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甘い匂いがキッチンを駆け巡る。
取り出したそれを見て、あたしは笑みを浮かべた。


『よし、OK』
「終わった?」


ガチャとダイニングに入ってきた我が相棒へと頷いて、こちらへと近寄ってきた彼女に向かってチョコをつまんだ指を向ければ大人しく開かれる口。
あたしは迷わずその大口の中へとチョコを放り込んだ。


「ん···うまっ」
『そう?よかった』


口の端についたチョコをペロッと舌で舐めとる。
あたしは出来上がったチョコを数個に分けて袋へと入れてラッピングすると、その一つをカナへと投げ渡した。


『それあんたの分』
「サンキュ」


手を振る彼女へと手を振り返して、ダイニングを出る。甲板でくつろぐ麦わらの一味の面々を見て、あたしは無意識に笑みを浮かべながら甲板へ続く階段を降りた。


『みんなー!』


呼び掛ければみんなの視線がこちらへと向く。寝ていたゾロでさえ、起きたらしくあたしへとチラリと視線を向けていた。


『これみんなにあげるね。バレンタインのチョコ』
「チョコ!?」


キラキラとした眼差しのチョッパーを筆頭にみんながわらわらと集まってくる。あたしは誰ひとり残らず丁寧にみんなにラッピングしたチョコを渡していった。


『はい、チョッパー』
「うわぁ!ありがとう!」
『はいこれ、ウソップね』
「ありがとな!うおっ、うまそー!」
『はいどーぞ、サンジ』
「まさかおれももらえるとは思わなかったよ···っ!!ありがとう!!!」
『はいゾロ、あげるー』
「おお」
反応薄っ。ま、いいや。はいこれロビンね。ちょっと可愛くしてみた!』
「ふふっ。ありがとう。とっても可愛い」
『ほい、フランキー』
「ありがたくいたたくぜ!」
『ブルックこれね』
「ヨホホホ、ありがとうございます」
『はいよ、ナミ。ナミのも可愛くしてみた』
「本当だ!可愛い〜!ありがとう!!」


無事ここにいる全員へと渡ったのを見て、ふぅ。と一息。
わいわいとあたしがあげたチョコで盛り上がっている面々を見ながらふと一人の姿が見えないことにキョロキョロと辺りを見回す。
そしてクンッと鼻を動かせば嗅ぎ慣れた匂いが鼻についた。風で流れてきた方向を見れば、彼お気に入りの特等席からだった。

またいつものところか···と彼の元へと特別に用意しているチョコを持って向かう。

船首に乗って、麦わら帽子を揺らすこの船の船長───ルフィに声をかける。


『ルフィ!そっちいってもいい?渡したいものがあるんだけど···』
「おう、いいぞ」


ギュルンッと伸ばされた手に掴まれば、優しくルフィの元へと導かれる。そして胡座をかいて座っていたルフィの上へと座らされるとさっそく匂いにつられたのかルフィのお腹がグ〜ッとなった。


「なんかいい匂いすんな。甘い匂い?」
『ほんと食べ物に敏感だよね』


はいこれ、とルフィ専用に特別に作ったものをあげれば、キラキラと目を輝かせた。


「手作りか!?」
『うん。ルフィのだけ特別』


ちょっと恥ずかしくて、はにかみながら伝えればくしゃくしゃと頭を撫でられた。いつもなら適当に破くだろうラッピングも丁寧にほどいてくれて、ルフィは中に入っていたチョコレートを取り出した。


「うまそうだな!」
『···どう?』


ガブッとかぶりついたルフィの反応が気になって聞いてみれば···。


「ん、すげーうまい!!ありがとな!」


ほっ···と息を吐いた。良くも悪くも素直なルフィの言葉に嘘はなく。あたしは嬉しそうにチョコを頬張るルフィの隣で彼を見つめて微笑んだ。



チョコレートをあなたに


にっがっ!?!?ちょ、ティアナ。カナのもしかしてビター?」
『え·········違うよ』
「おい、なんだよ今の間」
「おい、ティアナ。これあんま甘くなくて良い感じだな」
『ほんと?ありがとうゾロ。男性人はあんまり甘くないようにしたんだ』
「ちょっと待って。まさかカナ、男子と同じやつ?」




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