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「「姫ーー!!」」
『いだっ!』


いつものようにハリーたちと廊下を歩いていれば後ろから聞こえてきた声。その声が聞こえた瞬間、わたしから離れるハリーたちにわたしも急いで離れようとするがそれより先に二人分の体重がわたしへとのしかかった。
ぎゅっと両脇から抱き締められて苦しい。


「あぁ!やっと会えた!」
「今日は一回も会えなかったから寂しかったんだぜ!」
「やっぱり、いつでも姫の傍にいるのが騎士の役目だもんな」
「そうそう!だから姫、俺たちから離れちゃダメだ」


くるくると代わる代わる言葉を言う双子。
ハリーやハーマイオニーはいつものことだ···とあきれた表情だが、この双子の弟のロンだけは微妙な顔で二人を見ていた。

言いたいことはわかる。わかるけど言ったって無駄なのだ、この二人には。


「ねえ、なんでフレッドもジョージもセイラのこと「姫」って言うんだ?」


聞くんだ。

ロンの質問に二人は顔を見合わせた。わたしは二人の間で助けを求めるようにハリーとハーマイオニーに視線を向けるが二人はただサッと視線をそらすだけだった。
どうやら面倒事になるのは嫌らしく、親友のわたしを見捨てるらしい。ひどい!

ロンの質問に答えたのはジョージだった。フレッドと顔を見合わせてニヤリと笑うと、わたしの髪を触る。
フレッドは同時にわたしの頬へと触れた。


「そんなこと決まってるだろ、ロニー坊や」
「セイラのこの白い肌に、優しく細められるブラウンの瞳」
「そして僕たちの名前を呼ぶ声」
「すべてが俺たちを魅了してやまない!」
「「だからセイラは俺たちのお姫様なんだ!!」」


恥ずかしい···っ!!

くどくどとわけのわからないことを並べた二人はわたしの前で膝をつくと、わたしの手をとって一人ずつ手の甲にキスを落とした。

二回目だが、恥ずかしいっ···!しかもここは廊下だ。そう!たくさんの生徒が行き交う!!

この光景を見慣れているグリフィンドールの生徒たちはヒュー!と囃し立てるが、他の寮の生徒たちはざわざわとわたしたちを見ていた。


「あぁ···!俺たちの姫は今日も可愛いな!な、相棒」
「その瞳に映るもの全てに僕たちは嫉妬してしまいそうだ!」
『············で、用件は?』
「「ホグズミードに一緒に行こう!!」」
『嫌よ』
「「なんで!!?」」


ごたごたと御託を並べる双子にいい加減うざくなって用件を促せば、ホグズミードに一緒に行こうですって?

この二人とホグズミードに行った日にはずっとゾンコの店にいることになる。
せっかくの週末のおでかけをゾンコの店で終わるなんて絶対に嫌だ。

ぎゃあぎゃあ!と耳元で騒ぐ双子に耳を押さえていれば、いつの間にかハリーたちの姿がいなくなっていた。
逃げたな···!!


「ひどいぞ、セイラ。僕たちとどこでも一緒にいるって言ったのに···っ」
「僕たちのことは遊びだったんだな···っ」
『ねえ、やめてくれない?その誤解を招く言い方』


シクシクと嘘の泣き真似をする二人を白けた目で見上げる。
このまま相手をしていてもめんどくさいのでさっさと歩き始めると、二人もその長い足でついてきた。
いまだに一緒に行こう!とうるさい。───が、双子の声をかき消すほどの怒声が廊下に響いた。


「フレッド・ウィーズリー!ジョージ・ウィーズリー!!!」


この声はフィルチの声だ。
また何か悪戯をしたのか···と彼らを見上げれば、ジョージがわたしの持っていた教科書などを取り上げ、フレッドがわたしを抱き上げた。


『きゃあ!?』
「しっかり掴まってろよ、姫!」
「行こう、相棒!」


言うが早いか、二人はすぐさまフィルチの怒鳴り声から逃げるように走り出した。
わたしは後ろから聞こえるフィルチの声に、ケラケラと笑うフレッドとジョージの声を聞きながら、ふっと笑みを浮かべた。


「姫、全力で逃げるからな!」
「しっかり掴まってろよ!」
『···うん!』


二人の楽しそうな声につられて、わたしも楽しげに笑うと、落ちないようにフレッドの首に手を回した。




双子のお姫様



「あなたのお兄さんたちって本当にセイラのことが好きなのね、ロン?」
「あの二人···家に帰ってもセイラの話ばかりするんだ」
「まあ、二人がセイラに構いたくなる気持ちもわからなくはないけどね」
「そうね」









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