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復讐の記念日



『ん?』
「どうした?ティアナ」


遠くの方に見えた影に目を凝らせば、それに気付いたルフィが振り返る。カナもそんな二人に気づき、ティアナと同じ方向を振り返った。
三人が見る先には幾つかの影。


『なに?アレ···』
「なんか飛んでんなァ······」
「遠くてよく見えないけど···」


首を傾げる三人を乗せるメガロはオ〜〜エ···と吐きそうな顔で涙を流していた。
だが、すぐに見えなくなってしまった影に何となく気になって視線を向けるティアナとは違い、ルフィやカナは興味ないとすでに意識は別の方へと移っていた。


「おい!今いい匂いしたぞ!?」
「本当だ!ちょっと降りてもいい?」


本当に食欲に忠実な奴らである。ティアナはチラリと影が去っていった方向を見て、目の前の二人へと視線を戻した。そして今にも美味しそうな匂いにつられて下に降りようとしている二人の首根っこをガシッと掴む。


『降りてもいいけど······遠慮なく置いていくから。もう拾わないからね?
「ティアナの鬼!!!」


ニコリッとそれはもう目が笑っていない笑みを浮かべるティアナに、カナはギャンッ!!と騒いだ。だがすぐにティアナに絶対零度の視線で睨まれて大人しくなる。
そんなカナの様子にメガロの中にいたしらほしはクスクスと笑った。


「ティアナ様とカナ様は仲がよろしいのですね」
『いえ。ただの腐れ縁です。
「こんだけ長い付き合いなのに腐れ縁という一言で済まされちゃうの?嘘でしょ??」
『腐れ縁です。』
「2回も言うなよ、悲しくなる!!」


クスクスと笑うしらほしと、グスングスンッと膝を抱えて泣き真似をするカナ。そんな対極的な二人を横目に、ティアナはカナのことなど視界に入っていませんと我関せずの態度を取っていた。そんな彼女を後ろから抱きしめたのはルフィである。


「でも、カナよりおれとの方が仲いいぞ?」
「お前らは仲いいとかじゃないじゃん。仲いいね〜とかの部類に入るの?」
「おれたち仲いいよな?ティアナ」
『仲良くなかったらルフィとここまで付き合えてないでしょ』
「それもそうだな」
「え、カナの時は腐れ縁です。って肯定しなかったのにルフィの事は肯定すんの?何コレ···イジメ?
『あたし、カナイジメたことあるっけ?』
「現在進行形でイジメられてますね。つかイチャイチャすんのやめてくんない?」


カナが呆れた目で見る先には、2年前よりは伸びたティアナのふわふわの髪に顔を埋めてゴロゴロと甘えるルフィの姿があった。(猫か···)内心ツッコミを入れたカナがティアナの隣に座り直す。


「なんなのルフィ。何かひっつき度パワーアップしてない?」
『ひっつき虫みたいだよね』
「自分の彼氏、虫に例える人初めて見た」


顔を埋めるルフィの髪を撫でながらティアナが優しく微笑む。カナはその様子を胡坐をかいた足に頬杖をつきながら見つめた。

2年間。
ラムたちの元で修業をしていたティアナとカナだが、その修業はとてつもなく過酷だった。彼らはティアナたちと同じように滅竜魔法を使うわけでもなく、似たような魔法を使う者たちでもない。
だから自分たちで試行錯誤の上、ワザを生み出してそれが生かせるかを自分たちで試すしかなかった。

治療や飯などを準備してくれたのはラムたちだが、魔法を使わない彼らにまだ威力もわからない制御もできないワザをぶつけるわけにもいかず、毎日自分たちの体を犠牲にしては修業を繰り返した。

彼らも彼らで専門外の戦い方なのに一緒に考えて、アドバイスをし、精一杯の世話をしてくれた。魔法がいざ使えなくなった時の為にも、剣や銃 その他諸々の武器の使い方まで教えてくれた。

それでも精神的に参ることは一度や二度ではなかった。そのたびに二人は寄り添い、約束の日の為に前に進んだ。そんな辟易とした中で、心から笑える程の余裕などあるはずもなく。度々二人の苦労を癒す為にラムたちが開いてくれた宴で、楽しい笑顔を浮かべる“だけ”だった。

だが、今の自分たちはどうだろう。2年振りの仲間に会えて、ティアナは愛しい人に会えた。2年間の中で中々見せなかった笑みや表情などを思う存分振り撒いていることだろう。


(ふっ。愛の力ってやつ···?)

「カナ、何ニヤニヤしてんだ?気持ち悪ィぞ」
「今のスゲェ刺さった。」


仲間たちと再会してからティアナに散々冷たく言葉を返されてきたが、今のルフィの言葉が一番心に刺さったカナは、紫色の瞳に滲んだ涙に気づかぬフリをした。


「あの···ティアナ様とルフィ様って···」
「恋人だよ。コ・イ・ビ・ト。本当もうこっちが恥ずかしくなるほどのラブラブっぷりでさ〜。本当爆発してほしいぐらい」
『お前の頭爆発させてやろうか』
「こわっ」
「面白そうだな、それ!」
「何も面白くないわ。やめて??」


「もうやだこのバカップル···」項垂れるカナを放置して笑いあうティアナとルフィ。
メガロの上で行われる会話に、しらほしはただ楽しそうに笑うだけだった。