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海底1万m



「“海底火山”が噴火する〜〜〜〜!!?」


カナの人一倍でかい声が海底へと響き渡る。
サニー号を襲おうとしていたバンダー・デッケンが率いる海賊団は“アンコロ”というアンコウと“ワダツミ”という海坊主に船を引かせてそこから立ち去ろうとする。
だがクラーケンがそれを許すわけがなく、キッと眼光を鋭くして船を追おうとする。それに気付いたナミがルフィを振り返った。


「ルフィ!!!“クラーケン”に言って!!すぐここから遠ざかる様に!!」
「おう!!おい、スルメ〜〜〜〜!!」
「待った!!必要ねェっ!!!」


ウソップが下を見ながら声を張り上げた。それと同時にサニー号がぐんっと力強く引っ張られる。


「もう脇目も振らずに走り出してる!!!伝説の怪物がものすごい形相で!!!」
「助かる!!案外気が合いそう」
「ひどい走り方」
「言ってやるな!!そんだけ噴火は恐ろしい事なんだ!!!」
『さっきの草がいっぱいついたカナの顔よりやべェな』
「何ソレ。どういう意味?」


ズドドドドドと海の怪物たちがいっせいにその場から物凄い形相と速度で遠ざかる。


「でもおれ、噴火見てェ!!!なァ、ティアナ!!」
『あたしはいいかな〜』


シャボンに張り付いて後方を見るルフィに同意を求められたティアナは、船の前方へと避難しようとしているウソップとチョッパーとそれに「変わんないわよ、たった数十m!!!」とツッコむナミと「楽しみだね、ロビン!!」とワクワクした様子でロビンに語り掛けているカナを見ながら返事をした。

その時───


ドォン!!


「「「「『!!!!』」」」」


海底火山が噴火をして、海底を大きな揺れが襲った。その揺れに対応しきれなかったブルックやチョッパー、ルフィ、ウソップ、カナが宙を舞う。


「「「「わあああああ!!!」」」」
「きゃあああ!!」


ナミはフランキーに掴まり難を逃れ、ロビンやティアナやゾロたちも船の手すりなどにつかまって、その揺れを防いだ。


「ぎゃあああ!!ティアナ、助けて〜〜〜!!」
『チッ』


宙を舞うカナからの助けに、ティアナは『“水竜”』と水の竜でウソップとカナを捕まえて、船へと降ろし、水がダメなルフィやチョッパー、ブルックは水の翼を広げて直々に捕まえに行った。


『まったく、世話が焼ける···!!』
「うほー!!ありがとう、ティアナ!!!」
『いーえ』


ルフィからのお礼に少々呆れ混じりに返す。
ティアナの水の翼で少しでも飛べたことが嬉しいのかルフィは少々興奮気味だった。


(2年前もだったけど···嬉しそうだなァ、ルフィは)


ルフィを下ろしたティアナはシャボンに手を添えて噴火した方を見るナミの傍へと寄り、そこから噴火してマグマが流れる火山を見つめた。隣にカナも並んで一緒に見る。


「ヤベェ!マグマが海底を駆け降りてる···!!」
「暑ィ!!熱ィ!!!」
「水温が上がってく!!!」


マグマが流れ出てることによって水温にまで異常が出はじめ、海底の気温が熱により上がっていく。シャボンの中にいるチョッパーたちにもそれは肌で感じていた。
その時、傍を逃げていたゴースト船と海坊主たちが熱流に巻き込まれて舞い上がるのが見えた。


「逃げてスルメ〜〜〜!!」
『やばい、水温差で海流がうず巻き始めた!!!』
「頑張れ〜〜〜〜〜!!!」


ナミとティアナとカナで必死に足を動かして逃げるスルメに声援を送る。
サンジはナミに鼻血を噴きながらも「ナミさん、“魚人島”はどっちだ、ブバッ!!!」と聞いた。それにチョッパーとカナが「こんな時までやましい気持ちが!!?」「幸せだね、サンジ」とツッコミを入れる。
ナミはそれを気にすることなく、記録指針ログポーズを見ながら答えた。


「まだまっすぐ!!!もう少し!!!あの海溝へ!!!」


目の前には断崖絶壁お先真っ暗の海溝があった。
それを見てウソップが悲鳴をあげる。


「おわああ〜〜〜〜!!!断崖絶壁〜〜〜!!!マジかおい〜〜〜〜!!!」
「暗黒よりもっと暗いっ!!!」
「本当にあんのか、この中に“魚人島”がァ〜〜〜!!!」


クラーケンが引くサニー号は真っすぐにそこへと向かう。
ウソップに掴まりチョッパーが後ろを振り返ると、マグマはすぐ近くへと迫っていた。


「後ろが熱ィ!!!熱ィよォ〜〜〜〜!!!」
「前は暗いぞ、恐ェ〜!!!また怪物が出るに決まってる!!!生きて帰ってこれる気がしねェ!!!ルフィ!!あの闇は地獄へと続」
「飛び込めスルメ〜〜〜!!!」


