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ボー···ッと窓枠に腰かけて空を見上げる。
夜空に浮かぶ満月。
私は小さく歌を口ずさみながらそれを見ていた。


『こんなにも愛おしいだけ······♪』


今日、久しぶりに大きなことがあった。
私と一緒の任務についていた数人のファインダーが、AKUMAの攻撃にやられて死んでしまった。
エクソシストは私だけじゃなかった。

守りきれると、みんなで生きて帰れると思っていた。

だけど結局、死んでしまった。

棺にすがりつく私を、リナリーやコムイさんは抱き締めてくれた。「無事でよかった!」と何度も何度も呟きながら。
神田もなんだかんだ心配してくれて、ジェリーは私の好物をたくさん作ってくれた。科学班のみんなも、「おかえり!」と涙を流して出迎えてくれた。

だけど、どうしても死なせてしまったファインダーの人たちのことが頭から離れなくて、今も眠れずにいる。

こんなこと、あの時以来だ。
彼がこの教団に来たとき───

コンコンとノックをする音が聞こえた。


「セイラ?はいるぜ?」


返事をする前に入ってきた彼───ラビを一瞥して視線を外へと戻す。

たしかラビは三週間ぐらい前に任務に行ったはずだ。


『おかえり、ラビ』


ニコリと笑うとラビは眉を寄せて怖い顔をしながら「ただいま」と言う。
そして私に近づいてきて包帯だらけの私の体を抱き締めた。


「うわっ!めちゃくちゃ冷てぇじゃん!いつから外見てたんさ?」
『さあ?覚えてない』


クスクスと笑いながらそう言うとラビはバッと私の肩を掴んで離れる。
そして自分のマフラーと団服を脱ぐと、団服を私へと着せてマフラーをぐるぐると巻いてきた。
先ほどまで身に付けていたラビの体温が私の冷えた体を暖める。


『あったかいね···』
「そりゃそうさ。今まで着てたんだから。お望みならもっと暖まることする?」
『調子乗んなよ、バカ兎』


ガンッとラビの脛を蹴りつけると、ラビは声にならない悲鳴を上げて蹴られた箇所を押さえながら、部屋中をピョンピョン飛び跳ねる。


「〜〜〜〜ッ!ひどいさぁ!セイラのこと心配してやったのに!」
『心配の仕方が違う』


ピョンピョンッと飛び跳ねるラビが、本当に兎みたいで思わずクスッと笑うとラビはじっとこっちを見て笑った。


「やっと笑ったな」


その言葉にきょとんとして、私はまた空へと視線を戻した。


『何言ってんのよ、さっきも笑ってたでしょ』
「あぁ、人形みたいな笑い方だった」
『············』
「オレの目は誤魔化せねぇよ?どんだけお前のこと見てきたと思ってるんさ」


ラビが初めて教団に来た日───今日の私と同じように棺にすがって泣くリナリーを抱き締めた私の姿を見たときから、ラビはずっと私を見ていたらしい。


「無理すんなよ、セイラ」


ラビの言葉に、視界が涙で滲む。
そんな私を見かねたラビがぎゅっと強く、私の体を抱き締めた。


「誰も見てねぇさ。我慢すんなよ」


ポロポロと涙がこぼれる。

確かにみんなは私のせいじゃないといってくれた。
エクソシストにも限界がある。

だけど、だけど───


『守れるって、思ってた······守りたかったッ······!』


やっぱり一緒に行動していた人が死んでしまうのは耐えられない。

ラビは私が泣き止むまでずっと抱き締めていてくれた。



***


だんだんと涙も止まってきてゆっくりとラビから離れると、彼は笑いながら私の頬へと手を伸ばした。


「セイラって泣いてても可愛い」
『··················からかってる?』
「!? ちょ、違うから脛蹴ろうとすんなって!」


足をあげているのがバレてしまった。
チッと心中で舌打ちをする。
すると、ラビはガーゼが貼られている頬をするりと撫でた。


「可愛い顔に傷なんかつけるもんじゃないさね」
『······いいよ、すぐ治るし』
「そーゆーことじゃねえの!」


デコピンをされて、「痛い···」と額を押さえる。
そのまま彼の顔を見上げると、バンダナがおろされた赤い髪の下にうっすらと線が見えた。
ラビの髪に手を伸ばしてかきあげると、微かに血が滲んでいる。

任務から帰ってきて事情を聞いてそのままここに来たってことかな。

はぁ······とため息を吐いて窓を閉めるとラビの手を引いてベッドに座らせた。


「えっ······セイラからのお誘いなんてハジメテ······」


変なことを言うこのバカ兎のちょうど傷ができている場所をつつく。


「いってええ!?セイラひどいさ!!」
『うるさい。』


部屋にある救急箱を手にとって、私はラビの手当てへと移った。
いつの間にか、今日のことを考えることはなかった。

変に気を遣うこともなく、ありのままの自分でさりげなく慰めてくれるラビに、私は笑みを浮かべた。




あなたの傍



『ラビだってせっかくカッコいい顔なんだから傷なんかつけない方がいいよ』
「セイラ······っ!やっぱりセイラ大好きさー!!」
『ちょ、抱きつくなバカ兎!!』
「ひどっ!」









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