『ん〜···ん〜?うん、異常なし』
眠気に勝ちながら水平線上の確認を終えた。
サンジが淹れてくれたコーヒーを飲みながら、不寝番をする。
昨日夜遅くまで楽譜の整理をしていたからか、めちゃくちゃ眠たい。こういう時に限ってタイミング悪く、不寝番になってしまうのだ。
『ふぁ〜···ねむた······』
その時、ガタッと音がして振り返ってみると、いつもなら寝ているであろうルフィがしししし!と笑いながらそこにいた。
『え、どしたの』
「何がだ?」
『いつもならもう寝てるでしょ?』
「ん〜眠れねェんだ」
見えてる。見えてるよ、あたしには。
口の横にある食べカスが。
コーヒーを置くと、毛布をしっかりと肩にかけてあたしはルフィへと近寄った。そしてよく伸びる頬をビヨーン!と横に伸ばす。
「!? なにゃふんふぁ!?」
『食べたんでしょ』
「!! にゃ、にゃんにょこふぉだふぁ」
『た・べ・た・の・ね?』「ふぁい······」
素直に返事をするルフィの頬から手を放すと、パチンッと勢いよく戻った。
その勢いに思わずよろけそうになるルフィを放って、元の場所へと戻る。
明日···というか今日?サンジに怒られても知らないからね。
『で、用事終わったんでしょ?部屋、戻らないの?』
「んー、いやここにいる」
そう言うとルフィはあたしの隣へと来た。
あたしから毛布を取り上げると、あたしを後ろから抱き締めて毛布で包み込むようにしてくれる。
ルフィの体温と毛布の暖かさに、身体中が暖かくなって、眠気と格闘していたあたしを眠りへと誘い込む。
『ん〜···』
「眠ィのか?」
『昨日寝たの遅かったから···』
目を覚ますように、目をこするとその手をルフィにとられた。
いつの間にか床へと座り込んでいて、あたしの体はルフィへと寄りかかっている。
暖かい体温に包まれて、瞼がだんだんと落ちてきた。
「ティアナ?」
『ん〜······』
「ティアナ〜?」
『······』
ルフィの声が遠くなる。
「············寝たのか?」
スースー···と微かな寝息がルフィの耳に聞こえてきた。
後ろから顔を覗き込んで見ると、ティアナは気持ち良さそうにルフィに寄りかかって眠っていた。
ルフィはそんなティアナを見て、顔にかかる髪をよけてあげながら、愛しいものに向ける、優しい笑みを浮かべた。
「おやすみ、ティアナ」
***
「ティアナ·········ティアナ···!···············
起きろコラ」
バコンッ
そんな声と同時に感じた頭への痛さ。
『〜〜〜ッいっつ〜ッ』
痛みに悶えながら、叩かれた頭を押さえて目を開けると目の前には丸めた新聞を手にしたカナが、あきれたように目を細めて立っていた。
「昨日しんどそうだったから様子見にきてみたら······なに仲良く寝てんだ」
『え?』
仲良く?
背中に感じる温もりに顔だけ振り返って見ると、あたしを抱き締めたままのルフィが目をつぶってスースー···と寝息をたてていた。
あれ···昨日ルフィが夜に起きてきて······それで毛布に一緒にくるまって······。
あ、思い出した。
ルフィの体温が暖かくてそのまま寝ちゃったんだ。
ん?寝たってことは······。
『ゲッ。今朝!?』
「そーだよ。もうじき朝ごはん」
『あー······』
まずい、不寝番なのに寝てしまった······。
まぁ、見知らぬ気配があったり音や匂いがあったらわかるから、一応異常はなかったらしい。
「ナミには内緒にしといてあげるけど」
『うん、ありがとう』
「それは自分でどーにかして」
それ?
カナが「ん」と指差す先にはあたしに抱きつきながら眠るルフィで。
「そろそろナミとサンジが気づくんじゃね?」
カナがそう言った瞬間。
バタンッ!とダイニングキッチンのドアが開いた。
「ルフィ!!あんたちょっと来なさい!!!」
「クソゴム!あれほど夜中に食材食うなって言っただろうが!!!」
ナミとサンジの大声に起きたらしいルフィは「ヤベッ」と声をもらすと、「はよ、ティアナ!」とあたしの頬へとキスを一つ落として急いでゴムの体をいかして逃げていった。
「朝から見せびらかしやがって」
『なんだよ、うらやましいの?やってやろーか?』
「うん······っていいたいところだけど後が怖いからいいや」
カナと話しながら降りると、結局二人に見つかったらしいルフィがボコボコにされていた。
まったく······。
傍にある体温「あ!ティアナ〜助けてくれよ〜」
「ティアナちゃんに助けもとめんな!」
「そうよ、ルフィ!ティアナも助けちゃダメよ!」
『ま、今回は自業自得だね、ルフィ』
「何回同じやりとりしてるんだか······」
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