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「あ···」
『あ···』


待ち合わせの下駄箱に少し遅れていけば紙袋を持った空がいた。
それと似たような紙袋が私の手にもある。
お互い無言で見つめあって、同時に紙袋を相手に見えるように持ち上げた。


『私は太一に』
「私はヤマトによ」


ははっと空の言葉に笑い声をあげて下駄箱から靴を取り出した。
空と片方ずつ交換している上履きを下駄箱へとしまって、空と一緒に歩き出す。


『ごめん、もっと早く行けると思ったら太一にこれ渡してって頼まれて遅れた』
「私も星空を待ってる間に渡されたわ」
『本人に直接渡してほしーよね』
「ほんとよ」


わざわざ彼女に渡すとか悪意しか感じられない。
いや、本人にそんなつもりがあるのかは知らないけれど······彼女に渡さなくてもよくない?
確かに太一もヤマトも学校ではモテる。だから差し入れなどを渡して少しでも仲良くなりたい···とかそうゆう魂胆なんだろうけれども············。


『で、ヤマトは?』
「さあ?置いてきちゃった。星空こそ、太一はどうしたのよ」
『置いてきた』


顔を見合せて、ぷっとお互いに吹き出す。

これだけ堂々とケンカ売られたのだ。
少しくらい彼氏を困らせてもいいだろう。


『あ〜あ、せっかく4人で遊びに行ける日なのになあ!なんかテンションだだ下がり』
「全部活がないし、それにヤマトのバンドもない日なのにね」


そう、今日は先生の職員会議で部活がなく、そして偶々ヤマトのバンドもない。
というわけで四人で遊びに行こうと計画をしていたのだが、今回のこの紙袋のおかげですっかり機嫌を損ねた私たちはまだ待ち合わせの下駄箱に来ていなかった彼氏たちを置いて先に出てきたのだ。


「あら、来たわよ」
『ん?』


空の言葉に振り返ってみれば、少し怒った様子の太一とヤマトが走ってきた。
そして私と空の隣へと並ぶ。


「なんで俺たちのこと置いてったんだよ」
『別に〜?』
「置いてったわけじゃないわよ?」
「『ねー?』」
「嘘つけ···」


ぷいっと顔を反らして歩き出す。
必然的に私と太一が前を歩いて、ヤマトと空が後ろを歩く。
その間も早歩きに歩いて、私は太一の顔を見ることなく先へ先へと進む。


「な、なあ···星空···」
『なによ』
「手に持ってるものなに?」


太一の質問にヤマトも空へとその視線を向けたのが横目で見えた。
私はムスッと顔をしかめながら太一へと先ほど受け取った紙袋を押し付ける。


『はい、どーぞ!八神太一くんへの差し入れです!』
「はい、これ。ヤマトへの差し入れよ」
「『女の子からの』」


そう言えばようやく私たちが不機嫌な理由がわかったのか、太一とヤマトは気まずそうに私たちからそれを受け取った。
受け取ったのを確認して足早に空と一緒に歩き出す。


「お、おい星空!待てって!」
「おい、空!」


呼び止めるふたりの声を無視して、近場にあったファーストフード店へと入る。


『空、どーする?』
「あ、私注文してくるから、星空座ってていいわよ。いつものでしょ?」
『ありがとー』
「空、待てよ!」


鞄を置いて財布だけを持って行く空のあとを、ヤマトは慌てて追いかけていった。
テーブルに頬杖をついて携帯を触る私の隣に太一が座る。


「なんか言われた?」
『なにも?······ただ彼女に渡さなくてもよくない?って思っただけ』
「あー······ごめん」
『············』


なんで太一が謝るかなぁ。
そんな素直に謝られたら、何も言えないじゃん。
怒ってたことなんて吹っ飛んでしまう。

私ははぁ···とわざとらしくため息を吐いて、携帯を制服のポケットへとしまった。
そして太一の肩へと寄りかかる。


『私の方こそ、ごめんね。置いてったりして』
「いいって。俺だって星空宛への受け取ったら同じようなことするだろうし」
『ずっと不機嫌だったもんね』


うっと言葉につまる太一に私はクスクスと笑った。
私の部活への差し入れを男の子から太一が受け取った時があったが、あの時の太一は私が彼の家に泊まると言うまで離してもらえなかったし、ずっと不機嫌だった。
おかげで次の日、腰痛かったけど。


「これからはお互いのもらわないようにしようぜ」
『だね』


視線を向ければ仲直りしたらしい空とヤマトが私と太一の分を運びながらこっちへと戻ってくるのが見えた。

モテる恋人を持つと、大変です。




モテる恋人


仲良くこれからの予定を立てる空とヤマト
私と太一はそれを見ながらハンバーガーを口に運んだ
テーブルの下で繋がれた手をそのままに









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