コナン短編 | ナノ
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事件の後はあなたが抱き締めて

『もう、また事件!?』


米花駅の前で私は携帯を片手に声を荒げた。
今日はたまたま私が午前中に用事があり外で待ち合わせをしようということになったのだが、待ち合わせ人である彼氏の工藤新一は事件に呼ばれて着くのが遅くなるとのこと。
ケンカか?とすれ違う人たちが私を見ていくがお構いなしに私は携帯の向こうにいる新一に怒鳴る。


『この前も事件だったじゃん!』
〈しゃーねえだろ?事件がオレを呼んでるんだからよ〉
『呼んでるのは事件じゃなくて新一の方じゃないの?』


まったく···と目を細める。


『どれくらいで終わりそう?』
〈さーな。まだ事件現場に行ってねえから〉
『·········わかった』


何よ、楽しみにしてたのは私だけ?用事だってなるべく早く終わらしたのに。
チラリと米花駅にある時計を確認して私は踵を返した。
いつ終わるか分からない、いつ来るか分からない新一を待つのはもう嫌だ。


『帰る!』
〈は?あ、おい!〉


新一の呼び止める声を無視して私は電話を切った。
なんなのよ、もう···!と携帯の電源を切ってポケットに突っ込むと私はフン!と鼻を鳴らして家への道を歩く。
だけど少しだけ遠回りをしたくて、ウインドーショッピングを一人で楽しむ。
意外と一人でお店を冷やかしたりするのは楽しくて、気づけば新一との待ち合わせから何時間もショッピングを楽しんでしまっていた。だが夕方になるとカップルが増えてきてなんだか虚しくなってきたので帰ることにした。

帰っている間、新一のことを思い出すと一旦収まった怒りが沸き上がってきてイライラしてきた。

いつもなら私もすぐに事件現場に向かうのだが今回はそういう気分でもないし、いつもデートは事件に邪魔されてばかりなので今回は───!と思い、気合いをいれて服も髪も選んだのだ。
それなのにこの始末。


『何よ、バカ···』


新一のバカ。推理オタク。推理バカ。シャーロックバカ。音痴。事件呼び寄せ機。


『·········新一のバーカ』
「誰がバカだって?」


いつの間にか家の近くまで帰って来ていたらしい。
静かな住宅街に私の声が呟かれた後、すぐに聞こえた声。
ハァハァと整えている彼の息に、私は振り返った。
そこには肩を揺らして息を整えている新一の姿があった。
どうしてここに···と目を見開けば「オメーなぁ!」と言いながらズンズン近づいてくると私の頭を小突く。


「帰るならさっさと帰るなりしろよ!どっかで危ない目にあってんのかと思って探したじゃねーか!!」
『···事件は?』
「んなもんさっさと終わらせたっつーの。オメーが怒って携帯の電源まで切るから」
『怒るでしょ···せっかくのデートだったのに···!!』


キッと新一を睨めば彼は呆れた顔でため息を吐く。


「まだデートは終わってねえだろ?」
『は?』
「今からでもいいじゃねえか」


何言ってるのよ。
もう夕方なんだよ?どこに行くっていうのよ。


『今から出掛けるの?』
「別に出掛けなくたっていいだろ?」
『それじゃあいつもと同じじゃない』


結局いつもと同じパターン。
事件が起きて行こうと思っていた場所に行けずに家で過ごす。
たまにはオシャレをして彼氏と出掛けたいという女心を分からないのかこの推理バカは。


「別にどこでも変わんねえだろ?」
『はあ?』
「オメーと一緒なら家でも外でもどこでもデートじゃねえか」
『······』


思わぬ言葉に黙り込んでしまう。


「なんだよ、違えのか?」
『············ううん』


なんだか怒ってたのがバカみたいだ。
私は小さくふふっと笑うと新一の腕へと抱き付いた。


『今日行きたかった所、新一のせいで行けなかったんだから、家帰ったら覚悟してよね?』
「へーへーわかりましたよ」