図書室からの帰り、ハリーたちが先に談話室に戻っていると言っていたのでわたしも急いで寮までの道を歩いていた。
そんな時に後ろから聞こえた声とバタバタッと走りよってくる足音。
「セイラ!!!」
振り返れば赤毛の双子のひとり───ジョージかフレッドかわからないけれど───が走りよってきた。
そしてニコニコッとわたしの前に出て、進路を妨害する。
巻き込まれるのが嫌で避けて通ろうとしたら、またもや妨害。それの繰り返し。
わたしはそれにイライラしながら顔を上げて睨み付けた。
『フレッド?ジョージ?どっち?』
「ジョージ!!」
『フレッドね。何か用?』
間髪入れずそう言えばフレッドは不機嫌そうに眉を寄せた。
「ジョージだって言ったろ?」
『······何かご用ですか?フ・レ・ッド?』
再度さっきより強く問いかければつまらなさそうにチェッと口を尖らせる。
「あいかわらず俺らを見分けるのがうまいな」
『何年もあなたたちの幼なじみやってるのよ?間違えるわけないわ』
「ママはよく間違えるぜ?」
『あんたたちがお互いの真似するからでしょ』
おばさんも大変だ。
そして三回目の何か用?と言えばフレッドはそうだ!と思い出したようにニヤリと笑った。
「これからフィルチに悪戯しに行くんだけど、セイラも行くだろ?」
『いかないよ』
「なんでだよ!」
つめ寄って叫ぶフレッドの大きい体を押しどけて歩き出す。フレッドも文句言いながらついてきた。
『談話室でハリーたち待たせてるの。それにフィルチに怒られるなんて絶対嫌よ』
「見つからなければ平気」
『あんたたちはね』
わたしはそんなことできない。そこであれ···と思っていまだにブツブツと文句を言うフレッドを見上げた。
『ジョージはどうしたの?』
「リーとどっか行った」
『······それで相手がいないからわたしに?』
「彼女に会いたいって思うのは普通だろ?」
ニヤリッと笑うフレッドに思わずわたしは視線をそらした。
恥ずかしい···と持っていた本で顔を隠せば、無言のフレッドに手を引っ張られた。そのまま近くの空き教室へと入る。
『···フレッド?』
「最近セイラってばロニー坊やたちといすぎ。俺のこと全然構ってくれないじゃないか」
『そっ···んなつもりはないけど······』
「嘘」
グイッと距離が近くなる。そのまま腕が伸びてきて、わたしの横にあった壁に手をつく。目の前にあるフレッドの顔に恥ずかしくて視線をそらせば、顎を掴まれて無理矢理視線を合わされた。
「セイラの彼氏は?」
『······フレッド···』
小さく呟けば目の前の彼氏はコツンと額を合わせて、「だよな」と軽く唇を合わせてくる。
何度も軽いキスを交わして、不意に口を開ければスルリと舌が入ってきた。
「ん···セイラ···っ」
『ふっ···んん···』
二人の荒い息遣いが部屋へと響き渡る。いつの間にか手に持っていたはずの本は近くのテーブルへと置かれていて、あぁフレッドが魔法でどかしたんだ···とボーッとする頭で考えてからわたしはきゅっと彼のローブを握りしめた。
それと同時に頭の後ろにまわされた手がくしゃりと髪を撫でる。
「ふっ···」
『んんっ···ぷはっ······』
深いキスを終えて、荒い息を吐きながら背の高い彼を見上げれば熱をおびた瞳がこちらを見下ろしていた。抗うことなくわたしから彼の唇へと自身の唇をよせる。
重なる瞬間、呟いた。
『大好きよ、フレッド』
「僕も愛してる」
カチャリッとドアの鍵が閉まった音がした。
見分け
なんでどっちがどっちかわかるかって?
そんなの好きな人なら一発でわかるわ
幼なじみだからっていうのただの建前
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