泣き言をいうウソップの言葉を遮り、ティアナを抱き寄せながらそう言うルフィに、クラーケンは冷や汗を流しながらも言われた通りにその海溝へと飛び込んだ。
それと同時にまたドォン!!と火山が噴火する。上を見上げたフランキーが何かに気づいて声をあげた。


「───アレは何だ!?上に何か」
「岩!!?土砂!!?ティアナ、どっち!!?」
『あ゛!?』


フランキーとカナの声にルフィの腕の中のティアナとその隣にいたナミも上を見上げた。そして目を見開く。


『“土石流”よっ!!!危ない!!』
「今の噴火で海溝が崩れたんだ!!!」
「え、マジで!!?」
「避けてスルメ〜〜〜〜!!!」


ドドドドと迫ってくる土石流に、ナミはスルメへと声をあげた。


「シャボンから出て斬って来る!!ルフィ!!カナ!!しっかり掴んでろよっ!!」
「「おう、任せろ」」


いつの間にかティアナから離れたルフィが、土石流を斬ろうと刀を構えて船から飛び出そうとするゾロの足をカナと一緒にがっ!!と掴む。

「ゾロ!!ダメよ!!」ロビンのハナハナの実の能力によってそれは止められた。「ここはもう8千mの深海!!シャボンの外に出ては水圧に潰されてしまう!!!」


「じゃあどうすりゃ」
「“必殺”“緑星”!! 「サルガッソ」!!!」


ウソップが放ったパチンコから出てきたのは大量の海藻だった。それによって土石流がせき止められ、その隙に急いでクラーケンはその場から離れた。そして瞬く間に海藻は土石流に押し流されてしまい、海溝の底へと落ちていく。
一瞬の出来事に、土石流と共に流されることをま逃れた麦わらの一味とクラーケンは安堵の息を吐いた。


「ウソップ、やるなーーお前!!!」
「いや〜〜〜!!!すばらシー判断力っ!!!」
「助かったぞ〜〜〜!!」


ルフィ、ブルック、チョッパーに褒められて嬉しそうなウソップを見たティアナとカナとゾロは、2年の間の彼の成長ぶりに「「『───へェ···』」」と笑みを浮かべた。
だが安心したのも束の間、上から落ちてきた一個の大きい岩がクラーケンの後頭部を直撃し、意識を失ったクラーケンと共に、麦わらの一味は海溝の底へと落ちて行った······。


***



海底1万m「海淵」(海底の底)───
気を失ったクラーケンの上で船が傾いた状態で助かった麦わらの一味はそれぞれが安堵の息を吐いていた。
「···た···助かった···!!」ウソップがいの一番に声をあげる。


『う〜···んんっ』
「ティアナ、大丈夫か!?怪我ねェか?」
『うん。ルフィが抱きしめてくれてたから大丈夫だよ』


腕の中で身じろぎしたティアナに気づいたルフィが彼女へと心配の声をかけると、ティアナはニコリと可愛らしい笑みを浮かべながらそれに応えた。
傍では、掴むものがなく突然の落下に対応しきれなかったカナが壁に頭を打ちつけた状態で寝転がっている。


「船長、カナも助けてくれたら嬉しかったですぜ」
「やだ。」
「なんっでだよ!!!」


体を起こしたカナがいまだにティアナを抱きしめているルフィに近寄って、二人でぎゃあぎゃあっと叫ぶ。二人の間に挟まれたティアナは鬱陶しそうに顔をしかめていた。


『それよりさぁ、何か明るくない?』


海底1万mもあるというのに、何故こんな明るいのか······ぎゃあぎゃあと言い合う二人の意識をそらそうとティアナがそう言うと、ロビンもそれに同意したように疑問の声をあげた。


「······光?なぜこんな深海に···!!」
「眩しいっ!!目が眩む様です!!!」


目の上に手をかざしながらそう言うブルック。


「私!!眩む目ないんですけどね!!!ヨホホホホホ!!!」
「ブルック、何一人で泣いてんの?」
「問題ありません。孤独、なれてますから」


一人ではじまったブルックのギャグに、カナが静かにツッコミを入れる。そんな二人を放って、ティアナの言葉に上を見上げたルフィがぞろぞろと船首に集まってきた仲間たちに上を見上げるように指を差した。


