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「「「あ、青峰に彼女ォ〜〜!?」」」
「あ?なんだよ···彼女くらいいるっつの」


桐皇学園の体育館に響いたその声に、青峰は煩そうに耳をおさえながらえらそうに言った。
それに毎度の如くキレそうになる若松をおさえて、主将の今市が青峰に再度問いかける。


「ホンマなんか?」
「ウソ言うかよ」


珍しく青峰が体育館に来ていたから理由を聞いてみれば、彼女が見に来るから···という理由だった。
今まで彼女の存在など知らなかったメンバーからしてみれば驚愕の出来事だ。

あの青峰が彼女が見に来るというためだけに今まで参加すらしなかった部活に来るとは。

その時ドリンク作りから帰ってきた桃井を見つけた今市は、青峰と幼なじみの彼女に聞くことにした。


「桃井。青峰に彼女がおるってほんまなんか?」
「····································いますよ」


たっぷりと間をあけて帰ってきた答えに首を傾げる。
嫌そうに顔をしかめる桃井を見て、青峰の彼女とは仲が悪いのだろうか······と思ったがどうやら違うようだ。


「青峰君にはめちゃくちゃもったいない"かわいい"彼女がいますよ!!」


嫌味たっぷりの桃井の言葉にすぐさま青峰がつっかかる。


「あぁ!?もったいねえとはなんだブス!!」
「あ〜〜!ブスって言った!星空に言いつけてやるんだから!!」
「いい加減あいつ離れしろよオマエも!!いっつもひっついて来やがって!」
「いいでしょ、別に!」


ぎゃあぎゃあと言い合う幼なじみたちを、耳を塞いでやり過ごすバスケ部メンツ。

とりあえず青峰の彼女の名前は星空というらしい。
というか会話からするに二人とは凄く仲が良さそうだ。
となると、幼なじみだろうか。


「青峰の彼女は二人の幼なじみなのか?」
「え···?そーですね、青峰君とは幼なじみですね」
「青峰とは···?」
「だって私の双子の姉ですから!」
「「「························は!?!?」」」


再び響いたその声に青峰がまた耳をおさえてやりすごす。
爆弾発言をした桃井はニコニコとしていた。

まさか桃井に姉が···しかも双子の姉がいるとは思わなかった。
聞けば高校も一緒らしいが特に部活に顔を出しに来たりなどはしてないようだ。
桃井の方は部活を見に来て!と誘っているらしいが邪魔したくないから、となかなか誘いには乗ってくれないらしい。
だが今回は青峰のためにと見学しに行くと言ったのだ。


「桃井の姉っていうと···」


誰もが想像するのは桃井さつきにそっくりな女子だ。
桃井も女子の方ではなかなかの顔立ちであり、プロポーションだって悪くはない。
その桃井の姉だとなると···。


「星空はめちゃくちゃ可愛いですよ〜!!なんたって小さい頃から青峰君が一途に想い続けるくらいですから!ね?」
「うっせーな、余計なこと言ってんじゃねえよ。ま、あいつはオマエと違って料理も上手いしな」
「うるさいな!」
(((あ、そこは桃井と似なかったのか···)))


どこかほっとする。
桃井の料理はあれはもはや料理とは言い難い。


『あ、いた!大輝君!さつき!』


その時、高くも低くもない綺麗な声が体育館に響いた。
みんなが一斉に体育館の入り口を振り返ると同時に、青峰が一目散に駆け出して女子生徒の元へと向かう。
一瞬遅れて桃井も駆け出した。


「おせーよ、星空」
「やっと来てくれたんだね、星空!待ってたよ〜!!」


大きい青峰の体に抱き締められ、桃井にはぎゅっと手を握られている女子生徒の姿をバスケ部は食い入るように見つめる。


『あはは···遅くなってごめんね?ちょっと先生に用事頼まれちゃって······。あ、お邪魔します』


さりげなく二人の拘束から抜け出して、バスケ部に頭を下げる女子生徒の姿にバスケ部は思わず見惚れた。

さらりと流れる桃井と同じ色の肩につくくらいの髪に、桃井と同じ瞳。
背は桃井ほど高くはないが、全体的に華奢なその体格は男の庇護欲をそそる。


「え、自分が桃井のお姉さん···?」
『はい。桃井さつきの双子の姉の星空って言います。今回は大輝君を部活に参加させるために来ました』
「ったく、オマエが部活見に行ってもいい?なんて聞くから何かと思えばそれかよ···」
『だって、さつきに頼まれたら仕方ないでしょ?』


バスケ部は唖然とした。

あの誰にでも態度が悪く、ついでに目付きも悪い青峰が、優しい顔で全身で愛おしいと感じるぐらいの雰囲気で彼女と話しているのだ。

唖然としない方がおかしい。


「あれ、ほんまに青峰か···?」
「そうですよー。青峰君ってば昔から星空に対してはわけわかんないくらい優しかったんですよ」


いつの間にか戻ってきていた桃井が楽しそうに笑いあう二人を見ながらそう言った。

その顔は二人を見守るお母さんのようで、でもやはり姉をとられて悔しそうな、複雑な顔だった。
それでも桃井はどこか嬉しそうに青峰と自分の姉を見つめていた。

結局のところ、自分の大切な幼なじみと姉が幸せならそれでいいのだ。




青と桃



「ほな、あの子いれたら青峰は部活に来るってことか?」
「そうだと思いますよ?青峰君、過保護だし。それに私も星空が入ってくれたら凄く嬉しいです!」
「は?ざけんな。こんな野郎だらけのところにこいつ置いておけるかよ」
「私がいるでしょ!」
『入部前提で話されてる···?』









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