言い聞かせて今まで生きてきた。なのに、リクオこいつは···!



「神夜!大丈夫!?」
『あ、うん···』
「よかった···」



ホゥ···と安堵の息を吐いたカナは私に寄りかかって来た。小さく震えているその体を軽くギュッと抱きしめる。


心配かけたなぁ···。


カナが安心して目を瞑っているのを横目で確認してリクオに目配せをする。


私も後で金狐の姿になろうかな。



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