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魚人島の冒険



「おれ···ここに······!!住む〜〜〜!!!」
「サンジちゃん、面白い人〜〜〜〜っ!!」


目をハートにして上の服を脱ぎ人魚たちと遊ぶサンジに人魚たちは面白そうに笑う。
ティアナはルフィの隣に座って、足を水につけながらイシリーたちと喋っていた。


「あら、ティアナは魔法が使えるの?」
「見せて見せて!」
『えーっとね···』


興味津々に見られては、嫌だ。なんて言えなるわけがなく。ティアナは隣でサンジの様子を見ながら不貞腐れたように口をとがらせて寄りかかってくるルフィを横目に、『“水竜”』と水の竜を作り出した。


「きゃああ!すごーい!」
「他には?」
『あーあとは···“水幻想アクアイリュージョン水球ウォーターボール”』


水の膜を分裂させて小さい水の球を何個か作り出すと人魚たちの元へと飛ばす。するときゃあきゃあ!と声をあげながらそれをつつく彼女たちに、ティアナは柔らかい笑みを浮かべた。


「なーケイミー、おれこの魚人島で必ず会いてェ奴がいるんだ!!」
「ふーん。誰!?人魚姫?」
「いや、ジンベエだ!!!」
「ジンベエ親分?」


ティアナが作った水の球で遊ぶイシリーたちを微笑ましく見ていたティアナがルフィとケイミーの会話に目を向ける。ぐっと体重をかけてティアナの方にもたれかかってくるルフィの頭をティアナは優しく撫でた。


「2年前、エースが死んで···でも、おれがヘシ折れずに済んだのはあいつのお陰だ。ジンベエに会いたい!!!」


エースが死んで、目が覚めたルフィはそれは見ていられない程に荒れた。ティアナが傍にいたのにも目をくれず、ひたすら森で暴れまわった。
そんなルフィに声を掛けられず立ちすくんでいたティアナの代わりに、ルフィへと言葉を投げかけたのはジンベエだった。


「おい、ルフィ。「ジンベエ」ってまさかおめー、また・・七武海の!!?あ···元七武海か」
「うん、友達なんだ。な、ティアナ」
『うん』
「お前ら何なんだよっ!!」


王下七武海海賊女帝のハンコックにくわえ、元七武海のジンベエとも知り合いとなっているルフィとティアナにウソップは驚きを隠せない。確かに普通の人間なら人生のうちに一回関われたら儲け程の人間たちとの関わりを、ティアナとルフィは持っているのだ。
ティアナが持っているとすれば、常に一緒にいるカナもジンベエと関わりがあるはずだ。ウソップは三人の幅広い人間関係が少し怖くなった。


“2年後、魚人島で会おう!!お前さんと仲間達がやって来る日を楽しみにしておる!!”


修業場所へと向かうためにジンベエより先にルスカイナ島を出発してしまったティアナとカナは、ジンベエがルフィにそんなことを言っていたなんて知る故もなく、ルフィから聞かされた言葉に驚いた。


(あたし達が行った後にそんなこと言ってたんだ···)

「この島で会おうって約束したんだ」
「そういえば、ルフィちんとティアナちんとカナちんとジンベエ親分が一緒にいるっていう記事読んだ!」


(へェ、そんな記事があったんだ···)ティアナはルフィの髪の毛を撫でながら思う。そして寄りかかってくるルフィを気にかけながら少しケイミーの方へと身を乗り出して聞いた。


『ジンベエ、どこにいるの?』
「───えーと···親分さんは今、この島にはいないの」
「『え!?』」
「戦争の時、“七武海”をやめたでしょ?───だから「魚人海賊団」だった人達はこの島には居られなくなって、ジンベエ親分と一緒に魚人島を出て行ってしまったの」
「え〜〜〜っ!!!じゃあジンベエには会えねェのか〜〜!?」
「詳しく話せば長くなるけど、戦争の後この島にも色んな影響があって······」