「おい、お前ら来てみろ!!上みろよ、上〜〜〜!!!」
「光っててよく見えねェ·········」
「おい、ナミ!!!アレか!?」
「ええ!!間違いないわ!!」


ルフィに問いかけられたナミは記録指針ログポーズと見比べながら答えた。


「指針はあの島を指してる!!───あれが、」
「「「「魚人島〜〜〜〜〜っ!!!!」」」」
『大きなシャボンに囲まれてるし、空気はあるかもね···』


ティアナがナミとロビンを振り返りながらそう告げると、彼女たちは頷いた。
目の前にはシャボンに包まれた島があり、「でっっけ〜〜〜〜〜!!!」とルフィたちは声をあげている。
意識を取り戻したクラーケンがムクと体を起こしてサニー号を持ち上げた。


「やった〜〜〜〜!!!着いたぞ〜〜〜〜!!!」
「“偉大なる航路グランドライン”の名スポット!!!」
「人魚達の舞い踊る島!!美しい“人魚姫”!!!ついに辿り着いたガキの頃から憧れた···夢の楽園!!」


それぞれが感動の声をあげる中、「オ···オオ···着〜〜いちゃったのねェ〜!!ケヒヒ」と閉じ込められていた樽からさりげなく出ようとしていたカリブーをゾロとティアナが遠慮なくガンッと踏みつぶして樽の中に押し戻していた。
ブルックとともに「マーメイDO〜♪マーメイ···」と肩を組んで歌っていたサンジが鼻血を噴きだす。


「サンジィ〜!!やっぱりダメだ!!妄想だけでこのザマ!?」


鼻血を噴き出して倒れるサンジにチョッパーが急いで駆け寄る。


「ごめんな、サンジ···。リハビリが間に合わなかった···本物の人魚達にはもう会わねェ方が」


そこにウソップが膝をついて「ドクターーーっ!!!」と呼ぶ。


「魚人島の人魚達に会う事はコイツの“夢”なんだよォ!!!」
「だけど、会えば命を落とすぞ!!」
「そんな!!!」
「構わねェ······!!!」


か細い声でそう言ったサンジにウソップは「サンジ!!」と声をあげた。


「夢かなわず生き長らえるより···人魚達をエロい目で見て死にたい」
「最低か!!!」


「おれは会う!!!」ウオオオオ!!と燃え上がるサンジを見ながらカナが「何アレ?」とティアナに問いかける。彼女はそれにチラリと彼らを見てから『さあ』と至極どうでも良さそうに答えた。
そんな彼女らの隣でルフィが食べ物を想像しては涎を垂らす。


「楽しみだなー、魚人島の料理には何の肉が入ってんのかなー······何だと思う?ティアナ」
『知らないよ。』
「やっぱ旨みがギュッと詰まった魚介類でしょ!!」


ルフィの質問にも至極どうでもよさそうに答えた彼女の隣から何故か拳を握りしめながら力説するかのようにカナがそう言う。
「そうか、旨みがギュッと······」想像して大量の涎を出すルフィの肩をナミがポン!!と叩いた。
そしてルフィに魚人島の入口を探す為に船を引いてくれるようにクラーケンに頼んで欲しいと告げる。するとフランキーが「おい、何がコイツら!!」と声をあげた。
みんながその声に視線を向けると───


「何を人間なんぞに従われてんだ、クラーケン!!!」


突然の声にクラーケンはギクッ!!と体を震わせると、ポイ!!とサニー号を放り投げた。


「何すんだ、スルメ!!もう一度運んでくれよ〜〜〜!!!」
『何···!?』
「誰だ、コイツら···!!!」


ティアナとゾロが見上げる先を見たチョッパーも「わああああ!!!」と目ん玉を飛び出させながら驚いた。
目の前には数匹の海獣の群れがサニー号を見下ろしていた。ナミがティアナへと走り寄って抱き着く。


「「「「ギャ〜〜〜〜〜〜!!終わった〜〜〜ここまで来たのにィ〜!!!」」」」
「カッコイイな〜海獣!!───誰か乗ってるぞ!?」


チョッパー、ウソップ、ブルック、ナミの悲鳴も何のその、ルフィは海獣を見上げながら呑気にそう言った。
ナミに抱き着かれているので、耳元で悲鳴を上げられたティアナは顔をしかめながらも、ナミを離すことはなく庇うように後ろへと下がらせる。(カナだったら強引に引き剥がしていた)
キリンのような海獣の背に乗る人物がサニー号にある海賊旗を見た。


「お前達···“麦わらの一味”だなァ···」
「「『!』」」


その声にティアナとカナとゾロが身構える。


「よく知ってるとも···かつて“アーロン一味”の野望を討ち砕いた海賊達。───それで済めば答えは簡単だったが···!!よりによって2年前元“アーロン一味”幹部ハチさんを庇い···あの憎き“天竜人”をぶちのめしたとも聞いている···!!」


