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カモメが気持ち良さそうに空を飛ぶ。
アルバディア領海を抜けてデイテロス地方をいく一隻の海賊船ではいつもの如く、はしゃいだ緋水が高波をかぶり緋色の髪の毛へと変わっていた。
不貞腐れた顔でタオルで頭を拭く緋水をみんながはっはっは!と笑っている中、緋水はいつも自分の頭を触るときに何処か懐かしそうに目を細めるイクタの事を思い出していた。


「そーいや、もうすぐホームに着きますね。緋水を見たらあいつも喜ぶんじゃないですか?」
「あいつ?」


ドムの声に緋水が振り返る。すると緋水の近くにいたジンも嬉しそうに口を開いた。


「絶対喜ぶっスよ!「もう一人いるなら会いたい」って言ってたじゃないっスか!」
「そーじゃのう…」


ヤッセンや他の野郎共も口々に話し始める。


「ねえ、イクタ。あいつって?」
「あぁ……緋水には話したことなかったもんなぁ」


緋水の緋色の髪を撫でながら目を細めるイクタに、緋水は「あ…」と目を見開く。
この瞳だ。自分越しに誰かを見ているような……愛おしさを含んだ眼差し。


「俺らの仲間だよ!今回の航海には参加してないけど、ホームで俺らの帰りを待ってるヤツがいるんだ」
「へえ…」
「イクタさんに負けないくらいの腕っぷしでな。あれで女なんだからすげーよな」
「それ本人に言うなよ、ジン。笑顔で殴られるぞ」
「ははっ……」


興味津々に聞いていた緋水はあるワードがひっかかり、「えっ!?」と船に響くほどの大声をあげた。みんながなんだ?と視線を向ける。


「女!?」
「あぁ。そーいや、緋水と同じっスよね」
「あいつの髪は真っ青やけどな」
「僕と一緒って……もしかして人魚?」


みんなで一斉に頷く。「えええええ!!?」と緋水の驚きの声が海に広く響き渡った。
「どういうこと!?」ジンたちに詰め寄る緋水に笑いながらイクタが空を仰ぐ。
そこには彼女の髪と同じ青色が広がっていた。


「どんな反応するか、楽しみっスね頭」
「ほーやなぁ……」


緋水と同じブルーアイズを大きく見開いて驚く彼女の顔が容易に想像できてイクタはふっと笑った。


「はよ帰らんと何言われるかわからんけぇ」
「ははっ、そうっスね」


イクタとドムがそんな話しをしているのを横目に、緋水はジンやヤッセンたちから自分と同じ人魚のことを聞いていた。
自分と同じブルーアイズに背中まである白い髪。レイピアとホワイトタイガーがあしらわれた白いピアスをしている、腕っぷしが強い女性。
イクタと同等だというのだから驚きだ。


「あ、ねえ。前にイクタが「あいつと同じ」って言ってたんだけど、それって……」


「ホントにあいつと同じじゃな……」


「ああ。あいつのことだろうな。イクタさんが人魚探しに出たのってあいつを見つけたからだろ?」
「あーそういえば前にそんなこと言ってたよな」
「イクタって……その人のこととっても大事なんだね。僕を通して時々誰かを重ねてるみたい」


緋水の言葉にみんなは「あー」と視線をあわせた。


「まぁ、イクタさんはあいつのこと大切にしてるからな」
「おかげで誰もあいつに手出せねえんだよ」
「お前じゃ相手にされねーよ!」
「なんだと!?」


わいわいがやがやと話し出したジンたちに、緋水は空を眺めるイクタへと駆け寄った。


「イクタ!」
「ん?」
「早くホームに行こうよ!僕会ってみたい!」
「……ほーか」


自分と同じ存在に会える!とワクワクしている緋水を見ながら目を細めて笑った。


「あいつもーーコトハも緋水に会えるの楽しみにしちょるよ」


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