ルフィとケイミーとの会話を聞くティアナの目の前で、海底から姿を現した海獣に思わずぎゃああ!!と悲鳴をあげるウソップとチョッパー。ティアナはそんな様子を笑いながら見た。


「ケイミーケイミーケイミーケイミーケイミー!!」


ふにふにふに!!と泳ぎながら近づいてくる五つ子たちにティアナたちは目を向けた。


「船が来るよ!!」
「来るかも!!」
「王国の船が来る!!」
「誰も乗ってないかも!」
「乗ってるに決まってるでしょ!!」


五つ子たちのそんな言葉にケイミーは目を見開いた。


「誰が乗ってるの!?メダカちゃん達っ!!」
「まだわからない!」
「珍しい王国の船っ!!」
「ここには滅多に来ない船」
「もしかして“不法入国”のルフィちん達を捕まえに来たのかも!!」
「『え!?』」


ケイミーの言葉にティアナとルフィは顔を見合わせた。


「ルフィちん達!!隠れなきゃ!!」


ティアナたちはケイミーの言葉にそれぞれ岩場に隠れたりした。ティアナとルフィは一緒に岩陰に隠れ、ウソップとチョッパーもその隣の岩陰に隠れる。
サンジはイシリーの胸に押さえつけられて隠れていた。


「あれ?王族のゴンドラ!!」
「やっぱりそお?」
「そうだ」
「そうなんじゃない?」
「そうだから何!?」
「───でも、まさか王族の誰かという事はないでしょ。こんな島の隅っこへ竜宮城からわざわざやって来ないわよ···」


そう言う人魚だが、ゴンドラはこちらに近寄ってくるとゴンドラ上にいた魚たちがパッパパ〜〜♪とラッパを盛大に鳴らした。


「ネプチューン三兄弟様のォ御成ァ〜〜り〜〜〜〜〜!!!」
「やあ、入り江の娘達···一つ尋ねたい事があるのだ」
「「「!!キャーーー〜〜〜〜!!!王子様達〜〜!!」」」
「なぜここに〜〜〜!」


思いっきり王族の者が来たではないか。しかも三人も。

ルフィとティアナは王族の者たちが来たことに岩陰に隠れながら顔を見合わせた。


「?」
『王子?』


なぜ王子がわざわざここに?


「不法入国者の報告を受けているのですが、ここへ来てはいませんか!?」
「来てたら言ってくれミファソラシド〜〜♪来てなかったら仕方なミレド〜〜〜♪」
「アッカマンボ♪フ〜〜リッフ〜〜リ♪わーーあ!!おいらもここで遊んで行きてーなー!!」


何とも個性的な王子たちである。

リュウグウ王国ネプチューン家三兄弟。フカザメの人魚で長男のフカボシに、リュウグウノツカイの人魚で次男リュウボシ。そしてアカマンボウの人魚で三男のマンボシ。

フカボシ以外、妙に癇に障る喋り方をするのでティアナは内心イラッとしていた。フカボシみたいにふつーに喋れねェのか、こいつら。


「···い···いいえ!!ここへは誰も来ていませんが······」
「そんなにも重要な人物なのでしょうか!?」
「王子達がわざわざ降りて来られる程の!?」
「ウム···まあ···まだ私の思う者達と確定ではないのですが」
「確定ではなミレド〜〜〜♪」
「踊ろうぜ〜〜〜!!アッカマンボ♪」


いちいち癇に障るなァ···とイラッとしたティアナが思わず手を出しそうになるがそれに気付いたルフィが彼女の手を握って止める。

王子達は人魚達の言葉を信じてここから立ち去ろうとした。その瞬間、イシリーの胸に押し付けられていたサンジが我慢の限界を超えたのだろう、ブバァ〜ッ!!!とありえない程の鼻血の量を噴き出した。まさかの出来事に隠れていたティアナ達も顔を出してしまう。


