すっごい、見られてる感じがする。いや、間違いなく見られている。
部屋から出てきたとたんこの視線の数はなんだ。
『·························なに?』
ひとことそう言うと、チョッパーが可愛い足音を立てて駆け寄ってきてピョンッと抱きついてきた。いや、可愛いなおい。
「ティアナ、どうしたんだ!?頭変えたのか!?」
『いや、やめてその誤解を招く言い方。怖いよ、頭変えたとか』
やべぇやつみたいだから、いくらチョッパーでもその言い方は許さないよ?
頭を変えたわけではなく······ただたんに髪色を変えただけなのだ。
これまたなんで急に?って話になると思います。
そう、この海賊団は常にお金が金欠となる。
···となるとお金を稼ぐには手っ取り早く歌やら芸などをして稼ぐしかない。そこで歌姫と言われているあたしの出番なわけで。
いや、カナも演奏家として出番だけどな?
勿論、ウソップの上手い交渉術で歌を披露する場を設けてもらい、あたしとカナはそこで歌と演奏を披露し、お金をたんまりともらったわけなのだが。
歌姫として有名なあたしと相棒のカナが出るとなればお客は結構来るわけで。
そりゃもうあたしたちがこの島にいるのはバレるわけですよ。そうなったらログが溜まるまで身を隠すしかない。でも島には出掛けたい。さぁ、どうするってなって···髪色を変えるまでにいたったってわけです。
「おい、ティアナ!なんで頭変えんだよ!」
『だからその言い方やめろ。』心配そうな目で見てくるチョッパーとぎゃあぎゃあ騒ぐルフィ。
新聞を読んでいたナミと優雅に紅茶を飲んでいたロビンも驚いたようにあたしを見つめる。
「どうしたのよ、ティアナ。髪色なんて変えて」
「ふふっ、その色も似合うわよ」
『え、そう?』
「変装だよ、変装」
ロビンの言葉に照れくさそうに笑うあたしの後ろから同じく髪色を変えたカナが出てきた。
今のあたしとカナの髪色は黒色だ。
「どうしたんだ、カナまで頭変えて!!」「ぎゃぁぁぁー!カナまで頭変えたァァ!」「変えてねえわ!!!誤解を招く言い方すんな!!」『いやうるせぇ、耳元で』
三人ともあたしの近くで騒ぐから耳がキーン!ってする。
「で、なんで変えたのよ」
『いやさぁ、前の髪色で島に出たら「歌姫だ!」とか言われて騒がれて······。ろくに島見れなかったからさ』
「んでこの島にいる間は変装しようってなったの」
「それで髪色を変えたのね」
「あら、でも染める必要はなかったんじゃない?」
ロビンのその言葉にあたしとカナは顔を見合わせた。
「『染めてないよ?』」
「「「「え?」」」」
なんだみんなして。
「頭変えたんじゃないのか!?」
「ええ〜!?」
「変えてねえっての。その言い方マジでやめろ。」
「え、じゃあ何したのよ」
「洗い流したら元の髪色に戻るってやつかしら?」
『やだな〜、そんな面倒なことしないよ。カツラだよ、カツラ』
あたしがそう言うとナミとロビンは納得したように頷いた。
カツラに見えなかったってすごくない、あたしたち。
いまだにギャーギャーうるさいルフィたちを見て、あたしは船尾の方へと移動した。
思った通りそこには誰もいなくて、潮風が髪を揺らす。あぁでも視界にはいる黒色があたしの大好きな人と同じで···なんだか嬉しい気持ちになる。
『ふふっ、ルフィの色だ』
「なんだ?」
急に横から顔が出てきて、『うわっ!』と後ずさる。さっきカナとチョッパーとギャーギャー言い合ってたから、あたしがいなくなったことに気づいてないと思ってた。
「何がおれの色なんだ?」
ひとりごとバッチリ聞かれてた。
『いや、ほら···髪色が······』
なんか聞かれたら聞かれたで言うのが恥ずかしい。
俯きがちにそう言うとルフィは腕をぐるぐるとあたしの体に巻き付けて、後ろから抱きついてきた。そしてムスッとしながらあたしの肩へと顎を置く。
「確かにおれと同じ色で嬉しいけど············う〜ん」
悩むルフィをチラリと一瞥。
『なに、前の色の方がいい?』
「おれはお前の色好きだ」
『ふふっ、ありがとう。大丈夫だよ、この島にいる間だけだし』
「う〜ん······」
『それに···変装でもしないとルフィとデートできなくなっちゃう』
「それは嫌だ!!」
『いやうるさっ』
耳元で叫ぶなっての。
同じ黒色で嬉しいけど元の髪色も好きだったから複雑なルフィの心境を読み取って、あたしは微笑を浮かべた。
いつもの君が好き!「う〜、おれと同じ色で嬉しいけど···元の色も好きだし···いやでもデートできなくなるのは困る······う〜ん」
『あはは、そんなに悩む?』
「当たり前だろ。まぁ、どんなティアナでも好きだけどな、おれは!」
『急に爆弾発言してくるのほんとにやめてくんない?』
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