手と手合わせて
吐き出した息が白い。
空気中に溶け込むのを見ながら私はマフラーに顔を埋めた。
なんで女子ってスカートに生足なんだろう。
寒いったらありゃしない。
う〜と唸りながらかじかむ両手を擦り合わせると隣を歩いていた新一があきれたような目線を寄越してきた。
「寒いなら手袋しろって言ってんだろ?」
『忘れるんだもん』
寒そうに手を擦り合わせる私を見てきた新一がここのところ毎日そう言うが、朝出るときは必ずといっていい程手袋のことを忘れる。
だって寒くて布団でぬくぬくしてたら時間が迫っていて急いで家を出るのが日課なので手袋のことを忘れてしまうのだ。
マフラーは忘れないんだけどなぁ。
「オメー、寒がりなんだから手袋常にポケットに入れとけよ」
『ポケットはねー結構いっぱい入ってるんだ』
「はあ?何をそんなに入れてんだよ」
んとね。と言いながらポケットを探る。
リップ、ハンカチ、手鏡、ホコリ取りブラシ、ヘアピン、あと携帯。
「······多くねえか?」
『そう?こんなもんじゃない?』
女子は結構入れてるもの多いと思う。
園子だって結構入れてるし。
あ、でも蘭はそんなに入れてないかな。
「なんで女子ってそんないっぱい持ち歩いてんだ?」
『いつだって可愛くいたいからだよ』
「······別に蓮華はそんなもんいらねぇだろ」
『なんでよ?私だって好きな人には可愛く見せたいもん』
「じゅーぶん可愛いだろ、そのままでも」
新一が言った言葉に顔が真っ赤になる。
自分で言ったくせに顔を赤くしてる新一とふたりで黙りこむ。
こんなに寒い日にお互い顔を赤くしてる黙りこんでる私たちは周囲にはどう見えているんだろうか。
園子がいなくてよかった。
絶対「まったく。外は寒いってのにあんたたちの傍にいたら逆に暑くなるわ」って言われるに決まってる。
チラリと見た新一の鼻が真っ赤になっていて、私は思わずぷっと笑った。
「なんだよ?」
『鼻、真っ赤だよ。赤鼻のトナカイみたい』
「なっ!」
クスクスと笑うと、新一は「バーロー」と言いながら私の頭をくしゃくしゃと撫で回した。
『ちょっと、髪の毛ぐしゃぐしゃになる!』
「はいはい」
も〜と頬を膨らませながら髪の毛を整えているとふいに手を取られてぎゅっと握りしめられた。
思わず固まるとニヤリと不敵な笑みを浮かべた新一が私の顔を覗き込む。
「これなら寒くねーだろ?オレも蓮華も」
『っ······うん』
繋いだ手を新一のポケットへと入れられてさっきよりも距離が近づく。
私は赤い顔を隠すようにマフラーへと顔を埋めた。
手と手合わせて
繋いだ手の温もりが冷たかった私の体を暖めてくれて
私はそっと笑みをこぼした