「サンジ〜〜〜〜!!!」
「キャーーー!!サンジちゃん!?」
「今の血の量やべェぞ、サンジ!!」
「ダメだった、押し殺した興奮が爆発した!!!」
『せめてもう少しだけ持ってほしかったなあ!!!』


サンジの元に集まって、彼の容態を診るルフィ達の姿をフカボシが手配書と見比べる。だがそれによってルフィたちがいることがバレてしまい、フカボシは「アンモナイツ」という王国兵達をルフィたちの元へと向かわせた。

近付いてくる王国兵達にチョッパーが待ったをかける。


「ちょっと待ってくれェ!!!···不法入国は悪かったよ!!捕まえるのは後にしてくれ!!」


チョッパーの訴えに足を止める。


「その前に今すぐ誰か···!!!献血してくれねェか!!?このままにしてたら数十分で仲間が死んじゃうよ!!!血液は「S型RH−」!!ちょっと珍しいけど、この中に誰かいないのか!?それとも魚人や人魚は流れる血が違うのか!!?」


だがみんな、動きを止めて誰も名乗りあげようとしない。


「おい!!頼むよ誰か!!お願いします!!!サンジに血ィやってくれェ!!」
「急いで!!!誰かいねェか!!?」
「こんなバカな死に方ねェ···!!!誰か!!!」


ルフィ、チョッパー、ウソップが必死に訴えるが誰もかれも視線を合わせない。ティアナはまさか···とケイミーを振り返った。


『ケイミー、まさか······!!』


ティアナの言いたいことがわかったケイミーが頷く。面倒なことになった···!とティアナはチッと舌打ちをした。


「チョッパーちん!人魚も魚人も人間と同じ血液だよ!輸血もできる。······だけど」


その時、「ハモハモハモォ!!!」と聞き慣れた笑い声がその場に響いた。カナが変な笑い方とツッコんでいた奴の登場である。


「人間共がァ〜〜〜!!!バカ言ってやがるぜェ〜〜〜!!!クソみてェな“下等種族”のてめェら人間にィ!!!血をくれてやろうなんて物好きはこの魚人島にゃあいねェよォ!!!そんなものを差し出せば、人間を嫌う者達・・・・・・・から“闇夜の裁き”を受ける!!!」
「海獣連れてたあいつらだ!!」
『闇夜の裁きってナニソレ。何その変な名前』


中二病みたいな名前だ。

その時ケイミーがドボン!!と海の中へと潜っていった。サンジの鼻からは未だにドクドクッと血が溢れ出ている。


「ダラダラと···大量の血を流し、何もできずに死に絶えればいい···!!この国には古くからの法律があるのさ!!「人間に血液を分かつ事を禁ず」!!!
「何だって······!!?」
「これはいわばお前ら人間の決めたルールさ!!!長い歴史において···我らの存在を化け物と恐れ···!!血の混同をお前達が拒んだ!!!魚人島の英雄“フィッシャー・タイガー”の死も然り!!!」


ティアナとルフィは「『ん?』」とハモンドの言葉を聞いて顔を見合わせた。それに気付かずハモンドはうるさいくらいに言葉を続ける。


「種族構わず奴隷解放に命をはかった男が······!!!後の流血戦の末、血液さえあれば確実に生きられた命を···いとも簡単に落とした。心なき人間達に供血を拒まれ······死んだ!!!
「『············』」
「そんな部下一匹の命なんか諦めて···お前ら、おれ達と“魚人街”へ来い!!!「新魚人海賊団」船長“ホーディ・ジョーンズ様”がお前らをお呼びだァ!!!」


こちらを指差してそう言うハモンドに、ウソップは再度人魚達へと声をかけるが、誰も頷いてはくれない。そしてハモンドは銃をこちらへと向けてきた。それを見て視線を合わせたルフィとティアナが静かに立ち上がる。


「力ずくで連れてくぞォ·········“打瀬網”!!!


