四
それから何回も先生からの注意を受けて私はやっと自分の教室に着いた。
私、先生と遭遇する確率高いな。
荒い息を整えて、一つ息を吐くとガラッと教室のドアを開ける。ビクリと驚きで肩が跳ね上がったカナが振り返った。
よかった、まだいた。
「神夜!?なんでここに」
『忘れ物。カナ、今日言ってたことやっとわかったから今からでも何か埋め合わせさせて』
「言ってたことって···」
"ねぇ、神夜。今日は何の日でしょうか!"「あ···」
思い出したカナに微笑んで彼女の鞄を持ちあげると自分の鞄も持つ。そしてドアの所まで歩いて鞄二つを片手に私は何処か顔色が悪いカナを振り返った。
『今日はとことん付き合ってあげるよ』
「······ありがとう」
少し青白い顔でカナが微笑んだ。
「ねえ、神夜」
『ん?』
カナと二人、並んで少し駆け足で歩いているとカナが口を開いた。
「駅って···こんな遠かったっけ」
何回も同じ場所を通っている私達。カナの言葉に『いや···』と答えると前から自転車をこぐ音が聞こえて私達は「『!』」と目を見開いた。
自転車に乗っているのは人ならざる者。
そいつはだんだんと自転車をこぎながらこちらに向かってくる。そのシルエットは常に私とリクオが見慣れているものだ。
あいつは···妖怪か!
───紫の鏡の妖怪······雲外鏡。
「みぃつけた」
私たちに近づいてきた雲外鏡は私の背中にしがみついているカナを見つけてニヤリと微笑んだ。そして私に視線を向けるとその口がまたニヤリと笑みを作る。
こいつ、私の存在を知ってるのか···。
『ちっ···』
「ひ···あ···う···」
小さく舌打ちをするとカナが悲鳴を上げながら私の制服をぎゅっと握りしめた。私はそんな彼女を庇うように片手を広げて目の前にいる雲外鏡を睨みつける。
雲外鏡の鏡には怯えながら私にしがみつくカナとそんなカナを庇いながら雲外鏡を睨みつける私の姿が映されていた。
「13歳のお誕生日···おめでとう···カナちゃん」
こいつ、もしかして小さい頃のカナに会ってるのか。
7年前、「13歳の誕生日」に死んでしまった子が何人もいるというニュースが流れたのを思い出した。私はその時まだ6歳だったから何かの偶然だろうとも思っていたが今、目の前の状況を見て分かった。7年前の事件、あれは全て
雲外鏡の仕業だったのだ。