洒落た帽子をかぶるその人物、新魚人海賊団戦闘員、ハモンド(ハモの魚人)は麦わらの一味をぐるりと見回した。


「まるで我々の敬愛する「魚人島の英雄」“フィッシャー・タイガー”の様に。ハモハモハモ!!まったく、扱いに困る」


「変な笑い方」ボソリとツッコんだカナの横腹にティアナが肘うちを食らわせた。「うぐっ」と蹲るカナをウソップとナミが呆れたような眼差しで見る。


「なァ、教えてくれ···!!お前達は敵なのか、味方なのか。我々「新魚人海賊団」の「傘下に・・・下る」か!!「拒否する」か!!」


ハモンドの胸元にあるアーロン一味のマークを見つけたナミが無言でティアナの服をぎゅっと握り締める。それに気付いたティアナは目線をハモンドから動かすことなく彼女の手を安心させるように掴んだ。
それにハッとしたナミはティアナを見る。


(大丈夫)


声を出すことなく、口パクでそう伝えられたナミは、嬉しそうに頬を染めた。勿論そんな状況をカナが見逃すはずがなく、横目でそれを見ては(罪なヤツ···)とティアナにジト目を送った。


「拒めばここで沈んで貰う!!!それか······」


ハモンドはナミの傍にいるティアナをチラリと見てニヤリと口角をあげた。


「そこにいる“舞姫”をこちらに渡してもらおうか!!」
『は······』
「「んだとコラァ!!?」」


ハモンドの言葉に思わぬ矛先を向けられたティアナが気の抜けたような声を出すと、ルフィとカナが怒りの炎を纏いながら声をあげた。
ゴオオオオッ!!と背後に燃え上がる炎を纏うルフィとカナにウソップとチョッパーが「「ヒイイィッ!!」」と手を繋いで悲鳴をあげる。
ポカン···と口を開けて固まるティアナの傍から離れたナミはフランキーに向かって「燃料補給して!!」と呼びかけた。


「何する気だ!!」
「ルフィ達があいつらの言う事聞く訳ないでしょ!!ましてやティアナを渡せなんて絶対に聞く訳ない!!私も嫌よ!!!───とはいえ、ここは深海1万m!!こっちは戦う事さえできない!!勝機は0!!」


確かに戦うにはシャボンから出るしかなくなる。だが、シャボンから出てしまえば水圧に体が耐えられなくて押しつぶされてしまうだろう。


「だから逃げる!!この船の空気全部使って“クー・ド・バースト”で「魚人島」に突っ込むの!!!」
「正気か!!?」
「そうしなきゃここへ来て全滅よ!!」
「確かに···それ以外生き残る術がない」


ロビンまでナミの案に賛同すれば、すぐにウソップとフランキーは走り出した。


「フランキー、操舵頼む。おれが燃料補給を!!」
「よしきた、スーパー任せろ!!」
「早くしねェと、ルフィとカナがもうすでに飛び出していきそうだ!!!」


ウソップの言う通り、ティアナを引き合いに出されたルフィとカナはゾロとティアナが抑えていない状態でなければ、すでにシャボンから飛び出して敵に殴りかかりそうな勢いである。


『ちょっとルフィ!!カナ!!シャボンの外に出たら死ぬよ!!?』
「気持ちはわかるが、落ち着けお前ら!!!」
「うるせェ!!!あいつ、一発ぶっ飛ばしてやる!!!ティアナは誰にもやらねェ!!おれのだ!!!」
「すんごい腹立つんだけどあの変なやつ!!洒落た帽子なんかかぶっちゃってさァ!!あの髪の毛燃やしてやる!!!」


抑えるティアナとゾロが大変だ。

二人だけではルフィとカナは止まりそうもないので、ブルックとチョッパーも抑えに加わり、ルフィとカナの足をロビンのハナハナの実でがっちりと抑え込んだ。
麦わらの一味の能力者総出で、すごい形相で今にも飛び出していきそうな二人を抑えこむ。
一番手を出してはいけないティアナの名前を引き合いにだした事の元凶のハモンドはそんな彼らの様子など気にすることなく、麦わらの一味を見下ろして声を張り上げた。


「さァ、おれ達の手下になるか!!?それとも“舞姫”を差し出すか!!?“麦わらのルフィ”!!!」


ハモンドがそう問いかける中、風来クー・ド・バーストの燃料が溜まっていく。準備OKだ!!
それと同時にルフィが大きな声で言いのけた。


「いやだね〜〜〜〜〜!!!バ〜〜〜〜〜カ!!!」