ハモンドが撃った銃の中から出てきた網がこちらへと向かってくる。


「ティアナ」


静かにルフィに名前を呼ばれたティアナが一歩前へと出ると、スッと右手を前へと向けた。


『“水竜”』


その手のひらから水の竜が飛び出すと、こちらに向かってきた網を水で押し退けた。それと同時にルフィがティアナの前へと出る。


「お前らの言う事は·········聞かねェって!!言っただろ!!!」


拳を思い切り引いたルフィがハモンドたちを睨みつけた。


「“JET銃ジェットピストル”!!!」


そしてハモンドと一緒にいた新魚人海賊団もろともぶっ飛ばす。一発でぶっ飛ばされたハモンド達にその場にいた全員が目を見開いた。


『ルフィ!』
「ティアナ!!危ねェ!!後ろに海獣だ!!!」


ルフィへと駆け寄るティアナの背後から「ガルルルッ!!」と唸る海獣が迫りくる。ルフィはそれを見ると駆け寄ってくるティアナの腕を掴んで引き寄せると、右手を海獣へと向けた。そして海獣を鋭く睨みつける。
すると海獣は「クゥーーン···」と鳴いて、ルフィの前で大人しくなった。そのことにルフィの腕の中でティアナが目を見開くと同時にウソップたちも驚きの声をあげる。


「海獣が···戦わずに負けを認めた···!!」

(か、かっこいい······)


場違いだとわかってはいるが、目力とその存在だけで海獣をいとも簡単に伏せさせてしまったルフィにティアナは顔を真っ赤にした。きゅーん!と胸が締め付けられる。


「大丈夫か?ティアナ」
『ハ···ハイ···』


ルフィのカッコよさに惚れ直したティアナが顔を真っ赤にしながらコクンコクンッと頷く。
すると「ルフィちん達〜〜〜〜〜っ!!」とルフィ達を呼ぶケイミーの声が聞こえた。上を見上げて見ればそこには王子達が乗ってきたゴンドラに乗るケイミーの姿が。


「サンジちんを乗せて!!町へ行こう!!!」
「ケイミーーー!!」
「町の港には人間の人達がいっぱいいる!!急いで!!!」


『リュウグウの王子達が乗っていたゴンドラを奪い取るなんて···やるぅ』口笛を吹いたティアナがサンジを連れてルフィ達と共にゴンドラに乗りこむ。


「よし!!乗ったぞ、ケイミー。出せ!!!」
「お願いリュウグウちん!!町まで」


ゴンドラはケイミーの言葉に鳴き声で答えると動き出した。


「───ごめんね、私が同じ血液型なら拒否なんてしないのに!!」
「お前が謝る事じゃねェだろ!!元々はコイツのやましい気持ちから始まってんだ。見ろよ、少しニヤけてやがる!!」
「サンジー!!いい加減にしろよー!何も考えるな!!本当に一刻を争う状態なんだぞ!!!」
『ほんと人騒がせなヤツ······』


チョッパーがサンジに怒鳴るのを聞きながらティアナは冷たい目を彼へと向けた。カナも共にいたならば絶対に彼女も「幸せなヤツだな。」とツッコんでいた筈だ。


「───しかし、シャボンディで2年前にお前やハチが受けた“差別”といい、根っこは深そうだな············!!下心の鼻血が笑えねェ大ごとになるなんて······」
「うん···」


ケイミーは町についても心配ごとがあるらしい。
献血者が見つかるかどうかわからないのだ。それは何故か。ここ一か月人間達が全然この島にやって来ないかららしい。
ケイミーはティアナたちが久し振りのお客様になると言う。
そんなケイミーにルフィは不思議そうに問いかけた。


「何でだ?ここは名スコップだろ!?」
『名スポットね。』
「わからない···誰かが航海者の邪魔をしてるんじゃないかって───何か大きな陰が動いてるんじゃないかって国中の噂で···」


ケイミーのそんな様子にルフィとティアナは顔を見合わせたのだった。